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聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服前:吉法師

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第16話:風呂作りと織田大和守家

那古野城に暖房が設置された次の日。

古渡城から親父がやってきた。



「おう、来たぞ。なんかすごいもん作ったって聞いたが?」



そういって親父は広間の上座に座る。



「まだ、凄いってほどじゃないけどね。

今は、林爺に色々確認してもらってるとこ。」



「あん?林が?そうなのか?」



「えぇ、私が林様に引き継ぎ、暖房の効果を様々な面で確認していただいておりますね。」



「?暖房?吉、お前が作ったのはただの暖房なのか?」



「親父殿。ただの、とは酷い。城の炭の消費量を一気に抑えることができるモノだぞ?

十分に画期的だとは思うが?」



「あぁ、いや、悪い。しかし、もっとスゲェもんを作ると思ってたんでな。逆に驚いた。」



「作るつもりではあるが、まだ早いわ。流石に。

もっと準備がいる。直ぐには無理だ。」



「なんだ、そうなのか。だったら来るのは早かったか?」



「何をいうのだ。せっかく来たというのに、見ていかんつもりか?」



「いや、悪い悪い。見てく見てく。」



「うむ、案内する」




「……いつもあぁしてくれれば、私も助かるんですけどねぇ……」




そうして、親父は電熱機の暖房を見ていき、勉強部屋や文官部屋の暖かさを感じたあと


炭の消費量のことを聞き、しっかりと驚いてくれた。


問題の洗い出しを林がしていることも聞き、「うまいこと押し付けたな。」とニヤッと笑って帰った。




・・・・・・・





次の週、領主の仕事がひと段落した俺は、

その日の訓練を終えたあと、また次の作業へと進んだ。




「風呂を作るぞ!」



シーン


誰も返事を返さない


「おい、返事は!」



「え、風呂って、俺たちが作らなきゃならないんですか?大工に頼めばいいでしょう。

第一、城にもう風呂はあるじゃないですか。」



「単なる風呂じゃない。第一、あの風呂もいずれこれから作るものに変えるつもりだ。

まぁ、今林がやっている作業が終われば、承認されるだろう。」



「また、林様に頼むんですか?いい加減、怒られますよ、若様。」



「大丈夫だろ。それがアイツの仕事だし。

それに、これも使う炭の量を減らせるしな。」



「ってことは、また、あの電気を使うわけですか……」



「だな。ただ、まぁ、いい加減、資金が不足するから、風呂屋でも建てようかな、と思ってな。」



「風呂屋、って、銭取るんですか?風呂で。」



「あぁ、取るぞ?」



「場所は?」



「最初だしな。水車小屋から離れてないところで作るつもりだ。」



「ってことは、本当に俺たちだけで一から作るんですね…………はぁ……」



「そう、ぼやくな。水も近いし、ここなら最適なんだよ。」



「へぇへぇ、わかっておりますよ、若様。」



「…………勝、なんか最近のお前、草臥れたおっさんみたいだぞ。」



「誰のせいでそうなってんでしょうねぇ!」



「さぁな。知らん。わはははははは」



そういって目の前で笑ってやったら、目が死んだ。

(だがな、知ってるんだぞ?お前が自分の母親相手に「若様は、本当に凄かったんだから!」などと自慢していたのはな!)





・・・・・・・・・



風呂を作るとはいったが、この日にできたのは資材を準備することだけだった。



風呂小屋用の建材と銅線などは用意できた。

銅線は、次から次に作らせているので、多少余り気味なくらいだ。



俺としては、カーボンロッドを密閉された陶器の筒に入れたものを、風呂水の中に突っ込むことで温めるような方式を考えている。



実際の運用はまだだが、これならいけるだろう。


風呂の底面に電熱線を取り付けるのも考えたのだが、底が熱くなり過ぎる恐れもある。

それに床板を置いて熱を回避したとしても、風呂釜に木材が使えなくなるのだ。



陶器の風呂底か、或いは鉄性のモノなども考慮したのだが……


コストが掛かりすぎるのだ。


ただでさえ、発電機で金が掛かっているのに、これ以上掛けてしまったら、廃嫡まっしぐらだ。



初期投資はしてもらったのだから、最低限のお返しはしないといかん。

風呂作りは、10年後に流行病に罹って死ぬ親父への、対策の一つだ。



そんなに早々に死なれてたまるか!

ましてや、葬儀を行ったのが信勝だぞ?


普通嫡男だろ。



信長の所業で、この辺りについては信長の行いに、後世でも批難しかないのが理解できん。

嫡男が開催すべき葬儀を、弟が無断で行ったんだぞ?


そりゃキレるわ。


そして恐らく、抹香を親父に投げつけたのは、親父が溜め込んでいた負債の整理だろう。完全に。

というか、親父の死を隠していたという可能性も大きい。



隠してたのにも関わらず、弟が家の方針を無視して勝手に葬儀を執り行う。



・・・・・完全に謀反ですね、はい。



ここまでされたら斬るしかないわ、既に。

ここまでされてるのに一度許した時点で優しいわ。


度量を示したとか色々言われてるけど、絶対嘘。

この当時の論法だと、斬り殺した方が正しいし。


源頼朝の事例があるから。



まぁしかし、切り殺すことができないほど、

家が割れていた可能性もあるから、如何とも言えないというのがまた………



それは兎も角。

親父殿には早々に死んでもらうわけにはいかないのだ。


死ぬにしても、こっちが家を継いでいる状態で死んでもらわないといかん。



だからこその風呂だ。



今からここで作っても、親父の病には効果はないだろう。

しかし、ここで実績を積んで、親父のところにも設置できれば話は違う。



それに俺、領民にも入らせるようにすれば、流行病への対策の一つにもなるだろう。

だがまぁ、それをするにも銭と鉄が必要だから、色々と手を打たねばならんのですけどね。。





「やることが多すぎる。清洲を抑えて、長島への壁も作らねばならん…。

各務原の鉄も欲しい。くそっ時間も金も人も土地も、何もかもが無さすぎるわ!」



「おっおぉ、びっくりした……。若、いきなりなんですか……、無茶苦茶驚きましたよ。」



「あ〜、すまん。色々考えてたらどうしてもな…

しかし、今すぐにでも長島焼きたいな…」



「ちょ、ちょっと、なに言い出すんですか…!」

勝が俺の口を塞ぎにかかる。



「もl、がjhkひおのじぇあs…、えぇい!やめろ!わかっておるわ!ちょっと言ってみただけだろうが……。」



「洒落になりませんからやめてください。

長島が気に食わないのは私も同じですけど、そんな大っぴらに言ったらダメですって……」



「わかってる……。しかしなぁ…、尾張一国さえ満足に統治できてないんだぞ…?

津島と熱田から上がってくる銭で、多少豊かとは言え、だ。


そんなもの、戦で一度負ければおじゃんではないか。」



「負ければ、って若。誰も負けるつもりなんてありませんよ?」



「そりゃそうだ。俺もそんなつもりはない。

しかしな、俺がどこぞの城を攻めている時に、清洲の連中がここを狙ったらどうなる?

この水車小屋は壊され、また一から全てを作り直さなきゃならん。


そんなことになったら、俺は斯波だろうが長島だろうがキルぞ?」



「キ、いや、何かおかしかったような……って、斯波も長島も、そんなに簡単にきっちゃダメですよ…一応。」



「大丈夫だ。長島は兎も角、清洲の連中はそろそろ死ぬんじゃないかな?」



「え?そうなんですか?」



「あぁ、親父に鉛食器の効果効能について教えたしな。

早速、作らせて、今年の初めあたりに送ってたぞ?」



「え“」



「そういえば、坂井大膳辺りが、最近、気が狂ったような振る舞いをしているとか聞いたな?


病気かねぇ……、怖い怖い。私たちも気を付けないと、いかんなぁ」



「それを素面で言える若様が1番怖いですよ。」




「ははははは。私がせっかく、鉛毒の話を広めてやっているのに聞いておらん方が悪い。


まぁ、どうやら、一部の女性たちの間でしか広まってないようだし、仕方ないといえば仕方ないがな。」



「こんなのを相手にしなきゃいけない清洲の連中が本当に気の毒です。ふふふふ」


そうこう言いつつも、嬉しそうに話す勝三郎だった。

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