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聖人:織田信長録  作者: 斎藤 恋
元服前:吉法師

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第13話:孤児育成

熱田神宮へと行ったあの日から、そろそろ一年の月日が経とうとしている。

俺は、今年で9歳になった。



あの日に頼んだものはまだ全ては届いていない。

塩やお酢のようなものは除き、他の腐らないようなものはいくらか届いている。



しかし、玉鋼は半数が届いたが、銅線がまだ届いていない。

どうやら、銅を集めるのに苦労している様子だった。


鉄板や銅板も、まだ7割ほどしかないので、この計画は今のところ中断である。



今俺が集中して取り組んでいるのは、臣下教育である。


従者のトップには、森三左衛門(森可成)を置いている。

次点で、勝三郎(池田恒興)だ。



三左衛門には、戦場での俺の教師役になってもらうつもりだが、

従者たちは、勝三郎を長としてまとめていこうと思う。


いわば、従者頭だな。


史実の赤母衣衆、黄母衣衆のように色で分けていくのがわかりやすいだろう。

が、この時代に、そんなに染料あったっけ?



わからないので、それはおいおいだな。



とりあえず、今連れている俺の従者の数は42人だ。

数に特に意味はない。



単に、俺が見つけた孤児の中から、やる気のありそうな奴だけを選んでいるだけだ。

最初、爺たちにはかなり渋られたが、親父の許可を得たのもあって、色々と飲み込んでもらっている。



安心してくれ、史実よりはまだマシ!のはずだからさ……



最初は、読み書き計算どころじゃなかった……

家に入る時は靴(草履)を脱いで入る、ご飯は手で食べない、などなど


当たり前のことから教えなくちゃならなくて、勝三郎や三左衛門共々、無茶苦茶苦労させられた。



しかし、ここに来るまで今日でもう10ヶ月。



最近では、読み書きもできて、吾妻鏡を写本できる者も出てきている。

すごい、本当にすごいよ!お前たち・・・



正直、初めて聞いた時は感動の嵐だった。

勝三郎たちと、裏で肩を抱き合って泣いてしまったものだ。うん。



10ヶ月で、読み書きはそこまでできるようになったわけだ。



まぁ、読み書き以外にも、運動は俺とともに散々やらせているし、

運動後には、大豆を中心に、食事を摂らせるようにしている。



卵や肉はまだどうにもできていない。



千秋家の当主、季光とは、最初の熱田神宮での会合以来、ちょくちょく話に行っている。

あそこの門前町を見て回るのも結構面白いしな。


あの辺りの商人のうち、何人かとは余計な敬語抜きで話せる程度には仲良くなった。



季光とは、熱田神宮の教えというものを書にまとめてもらっている。

そして、俺が色々と意見を出して、これからの日本に必要な要項を付け足していくように頼んでいるのだが、

どうにも、彼自身にも受け入れ難い部分があるようで、説得はうまくない。



理屈では理解しているだけ、進歩はしているんだがな。

まぁ、来年ごろには、卵くらいなら食えるようになっているだろう。



今のところは鶏を増やすことと、

俺が伝えた通りに、ひよこが生まれない卵があることを確かめる為に人手を使っているそうだ。



あとは、ひよこの雄雌を見分けるようにとも伝えているみたいだ。

無理だと思うけどな。



だが、肉についてはなかなか話が進まなくて困っている。

肉の必要性を詳しく訴えたいのだが、前世の知識の部分を強く話す必要があるからどうにも難しい。


仏教的な部分で話そうにも、熱田神宮は神道で関係ないのだ。



肉食禁止の文化は、神仏習合で、仏教的な要素が混ざったということも理由の一つではある。


しかし、元々ある『穢れを避ける』という神道の教えが、

肉食禁止と絡んで、感情的に納得し難いことになっているようなのだ。

面倒臭い



兎にも角にも、卵は解禁になったので、

来年からは卵を毎日でも食べられるようにと計画しているわけだ。



(楽しみだ、あぁ本当に楽しみだなぁ・・・)



最初は、茶碗蒸しからだろうか?

それとも、単なる卵焼きからだろうか?


色々考えているが、なかなか決まらない。



これ以外にも、蜂蜜作りや椎茸の養殖にも手を出している。

硝石作りもやってはいきたいが、こんな開けた那古野城でできることじゃない。



本当に、やりたいことはたくさんあるんだが、人手不足で停滞していることばかりである。






あぁ、そうそう。



以前、生駒家に頼んでいたものが届いたのだ。3ヶ月前に。

苛性ソーダで作られた物のようにしっかりと固まった物でもないが、

どうやら、性能はなかなかのものらしい。



この石鹸で服を洗ってみたら、「ムクロジよりもさらに強力だった」と感動していた。

まぁ、単なるきのみと比べりゃぁな。当然である。むしろそんなものと比べられても困る。



白粉については、イマイチ。


奥さんの評価は悪いらしい。

生駒の当主が直々に来て報告していったが、

代替品はないのか?と散々詰められているらしい。



正直、黄烏瓜の粉だと、ベビーパウダーくらいにしかならないしな……しゃーない



が、代替品も案があるとは伝えておいた。

しかし、そっちは千秋家と進めている事業で、物が全く集まらないので停滞しているとも。



「うちも協力させてくれ!」とか言ってきたが、協力したところで、どうなるんだ?わからん。

わからんが、一応、許可は出した。


ただし、得られた利益は、千秋の次の次。つまりは3番手に置いた。

後から入ってきて、利を貪るなんてさせない。



まぁ、その程度は弁えてる奴だし、

そもそも、目的は利益じゃなく、奥方の機嫌だろう。



と、色々考えているうちに、今日の日課が終わった。





「若様。今日の鍛錬、全員、終了しました。」



「うむ、ご苦労。では、これから学びの間に向かうぞ?」



「「「はっ!」」」



とたとたとたとた



・・・・・・・・・




~学びの間~


この学びの間というのは、城内の広間に机を置き、俺が学びの間と名付けた場所だ。

本棚も大きいものを設置して、様々な本や、彼らが描いた写本なども入れられている。



「よしっ、今日は和算だ。みんなー竹簡出してー」



勉強は、紙の量産体制が整ってないので、今は竹簡で行ってる

将来的には、これも藁半紙かパルプ製紙辺りにしたいんだがなぁ


流石に、パルプ製紙は無理かな?



藁半紙程度なら、できるとも思ったんだが、以前、集落を見て回った際、

藁が防寒に使われていると聞いたのを思い出して、止めることにした。



この時代の彼らは、

現代でいうなら、新聞紙を巻いて公園で寝るホームレスのような生活なのだ。



藁が泣けるれば死ぬしかない。

それくらい、藁の保温効果が高いのだが、

藁半紙の量産は、正規の暖房設備ができるまでのお預けとなっている。



「では、これが“一”」


「これが“二”だぞー?わかるかー?」



「一、二。これは簡単ですね。わかります。」



「ん、では次だー、“三“、“四”、“五”…………」



そうやって続いていき、次は、計算に入った。



・・・・・


「そうだ。二足す七は?」



「え~と、九です」



・・・・・・




そうして、今日の勉学を終えた。


和算は、本当に基礎の基礎を教えている段階だ。

だから、プラスマイナスの記号や、アラビア数字までを教えるのはやめておいたのだ。



この時代には、現代にない物が多すぎる。

和算と言ったが、和算と数学や算数は全部異なる存在だ。



例えば、数学では円をπで計算する。

しかし、和算だと多角形を計算することで、円の近似値を出せるようにしているらしい。



江戸時代には、300角形だか600角形だかを計算して円を求めようとする動きがあったらしい。

本当にいつの時代もどこの場所でも、人類というのは諦めを知らない存在なんだなぁ、とそう思おう。



まぁ、それはおいておいて。



和算になくて数学にあるものは他にもある。


例えば0である。

まず、0という概念そのものがないのだ。



空というのを形にしたやつがゼロであるとか、生意気言い過ぎな奴もいたけど。

とりあえず。



将来的には、アラビア数字からプラス、マイナスを教え、

計算ができるようになったら、複式簿記を教えて得ていく。




(だが、それ以前に、まずは漢数字からだな)



教師としての俺の戦いは続く。

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