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森のブーケストラ 〜私が女王になるまでの物語〜  作者: ヒロA


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第三十三楽章 今夜は新女王誕生祝い & ○○パーティー

「……レットさんがお姉様を女王に?」

 ビスカはなにがなんだか分からなかった。

 彼は自分が女王になることを応援してくれていると信じて疑っていなかったのだから。

「あのウソの最終決戦は……」

 彼女は聞きたい事がありすぎて、何から聞けばよいのかもよくわからない感じだ。

 シルフィーネの代わりにレットがお気楽に答えた。

「いや、ヴァフォーケンのやり方をちょっと拝借してね。

 自分に都合よくねつ造すればいいってヤツ。だからあれを創ったんだ。

 いや~大変だったよ。ビスカの驚く顔が見たくてお兄ちゃん久しぶりに頑張っちゃった」

 一ヶ月【フェシー】にこもっていたのは、この制作・編集作業である。

 彼は、善悪だけで全てを判断しない。ましてや彼は聖人でもない俗物だ。自分の行動が全て正義で正しい事だけをやっているなんて思ってもいない。必要悪という概念も理解している。

 だから犯罪や人を傷つける事以外は、良いと思った事は積極的に取り入れる事ができた。

 今回はヴァフォーケンがやらないといった事を逆にそのまま実行もした。

 【かわいそうな人を応援したい】と思う感情や【カワイイが判断基準になっている人】の心理をつく演出をしたのだ。

 貼りつけにされている五人のか弱き少女、女性の姿を映像に多めにいれて印象づけた。

「お姉ちゃん! 本当に大変だったのよ。やれこのデザインがかわい過ぎる。やれこのデザインは勇者らしくないって何度もダメだしされて、どれだけ衣裳作るの止めようと思った事か……。それに兄さん演技がヘタ過ぎて、いつになってもうまくならないし……」

 ユカリもこの件に荷担していた。

 一ヶ月、毎日席を外しがちだったのは演技指導と衣裳づくりをしていたためだ。

 サクラとヒマワリも共犯者で計画がバレないようにあちこち連れ回していたのだ。

「テッテレ~! サクラユカリヒワワリ、大成功!(レットが)」 

 四兄妹は嬉しそうにそれぞれポーズをとりながらビスカに微笑んだ。

 いたずらっ子四兄妹ここに極まれり。四人はポーズのあとにハイタッチをした。

 レットは皆を驚かせようと、当初妹達にも内緒で単独で実行しようとしていた。

 だが離れるのが寂しくて毎晩泣く妹達の顔を想像してしまい、自分の方がめちゃくちゃ辛くなったため、いっそ共犯者にする事に決めた。悪巧みを明かされた三姉妹はいつも以上にノリノリで協力を惜しまなかった。


 種明かしが一通り終わると、シルフィーネがいきなりビスカに対して告げた。

「新女王シルフィーネ=フレグラントの名のもと、第三王女ビスカリアフィーネ=フレグラントに命ずる!」

「は、はい、お姉様いや、ヘ、陛下?」

「私がよいと言うまで、王宮から離れて見識を広げてくるのだ!」

 ビスカは、え? という表情でフリーズしている。

 今日ずっと思考回路がショートし続けている。

「女王の命令は絶対だ! 返事は!」

「つ、謹んでお受けいたします。女王陛下……」

 ビスカは理解できないまま、つい条件反射で軽はずみに返事をしてしまった。

「お前にはもっと修行が必要だ! しばらく先生の元で勉強してこい!

 レット=リーヴ先生の元で!」

「え! お、お姉様……」

 ビスカの中で、やっと今日の出来事の全てが繋がり、自然と嬉し涙が流れた。

「お前は私に似ないでデキが悪いから、なんならもう帰ってこなくてもいいぞ。

 一生そこで勉強してろ!

 だがそれでも本当に女王になりたいのなら私の椅子を自らの手で奪いにこい。

 それ位できなくてこの国を治められるものか!」

 厳密にはまだ即位はしていないが、フレグラント王国史上初の女性の王になるシルフィーネの、ひとつめの賞賛される素晴らしい国策だった。

「ビスカが希望をつくってくれたのだ。次は私達の番だ。これから忙しくなる。

 私を助けて欲しい。ラナ」

「もちろんです。お姉様……いや女王陛下。ビスカに負けてはいられませんね!」

 ビスカの二人の姉は、二人にしか聞こえない会話を交わしこの場を後にした。


 三人の姉妹がビスカに飛び込んでくる。おひさしぶりの定番の風景だ。

「お姉ちゃん~!!!」(三姉妹一斉に)

「これからもヨロシクね! サクラちゃん、ユカリちゃん、ヒマちゃん。

 そして……お兄ちゃん!」

 この四人の少女が笑顔で抱き合う姿は何回見ても飽きない。ずっと見ていたいとすら思える。

 だがレットはやっぱり引っかかる点をスルーする訳にはいかず、不満そうに答えた。

「お兄ちゃんはよしてくれよ。ビスカ」

「うん、わかった! レット!」

 彼女は即答した。ずっと【呼び捨て】で呼びたかったのだが、キッカケがなかっただけだった。レットは目を大きく見開き、惚けたまま彼女を凝視した。

 いつも「わかっていた」とか「そうだろう?」的な、さも全てを悟っていた風にしていた男も、まさかビスカからこんなリアクションが返ってくるとは思いもよらなかった。

 その一言は何にも勝る最高のご褒美だった。

 レットに向けたその笑顔は彼にとってビスカ史上、最も美しく最も輝くものに見えた。

 自分はただ単純に「呼び捨て」にされたくて頑張ってきたのかなとすら思えた。

 さあ帰ろう! とレットはいつものようにかけ声を言おうとしたが、その役目はビスカお姉ちゃんにとられてしまった。

「さあ、みんな! わが家へ帰ろう! 

 今夜は新女王誕生祝い & お帰りお姉ちゃんこれからもよろしくねパーティーだよ!」

「お~!!!!」

「あ、それと、王と王妃、ついでに師匠は生きているよ」

「え!」

 勢いにわざと水をさすようにレットは衝撃的な一言をにやけながら、ぼそっと呟いた。

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