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聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服後:織田信長

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第31話:反乱分子

「信長様、信勝様がどうにも怪しい動きを」



ある日、恒興が俺にそう告げた。



「ん?信勝の奴が?ほぉ?そうなのか、で、何をしとるんじゃあやつ」



俺からすると、信勝が反乱を企てるのは想定内である。

だからこそ、徐々に徐々に尾張の外側へと追いやっているわけであるし。


「先日の服部攻めで香をあげられなかった者らに、信長様への反抗心を煽る手紙をばら撒いておるようです」


話を聞くと、信勝と信勝に寄る者たちは、自分たちの仲間を募り反抗勢力を作るのに必死らしい。

現状、付き従っている者は、林通具・佐久間信盛・佐久間盛重・柴田勝家・津々木蔵人・山口教継・山口太郎左衛門



史実ではこちらに付き従っていた者もいるが、この世界では関わりが薄く、信勝の方に走ったようだ。

柴田勝家や佐久間信盛は優秀ではあるが、中央集権化を目指している俺としてはこいつらを必要としていないのだよな・・・。


それに、俺には今のところ信勝を殺すつもりもない。

なぜなら、彼は史実でも信長に代わり織田家当主を務めた程度には優秀だ。



だから、どうせなら分家として別の場所で生きていってくれればいい。




「ふん。俺に対する不満分子どもが集まっているわけか。」



「そうなります。しかし、総数としては大したものではありませんね。それにどれも尾張中心から外れたものばかりです。主要街道からさえ外されています」



それはそうだろう。

俺が引き入れるべきだと思った者は、すでに尾張の主要な地域に振り当ててある。

さらにいうなら、街道も新規で整備したものは全てこちらの傘下の場所だ。


つまり反抗している者たちというのは、俺がもたらす利益から外された者たちだけなのだ。

あぁ、林の弟以外は。



林通具、あいつはクズすぎて早々に排除を決めた。

ただ、林秀貞の弟であったから殺すことまではできなかっただけだ。


それも今回で終わるだろう。

この件は秀貞にも伝わっている。



昔からアレのことで散々苦労していた秀貞も、諦め得ざるを得ないだろう。

信勝と俺との継承権争いは、始める前にすでに決着しているのだ。



信勝自身、反抗の意思は持っていても反乱を起こすつもりなんてないだろう。

実際に、あいつ自身、家臣に好き勝手させている部分はあっても、自身では何一つとして活動していない。



今回の件も、実際に取り行っているのは津々木蔵人と林通具である。

柴田や佐久間などは、こいつらの会合で愚痴っているだけなのだ。



これでは、こいつらを処刑する理由に遠すぎる。

できるのは、せいぜいが俺から遠ざけるくらいだ。



「んーー・・・、そろそろ信勝を働かせるか」



「は?働かせる、ですか?」



俺の考えが理解できていないこいつは、働かせると言ったことに疑問を抱いているらしい。


「あぁ、美濃との国境の城にあいつらを移そうと思っての」





その後、親父殿の許可を得て、織田信勝とその一味を美濃との国境の黒田城・・・の先、木曽川沿いに作られた西本郷城へと彼らは移された。



親父殿に許可をもらいに行った時には、

「ふむ・・。良いぞ。そろそろ処分しようと思っていたしな。」



と、どうやら親父殿はすでに感知していたらしい。

親父によると、彼は柴田勝家から逐一報告を受けていて、いつ処分を下すのかを秒読みの段階だったようだ。



流石の親父殿である。

史実での織田信秀、晩年の様子はかなり酷いが、恐らく、流行病以外にも何かしら症状が出ていたのではないだろうか?

ここ最近の様子を見ていると、そうも思えてくる。



というわけで、今回、津々木蔵人と林通具は、謀反の容疑で処断された。

どうも、親父が握っていた証拠の中には、完全な謀反の証拠もあったようだ。



「親父殿はようやるのー」


「流石は大殿様です。仕事が早いですね。」


「じゃの」


この騒動で、その2人以外の信勝一党は配置転換となり、傘下の国人衆は、領地のほとんどを奪われ、完全な銭取り武士として信勝付き家臣となった。



やはり、柴田らに監督させていた親父から見ると、信勝は謀反というには弱いらしい。

信勝は、彼らの会合に顔は出しているが実際の行動は一切せず、その場で愚痴を言うばかりだったそうだ。

そうすることで、鬱憤を晴らしていただけなのだろうか?



結局のところ、信勝の真意はわからないままだ。

親父も、本人が何一つことをなしたと言う証拠もないままに信勝を処断と言うことはできないようだ。

これは、親としての感情らしいな。

土田御前を慮って、というのもあるだろう。


しかしながら、監督責任は負わせ、転封という今回の処分となったわけだ。

そしてその流れで土田御前、つまりは俺の母親だが、彼女は信秀の下を離れ信勝とともに西本郷城へと移った。

責任を感じてのことだそうだ。



西本郷城は、黒田城と並んで美濃からの防壁の一つとして機能するように作らせてある。

城内の環境も整備され、上下水道ができている試作モデルの城でもあるのだ。

南側からの侵入は容易だが、北側からはほぼ間違いなく攻め落とせないだろう。



建設そのものは、コンクリートを多用して作られ、上水は、木曽川の地下から流れ込ませた水を発電機を使った汲み上げ機にて、城上層まで運ばれる仕組みとなっている。エレベーターのような形だな。



そして下水は、一度、城の下層にある大型のタンクに溜められ、そこで中和された後、再度川へと流される仕組みだ。

これは、石鹸の大量利用によって、川や土壌の性質を恐れて取り入れられた仕組みだ。

毎回、朝顔のしぼり汁を使ったp H測定紙を使って測定された後に流されている。



環境は整備されているが、信勝に任される兵は1000人もいない。

美濃防衛には最低の兵数である300人ほどだ。

が、見捨てるつもりもなく、その南の黒田城には1500人規模の兵が常駐している。



実態としては、美濃の壁というよりも木曽川での監視業務が中心となるだろうな。

美濃は安定しないまま、斎藤道三は加納城で執務をとっている。

史実のように稲葉山城を改修できるほどの余力もないのだろう。


美濃の国人衆は、土岐を追い出した後は思い思いに動いている。

織田に声をかけてくる者もあるようだが、関ヶ原から各務原方面までは道三の影響下らしく、そこまで大々的なものではないようだ。



朝倉も六角も、調略を進めているようだが、西美濃東美濃にはその効果は及んでいない。

が、これは彼が善戦しているというより、2家のやる気のなさも原因のようだ。



「土岐は手放したいがこちらに協力してくれる美濃国人もいない」

これが両家の心情だそうだ。



両家の人間はことあるごとにこれを漏らしているらしい。

代理の美濃守護を立てようにも、意見がまとまらないらしく、守護のいない分裂した国と成り果てている。



しかし、そんな中でも道三は活発に動いているらしく、未だ戦と調略で美濃をまとめ上げようと各所に手を伸ばしているようだ。

5年ほど前まではこちらにも手を伸ばしてきていたが、今ではもう一切ない。


どうやら、こちらの国に手を出すより、美濃国内の国人に手を出した方が利があると見たらしいな。






・・・・・・・・・




「で?長島との話し合いはやっと終わったのか?」




服部党討伐より一年。

あの後、願証寺や長島の者たちと話を進め、やっと木綿に関する話がまとまった。



「はい。どうも、本願寺の方でも、銭不足に関する懸念は持っておったようですな。どうにも商いに詳しいものがおるようです」



まとまった内容としては、

・長島本願寺の勢力圏で、木綿を栽培

・作られた木綿9割を織田が買い取る

・支払いは、一度目を除き、全て織田布幣にて行われる。

・織田からの一部技術提供

・長島が攻められた際は、織田家が支援する


と言った内容となった。





いくつかある織田家からの技術提供や支援というのはこちらから言い出した内容だ。

とは言っても、兵の支援はしない、という条件も付随している。

これは、長島側が言い出したことのようだな。



「よし。これで来年からは少しずつ布幣が出せるな・・・。」



「ですね・・・・。ようやく一安心です。」



「あぁ、ギリギリ間にあったか?」



「どうでしょう?畿内では米の価格変動もあると言いますし、なんとも言えません・・。」



この時の畿内は、デフレもあったのかもしれないが、戦による影響も大きく、貨幣量による影響がどこまで出ているのかは未知数だった。



「出てはいるのかもしれん。しかし、流石にどれだけ出ているのかなぞわからんわ」



「ですね・・・。三好と畠山の戦に本願寺、根来、公家、将軍家・・・、勢力が入り乱れていてさっぱりです」



「まぁ、そんなことはいい。それより、領内の河川工事の話でもしよう」



俺は、畿内についての話を切り上げ、国内の話しへと移った。

天下統一など目指していない俺からすれば、畿内のアレコレなんぞ、他所の国の天気以下の興味しか持てないのだった。

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