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第二十七話 変わったミツキ
朝、戸を開けると、村が動いていた。
リラが畑仕事、
ギンが川の掃除。
鳥がさえずり、風が揺れる。
ミツキは、作業台の前に立つ。
布を広げ、針を握る。
でも、前と違う。
笑う。
声をかける。
話す。
「リラ、お茶淹れたわよ」
「ありがとう、ミツキ」
ギンにも声をかける。
「籠、もう少し右に置くぞ」
「わかりました!」
以前なら、静かに黙って縫うだけだった。
今は、皆の動きに合わせて、
自然に呼吸を合わせている。
昼になると、村の子どもたちが寄ってくる。
「お姉さん、見て!」
「ほら、直してもらった服!」
ミツキは笑いながら、手を伸ばす。
針を持つ手も、自然に遊びの相手になる。
午後、カイが外で見守る。
口は出さない。
でも、時々頷く。
夕方、リラとギンも店の手伝いをしてくれる。
村全体が、少しずつ動いている。
夜、布を片づけながらミツキは思う。
「……私、変わったのかな」
前なら、怖くてできなかったこと。
今は、自然にできる。
針を持つ手に、笑顔が乗っている。
何も起きない村で、
でも、確かに何かが起きている。
自分の中で、
静かに変わったものが、ここにある。
それを感じながら、ミツキは布を畳む。
明日もまた、村は動き、
自分も動く。
笑い声の中で針を走らせる日々が、始まっていた。




