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第二十一話 外の服
昼過ぎ、戸口に影が落ちた。
見慣れない人だった。
背は高く、外套を羽織っている。
布は厚く、色も村では見ないものだ。
「ここが、服を直すところか」
声は低い。
「はい」
ミツキは答える。
男は外套を脱ぎ、台に置いた。
「旅の途中で破れた」
「動きづらい」
布を手に取る。
縫い目が荒い。
でも、素材はいい。
「外の服ですね」
「分かるか」
「……なんとなく」
男は少し笑った。
「この村、静かだな」
「何も起きません」
「それがいい」
ミツキは外套を広げる。
留め具の位置を変えた方がいい。
裾も少し短く。
「少し、形を変えます」
「任せる」
男は外で待つと言って、戸を閉めた。
ミツキはミシンを動かす。
布の感触が、いつもと違う。
丈夫で、重い。
外の空気を、少しだけ運んできた布。
夕方、男が戻る。
外套を羽織り、肩を動かす。
「……いいな」
短い言葉。
「この村に、店があるとは思わなかった」
「……まだ、店というほどでは」
「いや」
男は銅貨を置いた。
「ここは、覚えておく」
去り際、振り返る。
「また来る」
戸が閉まる。
ミツキは、布の感触を思い出す。
村の外にも、服があり、人がいる。
でも。
ここは、変わらない。
何も起きない村で、
外の服が一枚、直された。




