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聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服前:吉法師

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第14話:歴史改変(1542年冬)

歴史が変わった。

今年の春、史実通りに土岐頼芸は美濃を追放された。



しかし、その後、彼は尾張に来ることはなく、そのまま近江へと向かった。







◇美濃Side


「ふむ…。彼奴ならあの馬鹿を引き取ると思ったんじゃがの……」



「彼奴…ですか?」



「おぉ、尾張の虎とか呼ばれとる彼奴よ。」



「しかし、尾張の彼と土岐殿では繋がりがないのでは?彼方には斯波様もおりますし。」



「じゃからよ。つまりの、彼奴には力はあるが権威がない。権威を求めて土岐を買うだろうとおもっとったんだが……予想が外れたの」



「まぁ、それはそれで良いことではありませんか。戦にもなりませんし」



「いや…、(ワシとしては戦の方が良かったんじゃがな……)」



「?」



「まぁよいわ。とりあえずは敵がおらんのじゃからな」



「左様ですね。平和は良いことです。」





~Side End~





(ふんっ、蝮のいいようにしてたまるか)



蝮にとっては、織田からの侵略は体のいい支持率材料だろうよ。


攻めてくる時も場所も分かりきっているんだから、後はそこに仕掛けを置いておけばよいのだ。



史実の親父もこんな簡単な罠に掛かってからに。



アレは天性の罠師なんだから、アレの挑発に乗っちゃダメなんだよ。


それで、「他国から侵略さえたれた時、勝てるのは自分だけだ」って訴えて盤石にされるんだから攻める意味なんてない。



むしろ逆効果だ。



朝倉や六角と一緒に攻めるのもダメ。


勝つ負ける以前に、織田弾正忠家じゃ立場が低すぎるんだよな……。



今の立場じゃ、六角家や朝倉家と対等に話ができないんだ。


勝ったとしても分配交渉から外される可能性が高い。


土岐頼芸も、同じ守護から支持してもらえるほうが利も理もあるしな。


誤字じゃないぞ。理屈でも利益でも、土岐頼芸からすれば、そっちの方がいいんだよ。


親父は所詮、守護代の分家に過ぎないんだからな。アイツらの理屈じゃ。




勿論、戦としては意見も聞いてくれるだろう。

六角も朝倉も。


どちらも有能で優秀だ。


しかし、だからこそこっちの弱みもこっちの欲も見抜いてくる。



権威が欲しいってのも直ぐに察するだろうし、戦力として有能だってのも理解するだろう。


だが、それだけだ。



だからこそ、自分たちのステージに呼ぶことはないわけだ。



朝倉も、数十年前に成り上がっただけとはいえ、それでも守護だ。


自分たちがやっとの思いで手に入れた権威を使い倒すだろうし、その方が多くの利益を享受できる。


そして、気を使わないといけない隣国ではなく、尾張は朝倉から遠い。


しかも、かつての主君を仰いでいる家だ。


牽制もするだろうし、むしり獲れるならいくらでもむしろうとするだろう。


「犬は畜生ともいえ、……勝つことが元にて候」


これが今も現役で働いているおじいちゃんの言葉である。



警戒し過ぎてもし過ぎじゃないだろう。



このことは、親父殿とも話して、色々と意見交換した。


んで、最後には、「求める権威は一本に絞ろう」ということになったわけだ。



俺としては、朝廷の権威もいらんのだがな。


古代史を研究していた俺としては、朝廷の歴史が簒奪の歴史だと知っている。


無論、現代まで続いた歴史の長さを否定はしないが……。



成立時期にやっていたのは、支那の王朝と変わらない、前政権の完全否定だからな。


つまり、神の否定、建造物の否定、知識や文化の否定だ。



全国に"八百万"の神々などというが、

その内の人型の神が、大凡、大陸の影響を受けて作られた神だろう。


動物神は、旧来からの自然信仰が形になったもので、こちらが朝廷以前の信仰である可能性が高い。


まぁ、例外も多少あるから、厳密にはいえないんだけどな。



あと、"八百万の"っていうのは、"たくさんの"っていう意味だと思え。


実数じゃない。




まぁ、色々と話がずれたが、そういうわけで余り朝廷のことは好いてない。


大体、長く続く血統っていうのも、怪しいことこの上ないしな。検証の機会すらないから、どうにもできないが。




まぁ、それはもういい。



朝廷の権威を利用して織田弾正忠家の権威を高めるというのが、今の俺たちの方針だ。



しかし、朝廷が衰微し過ぎていて、イマイチ権勢に欠けるのが問題なんだよな……。


うまくするには、他の官位を持っている者と交流を持つのがいいんだが……


近くの官位持ちで有名どころといえば、北畠なんだよな。



朝廷と織田弾正忠家を繋ぐキーとしては、かなり悪い手札だ。


何せ、南朝側だからな。



公家大名であり、有名どころだとはいえ、

朝廷と織田家を結ぶ架け橋になってもらうには、ちょっと役違いだ。



公家大名そのものがほぼいないからな。

後は一条と姉小路か……



しかし、姉小路は知名度が低過ぎてダメ。

しかも、この後三木に乗っ取られるし。


土佐一条家は遠すぎる。

今の織田家が利用するようなもんじゃないな。



後は………………ないな!




やっぱり、官位をもらうだけで打ち止めか……。


多少なりともあげていくには、千秋家をもっと中心に取り込んでいく方がいいのかもしれんが……


むぅ……





あと、そういえば、

千秋家に求めていた物が全部集まったんだったな。



・・・・・・・・



「千秋家から来た物がこれか。」



「えぇ、しかし、若様。こんな物集めて何をなさるんで?」



「ふふふ、ま、色々だよ。しかし、銅線の漆もしっかり塗ってくれているならぁ……感心感心。」



「塗ってくれてるな、って、若様……。幾度となくダメ出しして、やり直させてたでしょうに……。」



「ん?そうだったかな?ハハハハハ」



「もう……、千秋家の人からは散々文句言われたの私なんですからね?」



「あぁ、すまんすまん。

しかし、これも大事なことだったのでな。」



「そうなんですか?」



「あぁ、漆がしっかりと塗られていないと確実に失敗だったろうしな。かなり重要なことだったんだよ。」



「へぇ……」




(これを使って、人工磁石、そして発電機を作るのだからな。ふふふふふ)



(戦国時代で発電機。

何の物資もないところからここまで集めるのは大変だったが、まぁ、織田弾正忠家の力を持ってすれば造作もないことよ!ははははははは)



と、完全に、有頂天な俺。

だが、ここからが本番である。



「よしっ!では、作業に入る。人を集めろ。」



「「はっ!」」



・・・・・・・・・




そうして、人手を集め、器用な物繊細な作業が得意なものに手伝わせる。



◇戦国時代でもできる発電機製作♩◇


⭐︎ボルタ電池作り編



・容器を用意し、その中に穀物酢を入れていく。

次に100匁に2、3匁程度の塩を加える。


・容器の中身を混ぜて、置く。


・次にA4サイズの鉄板を用意。そこの片側に銅線を繋ぐ鉄板の片面には布を貼り付け、その反対側には銅板を貼る。


・銅板にも同じように銅線を繋ぐ。


・それを10個分作る。




これで、鉄銅ボルタ電池の完成だ!




「よしっ!これで第一段階が完了だ。ふぅ……失敗もないな。」



「できましたけど……、これで何をするので?」



「雷を作る。」



「い、雷?!こんなのでですか?」



「まぁ、そんなに驚くな。これでできるのは雷の小さいものだ。恐れるほどじゃない。」



「そ、そうなんですか?」



「あぁ、だからもっと大きく強くしなきゃならん。そのための玉鋼だ。」



「……あ、あぁ、そういや玉鋼は使ってませんでしたね。」



「ないな。だから次の作業にかかる。

その前にこれに名を付ける。"織田電池"だ。」



「織田の名を使うのですか……」



「使ったところでどうということはあるまいに。

とりあえず、次だ。」




⭐︎磁石作り編



・棒状の玉鋼に銅線を巻き付けていく。おおよそ500回ほど。多いほどいいが、ここで使うのは10cmほどの玉鋼のため、最初はこれだけで。



・次に、コイルとなった玉鋼の銅線の端をボルタ電池、もとい織田電池と繋げる。

この時の、織田電池は全て直列に繋ぐことがポイントだ。


つまり①+と②-。②+と③-。というふうに次々に繋いでいく。


・最後に、鉄板と銅板を繋げた物(間には絶縁用の布がある)を、お酢と塩の混合液の中に漬けるわけだ。



・これで完了、次の磁化に移る。以降は繰り返し。




「ちゃんと手袋はしているな?では、挟みを使って全員同時に入れろ」



「……っ」



全員が緊張しながら入れる。


「よしっ出せ!」


入れてから1秒ほど。

そんな短時間だけ入れてから直ぐに鉄銅のユニットを出す。



磁化そのものは、一瞬で済む。

だから、雷での磁石ができることがあるのだ。



某漫画では、雷による磁石造りがあった。


まぁ、実際にこれでできるのは、弱い自然磁石ができるだけで、発電などにはとても使えない物なんだがな。



幸いにも某漫画とは違い、ここは文明があるし、

俺は権力も金も持っている織田家嫡男様である。



磁石用の高炭素鋼を集めるのなんて造作もなかった。



そして、次々と磁化していき、6本の人工磁石が完成する。




「第二段階終了。よしっ、お疲れ様。休んでいいぞ。」



「って、言われましてもね。始めてからそれほど経っちゃいませんよ?」



そう。準備は大変だったが、人手を使ったので、それほどの時間経過はない。



「とりあえず、お前たちが何を作ったのかを見てもらおうか。」


そういうって俺は、出来上がった磁石を地面に近づけていく。



すると、この辺りにも多少だが砂鉄があるらしく、それなりの量の砂鉄が玉鋼の周りに付着していた。



「この砂が何かわかるか?」



「え……?砂は砂じゃぁ……?え、ぇぇと、わかりません」



「これは、な?砂鉄だ。」



「砂鉄……って、あの鉄作りに使うやつですかい?」



「あぁ、そうだ。

そして磁石というのは、海の上で方角を見るのにも使われるな。」



「へぇ……。」



「あまり興味なさそうだな?」


「す、すみません。しかし、ここまでのものを集めて作るのが、その、方角を見る道具、ってのがどうにも……」



「いや、いいぞ?俺もこれを方角を見るだけの道具として使う気はないしな。」



「え?そうなんで?」

従者の1人がそう聞いてくる。



「あぁ、もちろんだ。第一、方角を見る程度なら買ってくればいいだけだしな。

わざわざこれだけの大金を掛けてこんなに買う必要もないだろうよ。」



「え、これってそんなに高かったんですかい?」



「あぁ、高かったぞ。全部で締めて15貫文だ。


……とは言っても、ほとんどが手間賃だがな。

これを売っても半値にもならんが」




「はぁぁー、そりゃすごい。

とすると、元を取らなきゃなりませんね。」



「ふ……ふふはははは、わかっとるではないか!

そうだ、元を取らねばならん。


しかしな、これを使えば元を取るのではなく、もっともっと馬鹿が呆けるしか無い程に稼げるのさ。」



「そりゃすごいですね!流石は吉法師様です!」



「そして、いずれお前たちにも使えるようになってもらうぞ?まぁ、今は、俺の指示に従っておけば良いがな。


なに、美味いものも綺麗な服も、強力な武具も、色々な物が作れるようになるからな、これで。」



「……まるで夢物語ですな……」



「その夢物語を現実にするのが我々だ。

よしっ!次の作業を始めるぞ。」



「「「はいっ!」」」



こうして、何のためにやっているのか、何をやっているのかを正確に何度も話す。


これが部下を教育していく上で重要なことだと俺は思う。

だから、毎回合間に休憩を入れて雑談として話していくことを挟んでいくことで、ミスをなくしていけるわけだ。



何をやっているのか、何のためにやっているのかがわかれば、新しい意見が出てくることもある。



そうして俺は、

毎回、一々部下の教育の時間を入れることで、俺自身のための部下を育成していった。



そして、その日


俺は、作った磁石で更なる強力な磁石を作っていき…………



その日の最後には、強力な磁石を使った発電機が完成した。





「本当に、長かったな……」

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