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森のブーケストラ 〜私が女王になるまでの物語〜  作者: ヒロA


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第二十四楽章 思考と言葉、そして【笑顔】ですよね

 なにか空気が変わったようにそこにいる誰もが感じた。もちろんヴァフォーケンにも。

 彼もなにか感じたのだろうか。明らかに表情にも余裕がなくなっている。

「私は、ビスカリアフィーネ=フレグラント。

 二人の姉のいるフレグラント王国第三王女にして、三人の妹達の姉!

 あなたの事を止めて見せます。覚悟してください逆賊ヴァフォーケン!

 あなたはそこのカワイイ少女達に釣り合わない! 身分をわきまえなさい!」

【ぶたさん】達との戦闘で誰かが言っていたような事をビスカは宣言した。

 あえて、自分にかつを入れるために、につかわしくないきつめの言葉を言いはなった。

 その時、首にさげた四つのペンダントがその声に呼応した。服の中に隠していたはずのペンダントが浮きはじめ姿を現し、ゆらゆらとゆれた。

 宮廷魔導師・故ワイスより託された黒色のものと三姉妹のものをビスカは首にかけて胸の奥にしまっていたのだ。

 黒い宝石以外の三姉妹のペンダントは、ビスカからはなれ彼女を囲むように浮遊する。

 まるで、お姉ちゃんがんばって! と応援しているかの如く。

 はりつけにされているサクラ、ユカリ、ヒマワリが同時に叫ぶ。

「おねえええちゃあああん!!!」

 はりつけにされている第一王女シルフィーネが力強く叫ぶ。

 無音だったはずの声が今度は届いた。

「ビスカリア〜! 私達に構わずヴァフォーケンを討てぃ!」

 第二王女ラナフィーネが静かに告げる

「ビスカリア、アナタのおもむくままに」

「アリガト、お姉ちゃん達。カワイイ妹達。絶対助けるからね」

 ビスカはふだんお姉様といっていたのに、三姉妹のように自分の姉を「お姉ちゃん」と呼んだ。本人達には聞こえる事のない極々静かな声でつぶやいたが、その思いは二人の姉と三人の妹に届いていた。

 その時だ。黒い宝石【ソウルフル・クォーツ】が点滅し、どこからか声が聞こえた。

「ピースが揃い、キーワードを認証しました。一時的に、防御結界を解除します」

 辺り一面から、ブォーン、ブォーン、ブォーンという音が響き渡った。

「こ、これは? 宮廷内の魔法防御結界が解除された?

 ……なるほどそういう事か。ビスカのペンダントは解除するための鍵だったのか。

 ピースとかキーワードとか言っていたけれど発動条件はなんだったんだ? 特定の言葉? 強い思いの込めた不特定の言葉? それともビスカ自身? それとも……って最初から教えておけよ。じじぃ〜!」

 ここにいる皆が空気感が変わったのを感じ、辺りをキョロキョロと見渡した。

 あれだけ高飛車だったヴァフォーケンも例外ではなく、若干狼狽していた。

「なんだ? なにが起こった?」

 一人、左手と右足を失ってうずくまって座っていたレットだけは冷静を取り戻していた。

「やっぱりおれの師匠が最強だよ! でも、でもあのじじぃ〜! いっつも限界以上にやらないと助けないのはホント意地悪いよ。こうなったら、とことん助けてもらうからな」

 彼は自分だけとか自分たちだけで成し遂げるなんて、そんなエゴイストでない。人の手を借りる事を躊躇しない。自分の力だけでやって達成できないより、助けてもらう事で達成できるのならそちらの方を躊躇なく選ぶ。

 彼は、師匠から予言めいた事を言われていた。

「君がなそうとしている事は難易度の高いものだ。君がどれだけ鍛錬と準備をしても君だけでは不可能だ。成功するためのピースが揃うまで事を起こすな。最後のピースが揃った時はわかるし、その時には必ず成功するから焦らず待つんだ」

 そのピースが何なのか、いつ揃うのかまでは、意地の悪い師匠は教えてくれるわけはなかった。それを必死で考え探した。その一環が魔王探しであり【フェシー】の構築だった。

 そして時がきた。最後のひとつのピースこそ第三王女であり、ワイスのもう一人の弟子でもあったビスカリアと直感した。

 だからこそフェシーを使い、王宮の状況を誰よりも早く正確に把握した。

 追手に嘘の情報を流し、情報を混乱させ煙にまいた。

 フェシーや、伝書鳩、手紙等の連絡手段を用い、ワイスの人脈や顔なじみの人達と連絡を密にとり以前から協力を仰いで対策を整え彼女を自分達のところまで誘導した。

 レットがビスカの逃亡劇成功の導き手で主犯格だったが、すっとぼけていた。

 それほどの事を自分にやらせた師匠だから何も仕込んでないわけはないと思っていた。 

 ただ仕掛けの内容も時期も発動条件もまるでわからなかったため、あてにしすぎてはいなかったし結局は自分の思考と能力、選択が重要な事も理解していた。

 レットは精一杯の声でビスカに向かって叫ぶ。

「ビスカ、進級試験だ! わかっているな! 魔法の重要なキーワードはなんだ!」

 卒業試験と言わない所がいじらしい。彼女とまだ離れたくはないという事だ。

「はい、わかっていますよ。センセ! 思考と言葉、そして【笑顔】ですよね(ウフッ)」

 レットに顔だけ向けて答える。ビスカは優しさに満ちた表情で返事をした。

「全く、君は教えた事以上の答えを出すんだな。センセを超えるの早すぎるよ」

 思考と言葉……強く思い、強く念じ、深く考える。

 でもそれだけでは足りない。それらを表現する事、言葉に乗せて伝える事で魔法は発動する。

 それは魔法に限った事でない。魔法が使えない自分だって同じ事をすれば力が生まれるはずだ。意志を示せば必ず道が開けるはずだ。……とレット達兄妹に教えられた。

 言葉は力をもつ。言葉は勇気を与える。言葉は信頼を築く。言葉は幸せを運ぶ……。

 聞いた事以上の事まで詳しく、かつ自分がわかるように、彼は丁寧に教えてくれた。

 彼女達は本当の姉妹のように慕ってくれた。

 自分の事をカワイイカワイイ、カッコイイステキステキと心から褒めてくれた。

 第三王女として自分を抑え虚勢をはり続けた自分の中身を色眼鏡ぬきで見てくれた。

 自分のダメな所や弱さすらも魅力があるといってくれた。

 一緒に笑ってくれた。泣いてくれた。

 その言葉や態度にお世辞や打算、身分の違いはなかった。

 彼女達は私の事が大好きという思いを隠さず真っ向から直接愛をぶつけてくれた。

 ここに助けに来たときに彼女達が「逃げて〜」と言ったのは、私達の事が心から本当に大切で失いたくないからだ。

 そしてその裏で、その言葉の意味とは別に、いつか必ず助けてくれると信じている心も乗っているのがわかった。

 だから私も同じ事をすると決めた。失敗とか恐いとかそんなものはもうどうでもいい。

 その思いに応えよう。私も大好きな思いを精一杯伝えよう。表現しよう。必ず助けられると信じて。彼女達の大好きな笑顔を思い浮かべて……それを取り戻す。

 自分が【笑顔】=【希望】を失わなければできるはずだ。

 だから、重要なキーワード【思考と言葉】に【笑顔】を付け足した。

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