第六楽章 復讐心が別のカタチに?
レットは、自分達の素性を事細かに話し始めた……。
自分達は魔族の末裔であり魔族の血が若干入り交じった普通の人間という事。
現在、純粋な魔族は存在していないが魔人聖戦時に魔族は人間と交配した事。
その血を受け継いだ子孫のみ魔法が使える事。
今は魔族の末裔も少なくなった。血は薄まり使える魔法の規模も数も多くはない。
多少不思議な力が使えるだけでほぼ普通の人間と変わらない。
物語に描かれたような耳も尖ってないし、鋭いキバも角も羽根も尻尾もない。
それでも多くの純粋人類から見れば、魔族の血が受け継がれているというだけで恐怖の対象になりえる。
レット達が生まれたグラス村はできるかぎり人との接触を絶ち魔法を使える事を隠しながら静かに暮らしていた。
そんなある日、グラス村も魔王狩りのターゲットにされた。魔族の末裔の村という情報をどこからか聞きつけ魔王の転生の器になるに決まっているという根拠のない理屈だけで。
襲撃された際の取り決め通り人隠しの結界のある小屋にレット達は隠された。村のほとんどの子供達は逃げ遅れていた。
レットは魔道具で村の状況を泣きながら見ていた。
【ヴァフォーケン】将軍本人に殺されている母親も見てしまった。
彼はこちらが見えていないハズなのにまるで見えているかの様に目が合った気がした。
飛び出して助けたかったけれど将軍の眼光に恐怖で足がすくんで全く動けなかった。
「……僕は、その時の奴の顔を今でも覚えている。よく覚えている。
まるで、お前はなにもできないだろ? 悔しかったら復讐にこい。俺を倒してみろ。返りうちにしてやるからと言っているようだった。彼は禍々しい笑みを浮かべていました」
ビスカは固唾をのんで聞いていた。
「結局、僕ら四人以外は全員殺されました。その時、空間転移魔法が発動し、僕らだけこの家に強制的に連れて来られました。
祖父……じいちゃんは僕らを大切に育ててくれたけれど、僕の憎しみの火は消えず一年後、王都へ修行に行きました」
「復讐のために?…………」
「はい。最初は。でもいつしか復讐心はなくなりました。いや、違うな。復讐心が別のカタチに変わったといった方が近いかな」
「復讐心が別のカタチに?」
「憎みを抱えて相手を討ち取る事だけが復讐ではない。
彼の思い通りにさせない事も復讐の一つじゃないのかなってね。
【魔王狩り】で打ち漏らした僕らがしぶとく生き続け存在し続けるとか、彼のやりたい事を思いっきり邪魔するとか、逆にかまうことなく笑顔でいる事なんかもそうじゃないかってね。その中でどうすれば魔族の末裔は幸せに暮らせるのだろう。妹達を守れるのだろう。そのためになにができるのだろう。そんな事を考える様になっていました。
考えを変える事ができたのは師匠や街で出会った優しい人達、じいちゃん、妹達のおかげかな。
ここに帰ってきて間もなくじいちゃんは亡くなって今にいたるって訳です。
貴方とある意味、同じ境遇と感じたから助けたいと思ったんですよ。ははは」
レットは自分のへたくそな長すぎる説明に笑ったが、ビスカリア姫と三人の姉妹は泣きながら聞いていた。
特にじいちゃんという単語がでた瞬間、泣き声はより大きくなった。
記憶の乏しい本当の親との時間よりも、一緒の時間を多く過ごした育ての親であり、悲しみやつらさから解放してくれた存在なのだから。まして今だ三姉妹は少女だから尚更だ。
レットは火に油を注いだ事を少しだけ悔いたがこの話しの中で避けられなかったのでしょうがないと自分に言い聞かせた。泣いている四人が落ち着くのを待つためにハーブ茶を口にした。
そしてこの話しの確信を告げた。




