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森のブーケストラ 〜私が女王になるまでの物語〜  作者: ヒロA


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第八楽章 じゃじゃああん! 【フェアリーズ・シークレット・ベース】

「さて、まだ、話しはこれで終わったわけじゃない。むしろこれからがスタートだ。

 まずはビスカに見せたいものがある。ついてきてくれ」

 レットは次の段階の話しを静かに始めた。

「は、はい」と返事し、いわれるがままにビスカはレットについて行く。

 リビングの奥にある扉?……あれ、そこに扉ってあったかな? とビスカは思ったが、来たばかりのこの家の記憶なんて、しっかりしているわけはないと自分に納得させた。

 レットがその扉をあけ、その後にビスカが続き、その後に三姉妹がついていった。

「お姉ちゃん、面白いものが見られるよ!」

 いたずらっ子のようにサクラが微笑む。

 扉の先の暗闇の中、レットが「こっちだ!」と下を指さした。

 下ってどういう事? とビスカが下を見ると同時に、床に直径一、五メートル程度の大きな光の円状のものが浮かび上がる。その光の円を覗くと階段のようなものがあった。

(ここって地下があるの? 外から見たら、そんな風に見えなかったけれど)

 まぁ、ここまできたら、なにがあろうと結構驚かない自信がビスカにはあったのだが、それも即打ち砕かれる事になる。

 三十段程度の階段をおりたら、そこに扉があった。そこの扉に向かってレットが唱えた。

「開けよ! ゴマダンゴ!」

 扉からカチっと音が聞こえた。鍵が開いた音のようだ。

(……。なに、この安易な言葉は。絵本のアラビィストーリーそのままじゃないの!

 もっとヒネりなさい。ヒネりなさい!)

 ビスカは、言いたい事をぐっとこらえた。

「驚いたかい? すごいだろ。開けよ! ゴマダンゴって言うと鍵が開くんだぜ!」

 自慢げに言うレットに対してなにかいらだちを覚えた。あなたのセンスに驚いたよと今にも口に出しそうだった。

「ははははっ、ホントは言葉なんてどうでもいいんだ。

 俺の声帯認証と思念で開け閉めができる。

 俺が開けとか閉まれって思いながら発した言葉ならどんな言葉でもオッケイなんだよ」

 ひょっとして私、バカにされている? と思わざるをえない。

 レットの態度が真面目になったり茶化したりコロコロ変わりすぎて人柄をつかめない。

「どうぞ、ご照覧あれ! 姫様」

 レットが扉を開けた。わざとらしい演技かかった彼の仕草の先に、目にもまぶしい光景が写る。その部屋は暗闇の中、多くの鮮やかな光が部屋中を照らしていた。

「な、なにこれ? これはいったい」

 手の平大のものから、人の顔程度のものまで、大小、いろいろな色の光の玉が、空中に浮かび揺れ動いていた。

 そして空中に、街中の様子が投影された板状のものがいく枚も浮いていた。何枚かは数字の羅列や文字らしき羅列が写っていた。

 後ろにいたヒマワリがうれしそうに、前に出てきて様々な光の玉をつんつんしている。

「オーたんも、ショーたんも、こんにちわ。ごくろうさまだね」

 この光の玉の全てに名前があるのだが、そもそも見分けはついているのだろうか。

 こんな風景は見た事も聞いたこともない。ビスカはあっけにとられていた。

 ビスカにとってはこの光のイルミネーションは、妖精の国とか幻想世界に思えた。

 レットは大げさに両手は上げて、演技ががった声で告げた。

「驚いたかい! これが俺達のとっておきのひとつだ。

 この部屋は、世界の全てが集まる場所。世界の希望の光そのものだ!!」

「世界の全てが集まる場? どういうことでしょうか?」

 ビスカは、そのおおげさな演技も最後のフレーズも、琴線にはまるで触れず、スルーし、ただ気になる点を普通に質問した。

「……うぅ、まあいい。世界を制するのは武力じゃない。情報だ。ここは世界の情報が集まる場所、つまり世界の全てなんだ。それが可能になる装置を俺達は創り上げた。


 その名は、じゃじゃああん! 【フェアリーズ・シークレット・ベース】!


 簡単にいえば、【妖精達の秘密基地】ってとこかな。異世界の技術をこの世界に再現可能なレベルで作っただけで異世界のオリジナルには到底及ばないけどね。」

「い、異世界の技術?」

「ああ全てが師匠とじいちゃんの知識と技術を受け継いだだけでほぼ俺の力じゃないけれどね」

「先先が……。それにしてもすごすぎます。受け継げるだけでもすごいです」

「あ、この名前をつけたのは、俺じゃないぞ~。妹たちだからな。くれぐれも間違えるんじゃないぞ~」

 この男にもこのネーミングは恥ずかしいという感性が一応備わっているようであわてて人のせいにした。そこで、ユカリがちょっと不機嫌っぽく話しに割り込む。

「兄さん! ちょっと違うでしょ! もう! そもそも、私達は【妖精達の秘密基地】にしましょうって言ったのに。兄さんが勝手にカワイクない【フェアリーズ・シークレット・ベース】って置き換えたんでしょ」

「はい、そうでした。ごめんなさい」

 レットの許容範囲は【フェアリーズ・シークレット・ベース】という名前までだった。

 続けて、ユカリが説明する。

「お姉ちゃん、この浮いているのは光の精霊ウィルオーライトっていうんです。

 赤とか青とかいろんな色があってキレイでしょう」

 レットが説明役をとられてたまるものかと話しを続ける。

「ここの奴らは部屋を明るくする用。外に放している奴は偵察用で、ホタルの光より小さな奴もいるんだ。しかも光もぐっとさげて見つからないようにしている。

 ウィルオーにお願いし、偵察してもらってここの情報端末に集約して分析しているんだ。ただ写しているだけじゃなく、街のうわさや街の情報なんかも取り入れられるんだ。

 あ、プライバシーは大切に考えているんで心配なく。(やろうと思えばできるけれど)個人の家に侵入してのぞき見なんてしていないから。

 あくまで不特定多数の街全体の情報を集めているだけで、一般市民の個人情報はとってないから(関係ある人の情報はとっているんだが言わない)。いうなれば、異世界のネットワーク技術をこの世界で応用したみたいなものだね」

(じょ、じょほたいまつって何? 松明の新商品の名前? 異世界のねとわくわく?)

 ビスカはレットがなにを言っているか途中からまるでわからない。

「例えば、ここを触ると……」

 レットはおもむろにひとつのスクリーンを触った。画面がなにやら数字を映し出す。

「今年は王都周辺は小麦が不作で売値が高騰しているのがわかる。なら他の土地から安く仕入れて売れば儲かるってことさ。

 まあ、例えばって事で商売はそんなに単純なものじゃないけれど、今まで経験とか勘とか人脈とかに頼っていた商売の質みたいなものが大きく変わる。

 ここにいるだけで、誰よりも早く、かつ正確に情報を得られ、かつ未来予測が可能になるって事。だからといって、王国の経済活動を陰で操作しているわけではないから心配なく。そこんとこは俺達も分別はあるから」

 実際は、この家の経済をまわす程度の事には活用していた。

「このウィルオーは、もちろんこの森にも周辺にも放っていて逐次監視している。

 ビスカが結界を抜けてこちらにくるのもわかっていたし、ビスカの追手がこの森の近くまできていないのもわかった。昨日のサクラたちとの会話の時に俺がいなくなったのも、ここにいて状況を探っていたからだ」

「あなたは一体、なんなの? 異世界人? 神様? 勇者様? それとも魔王?」

「俺は正真正銘この世界の住人。単なる美人三姉妹を下にもつ幸せものな普通の兄です! 

 いや、今や美人四姉妹を下に持つ世界一幸せな兄かな! わっはっはっは」

 ……思いの他、滑ったので、話しをなかった事にして続けた。

「というのは冗談で、最初に言っただろ。君が何者かもすでに分かっているって。

 ここに集約された情報と分析した結果とちょっとした考察とカンを加えれば、おおよその事は前もってわかる。もちろん、王宮のゴタゴタも把握していたし、君が逃亡した事もわかった。ビスカリア姫のご尊顔も最初からわかっていたってことさ」

 そう言った瞬間、中央の光の空中モニターに、逃亡前の在りし日の、りりしくも美しく気品に満ち、健康的な色気のある胸元のあいたドレス姿のビスカリア姫のアップが映し出された!

「う、うぁああああああああああああああ!!!!」

 レットは悲鳴に近い声を発しながら必死になって画面を押し姫のアップを消した。

 そのかわり、そのまわりの無数の光のモニターが一斉にいろんな角度の、いろんな表情の姫を映し出した!

「あ~に~きぃぃ!(サクラ怒)、おにぃさまぁ!(ユカリ激怒 呼び方が逆に丁寧)

 おにぃちゃぁん!(ヒマワリ ただマネしていってみただけ)

 だ~れ~がのぞき見しないって~!!!(三人同時)」

 妹たちが一斉にキバをむきレットに飛びかかり、ぼこぼこにした。特にサクラが。。

「ご、ごめんな、さい。実は、前から姫のファンでして……出来心で……保存しておりました。……スミマセン。スミマセン。スミマセン。」

 当の本人のビスカはというと、恥ずかしそうに顔を赤らめもじもじしていた。

 自分の顔なんて、鏡やガラスの反射等でしか見た事はなくこんないろんな角度の大アップなんて自分でも見るのが始めてだった。本当はボコボコにしてもいいのに、それも三姉妹に先にやられて、その瞬間、感情のもって行き方がわからなくなっていた。

 ただ一言だけふりしぼった。

「もう、はずかしいので今後しないでください!

 それとここにある私の姿は全部、破棄してくださいね」

「はひぃ、かぁしこまりました〜。二度といたしません。でも一枚位は……」

「サクラちゃん最強・最高・最カワ鉄拳制裁 & お姉ちゃんの分をプラス十倍!」

 レットは、サクラの右フックをいただいた。

 ぼこぼこの顔で、半泣きで(顔の痛さではなく、消去することへの無念さで)皆の前でデータを消去させられ、平謝りの上、この問題は収束を迎えた。

 本人が目の前にいて、いつでも見ることができるはずなのに写真は別なのはレットも普通の男子だからだ。隠し撮りで着替えシーンや入浴シーン等のセクシーシーンがなかっただけかわいいものだ。一応、レットはそこのラインはわきまえていた。

 力のある者ほどその力をむやみに使ってはいけない。自分の中で制限をかけないと自分で自分を滅ぼすという教えを師匠に叩き込まれていた。

 実際の所、王宮は現在でも宮廷魔導師だった故ワイスによって永続魔法防御結界が張られ個人情報やセクシーシーンを集める事は不可能だった。

 せいぜい兵士の噂話やゴタゴタがあった程度の情報しか得る事はできなかった。

 どさくさに紛れ、こっそり一枚だけ消去せず、ドレス姿のビスカリア姫の写真をプリントして持っていた人物がいたのは内緒だ。……心なしかユカリは終始ご機嫌だった。

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