表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服後:織田信長

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/45

第20話:判明した力の、もう一面

清洲城攻略と織田大和守家の追い落としはあっさり終わった。

いや、本当にあっさり終わったのだ。



坂井大膳や坂井甚介たち一族は、何人かが戦の最中に亡くなり、相手陣営はかなり混乱したようだった。

そこを親父殿が突き、向こう陣営はあっさり壊滅した。



織田信友の方は、そもそも傀儡に近い状態だったためにろくな戦力が集まらず。

坂井との城内での争いでは対等だったが、城外では相手にすらなっていなかった。



なので、どちらも親父殿は潰した。

信友に関しては、生かしておいては面倒になるだけなので、向こうが降伏する前に殺害したようだ。



斯波氏に関してもしっかりと取り込んでいる。

義統殿は、物分かりがよく、思った以上に聡明なようだった。


義銀、もとい岩龍丸の方は、まだ4歳なのでわからない。



だから、親父殿にいって、俺につけてもらうことにする。

本当はこういうことは無理筋なんだが・・


清洲城には義統殿、

那古野城には岩龍丸として、置いている。


名目上は、那古野城の城主が岩龍丸だ。

当然、実態は俺の城だが。



そして、一緒に勉強と訓練をすることで交流を図り、俺を上位者として精神的に慣れさせていこうと考えてる。

将来的には、妹の婿にして取り込んで仕舞えばいいだろう。



幕府の位では斯波が上になるのだとしても、

朝廷の官位で織田家が上になるのなら、問題なく斯波を取り込めるだろうと思っている。



(問題もあるんだがな)



「岩龍丸様の傅役にはぜひ、私めを!」



こういう輩が湧いてきているのだ。


「傅役はすでに決まっておる。後から来て何を言い出すのだ、主は。」



「僭越ながら、当家は・・・・」



「うるさいわ!去ね!」



追い返して問題ないのか、って?

問題ない。


こいつの家はもうなくなっていて、こいつ自身もすでに浪人なのだ。

にも関わらず、ここまで入り込んでいるのが問題なのだが



それもこれも、こいつの家が清洲で相応の地位にあったせいである。

未だに残っていた者がこいつを城内に入れたのだ。


まぁ当然、見張りはついていたし、一応、正式にやってきていたから案内されたわけである。



とりあえず、俺は処分の命令を出して、次の仕事へと移った。




今の所、岩龍丸の様子は悪くない。

那古野城に移るのも、数えで6つになってからのことになる。


だから、それまでの間、ちょくちょく顔見せに来ているのだが・・・

幾度となくあぁいう輩が湧くから困る。



まぁそのほとんどは城外であれこれ言ってくるだけで終わるのだが。

それでも、無視できないものというのは存在する。



斯波家の直臣だ。



ほとんどはうちで取り込んだが、太田などはまだ斯波の直臣として残ったままだ。


「はあ、勝、まともに風呂にも入れてないぞ・・」



「仕方ないですよ、元服も初陣も終えて、仕事が山積みなんです。」



「城主かぁ・・・。もっと文官がいるだろ、これ」



「若様が色々始めるからですよ。ここにある半分以上は若様のせいで増えてます。」



「だが、早いうちにやっておかないと、今川が攻めてきたら詰むから仕方ないだろ」



「今川の前に、この紙や木簡竹簡に潰されそうですけどね。

というか、全て紙で統一してくれないですかね・・・」



「仕方あるまい。まだまだ、紙は高いのだ。ましてや、美濃紙の値が上がっている。こればかりはどうにもならん」



「美濃、斎藤ですか。確か道三、でしたっけ?かなり荒れているようですね」



「あぁ。土岐を追放したは良いが、まとまりに欠ける。六角も朝倉も攻めることなく外からの干渉に留めているから、余計荒れているのだろうな」



「そういえば、若様が以前言っていましたね。

確か大殿が攻めると、道三の影響力が増す、でしたっけ?」



「そうだ。親父が攻めてしまうと、向こうに団結するための大義名分を与えてしまう。道三の力を高めるために攻めるなど言語道断だ。」



「ですが、・・・そのせいで苦労させられているわけですけど、我々。」



「仕方なかろう!こうなるとは思っていなかったのだ。

いや、予想はしていたが、紙のことまで考えておらんわ!」



「そりゃ、私も美濃のことって言っても、紙のことまでは考えませんでしたけど・・・、

こんなことでもなければ」




そういえば、言ってはいなかったが俺は元服を終えた。

なので、俺の名前は『織田信長』

勝三郎の方は『池田恒興』となった。


勝も同じ日に元服式を行い、烏帽子親には、平手政秀になってもらった。


林の爺もなりたいと駄々を捏ねたのだが、あまりの醜態に見るに見かねた親父が一喝し、青山の爺が引きずっていった。



(平手の爺は落ち着いてものをよく見ているんだが、どうにも、林はなぁ・・・。

あんなやつじゃなかったのにどうしてこうなったのか・・・?)



色々と、おかしくなった様相の林だったが、その原因の一つが、後日判明した。



ある日、急に親父殿が那古野城の俺のところまで来て、


「おい、吉。お前、あの風呂に何かしたのか?平手や林からも聞いてたが、流石におかしいぞ?」


と言い出した。



「????なんのことだ?

確かに風呂は作ったが・・・、湯を張っているのは珍しいかもしれんが、おかしいというほどではないだろう?」



と、俺にはさっぱりその“おかしい点”については思い当たる節がなかったので、疑問で返した。



「いや、流石におかしい。お前、本当に何もしてないのか?」



「いや、だから、おかしいって何が?なんのことを言ってるんだ、親父。

おかしいおかしいだけ言われてもさっぱり見当がつかん。」



「ここ何日か、あの風呂に浸かってるんだが、どうにも体の調子がいいんだよ。かなりな」



「??いや、単なる風呂の効能じゃないのか???」



「いや、今までも風呂に入ったことくらいあるが、流石に変だ!

何人か怪我をしていた奴にも入らせてみたんだが、医師が治るまで数ヶ月はかかると言っていた傷が、数日で治った。」



「は?????」


数ヶ月っていうと骨折か何かだろうか?

そんな怪我が数日で治る??一体どういうことだろう?


俺が知らないだけで、ここは異世界ファンタジー世界だったのだろうか?



(・・・いや、親父の反応からして、魔法のようなものが今まであったわけじゃない。

とすると、風呂・・・、いや、もしかして水・・・か?)




怪我が治る。


これだけでは見当もつかないないが、風呂と水を繋げると、一つ閃いたことがある。

いや、気づいたこと、というべきだろう。



「もしかして、あれか・・・?」



俺は、転生してから、その身に備わった能力のことを思い出していた。

俺自身、色々試していく中で、水と不純物とを分離するだけの力だと思っていた。


いや、それ自体も間違いじゃなかったが。



(そういえば、水そのものは試したことがなかったか・・・。まぁ、態々、怪我して水に濡らすまでしようとも思わなかったし順当か・・。

だが、傷が癒えるとはどういう原理なんだろう?病気はどうなるんだ?)



「あー、親父。ちょっと2人だけで話が・・・」



「おう。じゃあ、行くぞ」


そう言って、2人で隣室に入って行った。



「で、どういうことなんだ?」



「以前、転生してきたことは話しただろう?転生の記憶を持っていることも」



「あぁ、そうだな。そんな話もあった。だが、それがどうした?前世ではそんな変な力でも持ってたのか?」



「いや、前世じゃ普通のおっさんだったよ。だが、4歳か5歳だったか?そのくらいの時に気づいたんだが、どうも触れた水を分離、あー、綺麗にする能力があるようでな?多分、それが原因なんじゃないかと・・・」



「おいおい・・・。そういうことは早めに言えよ、吉。

今回は流石にビビったぞ・・?」



「すまん。単なる水だと思っていてな、そんなん効果があるなんぞ知らなかったのだ・・・。」



「まぁ、怪我でもしねぇとわからんか。だが、その綺麗にする能力ってのは、どうやって使えるんだ?なんか儀式みたいなのでもいるのか?」



「いや、いらん。俺がこうして触れるだけで作れる。」



「・・・・・まじか・・・・・。いや、まだ、まだだ。

とりあえず、どれだけの効果があるのかを試して・・・いや、違う!まずは緘口令だ。口止めせにゃ!」




「あー、そうだな。口止めしたあと、信用できる奴らだけ集めて、どれだけの効果があるのか試そうか」




「おう!それでいくぞ。とりあえず、すぐ動く。お前も、池田んとこの坊主筆頭に、引き連れてる奴らからも話聞いて口止めしとけ!」




「分かった。」



そういうと、親父は来た道をドタドタと走っていった。





「で、若様、どうなさったんです?何か急ぎごとですか?」


そう言って、少し心配そうに聞いてくる。

従者としては、聞くべき時ではないのかもしれないが、俺としては、多少なりとも交流がある方がいいのでこういう質問は歓迎している。



「とりあえず、広間に赤母衣衆の連中を集めろ。」


俺の元服とともに、従者連中にも名前をつけた。


『赤母衣衆』それがあいつらの名前である。

筆頭は、今のところは恒興(勝三郎)だ。


もうちょっと人が育てば、前田利家に任せることになるだろう。

まだこいつも元服前なので、少なくともそれ以降にはなるが。





「赤母衣衆、全員揃いました。」



「おう、今集まってもらったのは、親父からの話でな、風呂でちょっとおかしいことがあったから、話が聞きたいってことだったんだが・・・。

お前たちはどうだ?何か違和感とかあったか?」



そう言って俺は、詳細を告げずにすの意見を聞こうと遠回しに聞いてみる



「おかしいとこ・・・?訓練の後、毎日のように入ってますけど、特には・・・。若様も入ってますし、おかしなところなんかはないと思いますが・・・??」



「あぁそうだな。いや、風呂に入ると疲れが取れるってのは、あれはおかしなことに入るのかな??」



「いや、普通じゃないか?若様もおっしゃっていたが、疲れが取れるものなんだろう?風呂というのは。」



「そういえばおっしゃってましたね。そうか・・、でもそれを除くと何かありました?私は知りませんけど・・?」



「いや、俺もないな」



「・・・気のせいかもしれないけど、怪我が治りやすかった気がする、んだけど・・・・」



「え、そんなことあったっけ?」



「いや、風呂に入り始めてまだ怪我した記憶ないな」



「あー、まだ半年くらいだしなぁ」



「細かい傷くらいはあっただろう?だが、治りやすかったかどうかまで覚えてないぞ?」



「そうだな・・・、風呂に入る前から気にしたことなかったわ。」



「よしっ分かった。とりあえず、風呂のことはしばらく口外禁止だ。

風呂の効能のことはな。どうやら、怪我などが治り易いものになっているようなのだ。

親父がいうには一部の老臣たちの間で噂になっていたようでな・・・。」



「あぁ、なるほど。そういえば、年寄り連中、最近やたらとやかましいですよね?

もしかしてそのせいですか?」



「あーー、そうかもしれん・・・。もしかすると、林の爺があぁなったのもそのせいか・・・・?」



「・・・、あり得ますね。」



「くそっ、頭が痛いわ。しかし、怪我が治るとすれば、これはかなりの利点だぞ?

使えることは山ほど出てくるだろう。」




「そうですね。前向きにいきましょう、若様。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ