表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服後:織田信長

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/45

第35話:領土拡大

「武田と長尾の争いが激化しとるようじゃな」



俺は、小姓頭の長恒にそう声をかけた。



「えぇ。信長様の思惑通りですね。」



「はっ。別に当然のことじゃ。そもそも、わしが何もせんでも始まったことよ」




「さようですか・・・。で、そろそろ動きなさるので?」



長恒は、少しばかり疲れた養生を浮かべたが、直ぐに真剣な顔に切り替え、俺にこれからを促してきた。




「あぁ、動くぞ。」



これから、今川と武田両家を一挙に攻める。




しかし、その前に両家の現状について説明しておこう。



昨年秋ごろ、俺たちは、【米・麦・塩】など、溜め込んだものを一挙に放出した。

これによって、織田領内今川領内含め、周辺の地域ではそれらの価格が瞬く間に崩壊。


それらを取り扱っていた商会のほとんどが潰れる羽目になった。

もちろん、織田家に従っている紹介は別である。



この影響で、長野・北畠・斎藤・今川。これら四家の領内で暴動が発生した。

暴動である。

一揆ではない。


これらの集団が統制されたものなら交渉などという手段もとりようがあったのだろう。

しかし、これらは何もかもが統制されておらず、そのほとんどが瞬く間に制圧されてしまったのだ。



順を経て説明しよう。


俺たちが在校放出した後に起こったのが、麦の価格崩壊だ。

しかし、これはあくまでも麦。

主要な食べ物ではなく、農家も売るというよりは、作った後には家で蓄えておくという類の食物である。

なので、この移転では売値に不満は出るとも、そこまで大きい影響はなかった。



だが、その翌々月。

米でも同じように買取価格が安くなり、価格崩壊が起きたのは、扱う商人にとっては致命だったろう。

また、同時期に"塩"でも同じことが起きていたのが悪い意味で功を奏した。



商人の"破産"である



米・塩


これらの戦略物資が扱える大商人たちが軒並み破産したのだ。

まぁ、もちろん、これ以外を扱う大商人だって当然存在する。

だから一見、問題ないようにも映るだろう。



だが、問題は派生する。



だがまず、"前提"を挙げておこう。



そもそも、「なぜ米や塩は売られているのか?」だ。


当然、生きていくためではあるのだが。

農家や武士は米などを売って、銭を得る。→その得た銭で武具や服、農具など様々なものを得られるわけだ。


だが、これがなくなればどうだろうか?それらは当然得られなくなる。


まぁ「我慢すればいいだろう」そういう意見もあるよな?

しかし、そうもいかないのが世の中だ。


さらなる話として、ほとんどの農家や武士には"借金"がある、という話だ。




借金は何で返せばいいと思う?



米?麦?あるいは塩?いいや違う。"銭"だ。



大商人たちには、倉庫ある商品が一気に無価値になった。

つまり、商人にとって倉庫にあるのは、売れることのないゴミでしかないわけだ。


だが、商人として生きていくには銭が必要だ。税を納めなくてはならないしな。

税のない商人も多いだろう?という意見も出るかもしれない。


しかしな。

武士に納める税金がなかったところで、商人たちがその"会合"や"寺社"などに納めるものがなくなるわけではないのだぞ?



なら、この後に起きることがなんなのかわかるだろうか?

現代人にはわかるかもしれない。



手持ちの金がなくなった債権を持つ者が、"債務者"にすることというのはなんなのか?



難しくもなんともない。


"貸し剥がし"である。



あと何年も先であったろう返済が、いきなり襲ってくるのだ。

こんなもの誰も彼も納得なぞできようはずもない。



だが、商人たちには"後"がない。

彼らだって、余程に溜め込んでいる者でもなければ待っているのは"死"である。



そんなものを誰が甘んじて受けようか?



結果

起こったのは各地での暴動である。

当然、徳政の暴動もあったろうが、それだけで済むはずもない。

数多の者達が数多の理由で争ったのだ。



商人が貸しはがししようとし、農家や地侍がそれに抵抗する。

それを強制させるために商人も、寺社や上級武士達と手を組んで圧力をかける。



暴動の始まりなわけだ。

暴動を起こしている者達には、共通する大義などありはしない。

また、起こったタイミングも彼らからすると急すぎた。


まとまりようがないのだ。



ある者達は一揆の起こった村を制圧し、ある者は寺社を焼いた。

またある者は、農民達を追い出して村を制圧するなどしている。


誰の手にも負えない事態だ。



手に負えているのは計画した織田家のみである。

そして、織田家では、昨年起きた騒動を利用し、領内の国人領主から米や塩以外の物の買取と借金の一本化を行っている。

ここでの米や塩以外のものとは、戦をするのに必要なものの全てである。

当然、そのことを伝えはしないし、強制もしない。


「いざという時には織田家から貸し出しますよ?」というふうに声もかけてある。

借金の一本化だって、織田家から国人領主へと貸し出すというふうにしただけだ。


あれからも非難される謂れのないことしかしていないのである。



そして、これ領外には適応されない。

だが、領外に"話だけは伝わる"のだ



これが連鎖反応を起こし、新たに起こったのが2度目の暴動である。

内容は『領主を織田家にしろ』というものだ。


具体的にはいろいろあるが、要はこういうことである。

これを踏まえて、俺たち織田家は軍を起こすことになったのだ。


対象は『今川家』『長野家』『斎藤家』

この3家である。



軍の総数は、総勢二万人

それが4軍に分けられ、進行は開始される。


斎藤を攻める北軍は『織田信光』6000

長野を攻める西軍は『織田信秀』5000

今川を攻める東軍は『織田信長』7000

織田領内を守る中央軍が『織田信広』2000


という構成である。



本来であれば、信広兄が東軍を率いるべきなのだろが、今回の今川武田攻めは、俺の計画で始まっている。

そのために、俺が指揮を取ることになったわけだ。押し切ったとも言えるが。



そして、それぞれに向かう方面軍の兵が少ないようにも思えるかもしれない。

しかし、これらの3地域では既に、武士の秩序が存在していない地域となっているのだ。



分かりやすくいうのなら、『親織田家』の勢力にこれらの地域の各所が制圧されている状況である。

なので、今回起こした軍もほとんどは接収軍でしかないわけだ。


それと、西側の軍がすくない理由は、本願寺地域に住んでいる者達が既に織田経済圏から離れられなくなっているからである。

簡単にいうと、経済支配が済んでいるのだ。



長島本願寺は、現在、サウジアラビア化している。といえば、現代の人には分かりやすいだろう。

織田家と長島は、木綿に関しての契約を交わし、織田家はその対価を十分以上に払ってきた経緯がある。


そしてその払われた対価は、この地域の者達全てを豊かにし、この領内で扱われる貨幣は"織田布幣"なのだ。

つまり、木綿ブームで盛り上がっている状況下にある、といえば理解しやすいだろうか?


木綿成金なども生まれ、この地域では米などはほとんど育てられなくなってしまているのだ。

寺などには当然蓄えはあるのだが、彼らには織田家と戦う理由など欠片もないといえよう。


というか、織田家と戦えば収入源がなくなり崩壊するしかない状況になっているのだ。



その結果、長島は桑名を含めた地域の織田領有を認めた、というわけである。

ちなみに、敵対する者は、今回の価格崩壊でほとんどが破産しているので、敵対することすらできないまま消えている。




織田家の各地制圧は、瞬く間に進むことになり。

半年後には北側は稲葉山城に関ヶ原。

西は安濃津城。

東は飯田城に吉田城といった城と地域が、織田家所有のものとなった。



この結果、北の斎藤家は崩壊し、美濃は北側をいくらか朝倉に占拠された以外は国人衆が群雄割拠したし

西は、本願寺や諸都市の商人達は織田の傘下となり、割拠していた北伊勢の国人衆達はその地を去ることとなった。





───そして、東だが。



「今川はどうなっておる?」



「はっ。それが、どうも反乱が起きたようでして・・・」



「何?誰が反乱を起こした?義元はどうしたのだ?」



「どうも、武田の先代当主のようでして・・・。義元の安否についてはわかっておりませぬ」



今川は、武田信虎の手によって崩壊していた。




「くそっ・・。やってくれたわ。・・・もしや当家からの支援米が利用されたか?」



「そのようです・・・。武田本家から信虎に接触したとの報告もありました。ここまで大掛かりな事態を狙っていたとは思わず・・・」



どうも、武田晴信は、今川が北条と接触を持っていたことにも気付いていたのだろう。

それの釘刺しなども込めて行動していたのだろうが・・・



「・・・晴信の指示ではないな」



「わかりかねます。しかし、武田本家が今回のことを予想できていたとは思えません」



そう。武田晴信は万が一に備えて、信虎へと隠居料的なものを渡していただけだろう。

その見返りに今川のことを報告するなり、北条との同盟に釘を刺すなりして欲しかっただけだろう。



しかし、



「はぁぁぁ・・・。信虎め・・流石よ。やってくれおったわ・・・。」



この状況を利用した者がいたのだ。武田信虎という名の隠居ジジイが。



「いかがなさいますか?」



「とりあえず、初期目標からは変わっておらん。武田とは停戦・・・いや同盟だな。俺たちはこれ以上武田領には欠片も興味を持っておらんしな。」



「では、同盟の打診を?」



「あぁ。飯田城まで奪っておいて図々しいとは言われよううが、な。その分だけの対価は支払っておる。文句なぞ言わせんさ」



「合わせて100万石以上ですからな・・・」




───こうして、武田は海を手にいれ、長尾との戦をも優位に進めることとなった。

織田家への小言も多少あったようだが。

それでも、武田家は全てを飲みこみ、織田との同盟がなされることとなる。



今回の事態で完全に置いていかれることとなった北条家は、西からの圧力がさらに強まることとなり、どんどんその勢威を落としていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ