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森のブーケストラ 〜私が女王になるまでの物語〜  作者: ヒロA


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第二十六楽章 【百剣流】だ。いやそれを越えた【千剣流】だな 

「ス、スピカ?」

 それと時を同くして、槍の魔の手からレットの防御結界盾で一命を取り留めたサクラは自分の後ろの辺りでゴソコソ、カリカリという音に気づき、なにやらつぶやいた。

 彼女の縛られた縄を一匹の金色の小型魔獣ラヴィが鋭い前歯で引きちぎっていた。

 【スピカ】と呼ばれたラヴィはサクラが森で助けたあのラヴィであり、レットがここへ連れてきたものだ。別働隊としてレットの指令で秘密裏に救出作戦を決行していた。

 実はここで、昨日のレットとビスカの潜入するための共同作業が活きていた。隠し通路を活用し、最短距離かつ隠密に【スピカ】はここにたどりつく事ができた。

 他の四人の縄も鮮やかな手さばき、爪さばき、キバさばきで次々引きちぎり解放した。

「待っててお姉ちゃん! サクラちゃん、加勢にいくわよ!」

 解放されるや否や、ユカリは誰よりも俄然やる気でタイミングをうかがっていた。

「オッケイ! ユカっち、今までの借りを返そう!」

 サクラも臨戦態勢を整えた。

 今までの鬱憤を晴らすかのように二人の乙女は、勢いよく一斉に飛び出していった! 

 ……が、その思いとは裏腹に、即襟をつかまれ、後ろヘ引き戻された。。

 二人を制したのは第一王女シルフィーネだった。

「ちょっと待て! サクラ! ユカリ!」

「シ、シルフィーネ様?」(二人同時に)

「野暮な事はするな。これはビスカ達のケンカだ。邪魔をするのでない。

 最後まで信じて静かに応援しているんだ。お前達が加勢しなくとも必ず勝つから。

 それでも、もしお前達の力が必要なら二人から合図がくるはずだ」

「……わかりました。シルフィーネ様。信じて見守る事にします」

「……わかったよ。シルフィーネ様。でもヤバかったら助けに行くからね」

 若干不服そうではあったが二人の妹は、シルフィーネにしたがった。

 ちなみにもう一人の妹のヒマワリは、スピカと戯れていた。

 誰よりも加勢に行きたかったのは、二人を制したシルフィーネだった。だが武器を持っていない自分達が加勢に行った所で、またヴァフォーケンに利用されかねない。かつ場が荒れてビスカ達の勝ち筋がおかしくなる事も考え、冷静に静観するという判断をした。 

 だが、もしビスカが窮地に陥るような状況になれば誰よりも速く飛び出していくつもりだったし、ここを襲撃されれば命をはって四人を守る覚悟だった。

「あ、それと、シルフィーネ様じゃなくて、シルお姉ちゃんな」

「えっ…………」(サクラとユカリの二人同時)

 そんなシルフィーネは、自分の呼び名をなぜか訂正させた。


 五人の身が自由になったという事は、本当に何も気にせずヴァフォーケンだけに集中できる状況が整ったという事だ。

 その事実をビスカはレットより意識共有で知らされ一瞬笑みをこぼした。

 もう迷いはない。気を引き締めてヴァフォーケンに対して飛び込んでいく。

 ヴァフォーケンはその勢いに押され、後ろに徐々にさがる。

 用意した魔力を宿した槍を次々飛翔させ攻撃するが、彼女はくるくる自分自身も回転させながら右から左から円を描くように斬撃を繰り出し、時に刀剣を空中で左右入れかえたり、逆手に持ち替えたりしながら、相手の力を逃すように払いのけ続ける。

 槍は次々に無力化し辺りに散乱した。

「うわ〜、この剣技、もう【双剣流】でもないな。剣が何本にも見える。もう師匠の言う【百剣流】だ。いやそれを越えた【千剣流】だな。何なんだよ。この成長スピードは」

 レットの賞賛は、いつしか師匠への対抗心に変わり彼女の剣を【千剣流】と称した。

 用意した空飛ぶ槍は全てなくなり、終いには自らの手に槍をもって高速の突きをくりだしたが、ことごとくさけられ、はじかれ、柄の部分を折られ無力化した。

 それでも諦めず腰にさげた自らの剣を抜いた。

「ほう、思った以上にやるではないか。単なるいたいけな王女様ではなかったようだ。本当に黒髪のウィンヴィーネなのだな」

(な、なんだ? このプレッシャー? 人が変わったようだ)

 場の空気が変わったのを感じた。それはレットだけではない。ビスカをはじめこの場にいる全ての者が感じていた。

「ふう。あらためてお手合わせしよう。もう小娘と思うのは失礼に当たるな。

 一流のソードマスターと思い闘わせいただく。

 黒髪のウィンヴィーネ、いやビスカリアフィーネ=フレグラント」

 剣を構えたその姿は、上から目線でビスカを持て遊んでいた者ではなかった。

 その威圧感に蹴落とされそうな気持ちに負けまいと、ビスカも力強い眼差しで対峙した。

「では、改めて参ります。ヴァフォーケン卿」

 二人は同時に向かっていった。

 お互いの剣の攻撃を、剣でさばく。かわす。

 ビスカは、体を回転させ攻撃をさけながら二本の剣の攻撃を優美に変幻自在に繰り出す。

 ヴァフォーケンは、それとは対称的で、動きは最小限で、攻撃は剣でしっかり受け止めつつ特に紙一重でかわしながら、力強い一撃を叩き込もうとする質実剛健型。

 相反する剣豪同士の戦いは、互角であり、永遠に続いていくようにも見えた。

 だがそれがいつまでも続くわけではない。異変に最初に気づいたのはレットだった。

「まずいな。こりゃ。このままではビスカはやられてしまう」

 その言葉の通りに徐々にヴァフォーケンが推しているように感じた。

「ワイス流双剣術の弱点、というか双剣流の弱点がでてきたなぁ」

 ビスカは変幻自在に繰り出しているつもりでもいつしか剣の軌道やタイミングが固定化してしまっていた。それが双剣流が根本的に難しい剣術といわれる所以であり、双剣を訓練するくらいなら一本の剣を極めた方が効率的だといわれる所以である。

 本当にワイス流を免許皆伝していたのならパターン化はあり得ないのだが、ビスカの場合、高水準のレベルにいるとはいえ、それでも【にわか】の部類に入る。

 特に相手は最上級のソードマスターである。そのパターン化された動きは、一度慣れてしまえばもう変幻自在な剣には見えず、むしろ次の動きを読みやすく戦いやすかった。

 かつ時間が立てば立つほど体力面においてもビスカの方が分が悪かった。

 男女差はいうまでもない。それに加え、最小限のムダのない動きで対応していたヴァフォーケンが圧倒的有利で、派手に動き続けるビスカのほうが消耗は激しい。

 実際、ビスカの動きが徐々に鈍くなっているように感じた。

 その状態を本人も理解しながら諦める事なく、かろうじて攻撃をかわし受け流しながら、徐々に後退していた。明らかに劣勢だった。

 そして集中力にも限界はきた。ヴァフォーケンは一瞬のスキを見逃さず、ビスカの左の首筋に向かって今まさに決定的な剣戟を食らわせようとした。

 ビスカは時が止まったように感じ、一瞬で自分の負けを悟り死をも覚悟した。

 だが、彼女の思いとは裏腹に自分のからだは予想外の行動を始めた。

 彼女は左手に持った光剣を手放し、腰を落とし、水平に向かってくる剣を、左手のアッパーパンチで投げ飛ばした。

 驚愕の表情のヴァフォーケンに向かって、今度は右手のおキクちゃんを両手で握り、上段から力強い一撃を振り下ろした。

 ヴァフォーケンは間一髪、の所で、後方へ飛んでかわした。残念ながら、彼の額に傷を与える程度のダメージしか与える事はできなかったが、それでもその攻撃は彼に精神的ダメージを与えた。

 だが最も驚いているのはビスカ自身で、自分の左手を不思議そうに凝視した。

 達人レベルの鍛錬をし続けた者なら、意識せずとも無意気に体が動く事もあるだろう。だが、無論ビスカはそのレベルではない。ではなぜそれが可能だったのか。その答えは数分前に遡る。

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