第十六話 手を貸す人たち
朝から、音がしていた。
木を運ぶ音。
土を踏み固める音。
人の声。
ミツキが外に出ると、家の前に人が集まっていた。
「今日から、広げる」
カイが短く言う。
それだけで、皆が動き出す。
誰かが木材を運び、
誰かが縄を結び、
誰かが地面をならす。
指示はほとんどなかった。
でも、無駄もなかった。
ギンが木の端を担いでくる。
「これ、川向こうに落ちてた」
「乾いてる」
リラは布を抱えている。
「作業の邪魔にならないように」
「こっちはまとめておくわね」
ミツキは、立ち尽くしていた。
「……何か、します」
そう言うと、カイが言う。
「縫え」
「え?」
「作業着」
「破れてる」
確かに、皆の服は擦り切れている。
ミツキは頷き、針を持った。
その日、ミツキは何度も縫った。
膝。
袖。
裾。
作業の合間に、服を直す。
「助かる」
「動きやすい」
短い言葉が返ってくる。
夕方、家の輪郭が変わっていた。
広くなり、光が入る。
“店になる家”の形が、少し見えた。
ミツキは、壁に手を当てる。
まだ木の匂いが強い。
夜、皆が帰ったあと。
カイが残って、梁を確認していた。
「……今日は、ありがとうございました」
ミツキが言う。
「礼はいらん」
いつもの言葉。
でも、そのあと、少し間があった。
「……あんたが縫った服」
「昔のこと、思い出した」
それだけ言って、カイは外へ出る。
ミツキは、胸の奥が静かに波打つのを感じた。
何も起きない村で、
人の手が集まり、
家が、形を変えていく。
それは、建物だけじゃない。
ミツキ自身も、
少しずつ、変わっていた。




