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[第7記]マリンヴェルタで本心を

「…もしかしてそなた」


「なに?集中しなよ」

シズが鎌を鉄パイプに押しつけながら言う。


「そなたまさか、五感すべてが無事じゃな?」

エウロパ鉄パイプを鎌に押しつけながら問う。


「あはは、バレた?」


ガキィン!

両者共が後ろへ飛ぶ。


「そうだよ。キミの声は聞こえ…姿を知覚し…攻撃の感覚もある。」


「…わらわの力でそんなことはありえない…そなたは味覚か嗅覚を最も重要視している…と?」


「ボクは第六感を持ってるからね。これでもキミの魂を操れないから苦労してるほうなんだよ?」


「そんなことが…」


「俺のことも気にしたほうが身のためだぞ」


ドガァッ


「くっ…そなたも第六感持ちか…!?」


「俺は多分…触覚だな。自分の手を触ってもまったく感覚がない。」


ベキャァ


「胴体、がら空きだよ?」

シズがエウロパに一撃を入れる。


「貴様らのような愚民に負けるわけには…!」


「五感のうち大事な1つを奪う能力で何も奪えないなんて…皮肉だね。」

シズが鎌の柄でエウロパの腹を突く。


「ぐはぁっ…」


シャン…キィン!


エウロパがナイフでオペに斬りかかる。しかしシズが鎌でナイフを弾き飛ばす。


ドッ…


シズが鎌で攻撃するも、エウロパは蹴りでシズを飛ばした。しかしオペも腕を掴みエウロパを投げる。


「これもあるんじゃな…!」

エウロパが銃を取り出しサディに発砲する。


ヴォン…キュイン…カカカッ…


シズがサディの前に滑り込み、すかさず鎌を振り回す。足元に真っ二つになった数発の弾丸が落ちた。


ボガッ…ガチャン…


オペが銃を持っている手を掴み壁に叩きつける。


「くっ…」

エウロパが落ちた銃を拾い、オペに向ける。


ヴォン…キィィン…


シズの鎌についた光刄が銃身を焼き切った。


「させないよ。」


「クソッ、こうなったら…」

エウロパがサディにナイフを向け走る。


「やらせない。」

オペがエウロパに飛び蹴りをした。


ドガッ


気絶して倒れたエウロパを見て、オペとシズが深く息をした。


「やったな…」

オペがシズに手のひらをむける。


「……………握手はしないよ」


「ん…そうか…」


パンッ…


「こうゆう時はハイタッチ…だろ?」

シズは手を叩き、照れくさそうに笑った。


「ははっ…そうだな!」


「…ごめんなアタシ何もできなくて…」


「…いや、視覚を奪われて戦闘とか無理でしょ。サディ様は悪くないよ。」


「じゃあ最重要情報でも見るとするか」


「そうだね」


「…あの、彼女はどうすれば…?」

案内人が尋ねる。


「厳重に拘束しておいてくれ。尋問する。」

シズが答える。


「そうだな…サディに頼めば一瞬だ」


「レガリオが回収しに来てたってことはめっちゃ重要なんだろうな。開けてみようぜ」

サディがワクワクした様子で話す。


「…あけるぞ」


ペリ…


「えっと…『鐚蟒瀲(あもうれん)』って書いてあるな。」


シズが覗き込む。

「これは…何かの設計図っぽいね。なんかたくさん武器らしいものが書いてあるけど。」


「なぁ、これはいつ頃の設計図なんだ?」


案内人が口を開く。

「それは…ちょうど2日前のものですね」


「なるほど…」



―全能統治軍 メカニックルーム

「どうだ。進捗は…」


「ロダー様。もちろん順調でございます。」


「これが完成したら戦力はどのくらいだね」


「だいたいレガリオ6人分くらいですかね」


「ふふ…充分だよ。」


「…では作業へ戻ります」


「私も研究があるのでね。頑張ってくれよ」


「承知致しました」



―ルネル 滑走路

「うし、次の情報が入った。次行くで」


「次はどこに行くんだ?」


「マリンヴェルタや。海沿いの素敵な町やね」


「あ…その町ボク知ってる。」


「シズちん行ったことあるん?」


「あるよ。知り合いがいるんだ。」


「おぉ。会ってみたいな」


「あいつは人が好きだから喜んで会うよ」


「なぁ…」

ニックが話す。


「政府の情報だけどさ、メールとかで送ったりとか出来ないのか?」


「…………無理だな。政府の規模で調べられたら一瞬で特定される。」


「そうなのか…じゃあ設計図を本部に届けるのも一苦労だな」


「あー…そうだな」


「いや…!」

シズが何かを閃いたように顔をあげる。


「さっき言ったボクの知り合い…本部に設計図を届けるのにピッタリだ…!」


「シズの知り合いどんな奴なんだろうな」

サディが興味津々に聞く。


「多分シズみたいなやつなんだろうな」

オペが笑いながら言う。


「……どうだろうね」


「みんな今からどこに行くか分かっとる!?」

運転しながらザヤが話す。なぜかテンションが高い。


「……マリンヴェルタだろ?」

ニックが言う。


「半分正解!マリンヴェルタは何がある! 」


「…海?」

オペが答える。


「せーかい!サディはん、そこの袋開けぇ」


ガサガサ…

「どれどれ…うぉぉ!?」


「なんだ!?」


「うちがルネルでこっそり買おててん。」


「み…水着だぁー!」


「泳がな損やで!」



フィーン…

飛行機が着陸する。周りには装飾が施された家が並んでいて、坂を下った先には一面の海が広がっていた。


「うわぁ〜綺麗だな!ニックもこいよ!」

サディが海に飛びこみ笑う。


「凄いぞ…海が透き通ってる!サンゴがあるぞ!」


「ちょっと…オレ泳げねぇから…うえっしょっぱ!」


「ひひひっ…アタシの攻撃を食らったな?」


「あんたらはしゃいどるなぁ!うちも混ぜぇ!」


「シズ!何やってんだ?お前も入れよ!」


「いや。ボクはいいや。それよりそこ危ないよ」


「え?」


ザバァー!

ニックの目の前に大きな影が現れる。


「うわぁぁぁぁぁ!?」

ニックが叫ぶ。


「ぴぎゃぁぁぁぁ!?」

その生物も叫び声をあげる。


「……あぅぅ…」

その生物はイルカのような見た目だった。黄銅色のチョッキと緑色のネクタイを身に着け、黄銅色の郵便帽を被っていた。チョッキと帽子にはしずくと波、郵便マークが組み合わせられた様な飾りが付いている。瞳は黄緑に輝いている。


「なんや?可愛えやんおっきいけど」

ザヤがそのイルカを撫でる


「ちょ…やめて下さいお姉さん…」


「……よっ。」

シズがイルカに近づく。


「わ!シズりん?久しぶりだね!」


「え?まさかこいつがシズの知り合い?」


「こいつとか言わないでよ…リオネどうする?自分で自己紹介する?」


「あ…うん!えっと…僕は…僕…リオ…ネ」


「うち、ザヤっちゅうねん!よろしく頼むわ」


「僕は…えっと…」


「ゆっくりでいいよ」


「シズりんごめん…あの…この人たちに服着てもらっていい?」

リオネがヒレで両目を隠す。


「すまん。着てくるけん待っとって」



「…ふぅ…改めて、僕はリオネビット・リフェルド。リオネでいいよ。DD(ドルフィンデリバリー)っていう郵便配達サービスをしてるんだ」


「郵便…どうやって?」


「え?泳いで」


「濡れないのか?」


「あー…えっとね、この肩掛けバッグあるでしょ?このバッグ防水なんだよね。」


「シズちんとはどうやって知り合ったん?」


「シズりんは僕がここで泣いてるところを相談に乗ってくれたんだー。」


「ほぉーっ」


「リオネは…昔…言っていい?」

シズがリオネに小声で確認する。リオネは頷いた。


「リオネは昔、イルカとつがいになったんだけど騙されちゃって一文無しになっちゃったんだよ。ボクその時たまたまこの町に来てたから泣き声を聞きつけて…で、呪いの活用法として郵便屋を提案したわけ」


「あっ…保呪者なん?」


「あ…うん。バブルリングを出してワープゲートを作れるっていう呪いで。1000km先まで作れるよ。」


「…え、つよない?」


「ね。強いよね。」

シズが共感する。


「ありがとう…ザヤさんはどんな呪いなの?」


「うち?うちは…あぁー…」


「…あっ、持ってない…?」


「いや…持ってるねんけど…あんまり手の内晒したくないけん。」


「そっか…ごめんね…」


「いや、ええんよ。」


「…でシズりんは僕に会いたかっただけ?僕も会いたかったよ!」


「それもあるんだけど…運んで欲しいものが」

シズがオペの方をみる。


「あぁ…この封筒をベレケンヤードのSIM支部に届けてくれ。場所はここ…」

オペが封筒と地図を取り出しリオネに寄る。


「うんうん…分かった!」


「遠い場所だが大丈夫か?少し内陸部だし…」


「僕のゲート内は距離が1000分の1まで圧縮されるからすぐ着くよ!モノ限定の小型ゲートも作れるから正確な位置さえ知れればへっちゃらさ!」


「頼もしいな…!じゃあお願いするよ」


「うん!はい、どーぞ!」

リオネが鞄のフタを開け、オペが封筒を入れる。


「じゃあ行くぞ。」

海岸を去るオペにみんながついていく。


「…またねー!」

リオネがヒレをめいいっぱい振る。


「…………」

タタッ…


ザヤが小走りでリオネの方へ近寄る。


「……ザヤさん?うわっ!」

リオネの頬に、ザヤは両手を優しく添えた


「うちね、リオネちゃんのこと好いとーよ。素直で純粋で可愛くてしゃーない。だから特別に教えてあげるわ…うちの呪いは―」


「……どう?」


「…呪いだね…ほんとに…。ザヤさん…あなたはそんな能力で戦ってるの…?」


「……そうやね。じゃ。うちいくわ」

ザヤは静かに両手を離し、走り始める。


「…まって!」


「…………」

ザヤが立ち止まる。しかし振り返らない…


「僕…もっとザヤさんの話聞きたい!またこの町に来て!絶対に来てよ!僕…待ってるから!」


「…うん」


「じゃあねっ!」

リオネは水中にリングを作り、逃げるようにその中へ入っていった。



「…すまんな、遅れたわ!」


「ザヤ…どうしたんだ?顔が赤いぞ」


「え?そんな事あらへんで…」


パンッパンッ

ザヤは手で自分の両頬を叩き自身に喝をいれた。


「よしっ!行こか!」


「マリンヴェルタの支部はどこにあるんだ?」


「あぁーこっちや」


ザヤが案内した先にあったのは、廃れた釣り用具店だった。中に入りルアーの1つを下に引っ張ると、仕掛けが動き隠し扉が現れる。


ブワァッ…


「ゲホッ…なんだ急に…埃がすごいな…」


「ゲホッゲホッ…」

ザヤが手を仰いで煙をどける。


「…ふぅ、よし。この中に機密情報があるんだな。」

オペが扉に手をかける。


ガチャッ…


「なっ…アジトじゃないのか!?」


「アジトのはずやで?何があるん?」


「台座の上に封筒だけがある…」


「そんな単純な作りなわけが…」

シズが驚く。


「封筒…開けて見ようぜ」

サディが言う。


「そうだな……………」

封筒を開け中身を見た瞬間、オペは絶句した。


「…嘘だろ」


「なんだ!?何が書いてあった!?」


「…みてくれ」

オペが中身を見せる。


「…白紙だね。」

シズが言う。


「こんなことが…」


バタッ…


「…ザヤ?」

気を失ったようにザヤが倒れる。


「ザヤ!…オペ。聞いてくれ。」

シズが駆け寄る。何かに気づくとシズは動揺した。


「脈が…完全に止まってる…」


「なっ…」


「もう手遅れだよ。ボクに出来る事はない…」


「終わりだ…」

シズが鎌を取り出し刃を光らせる。


「シズ?何してるんだ?」


「ごめんね…オペ…ボクもうダメだ…」

シズが鎌の刃を自らの首筋に当てる。


「シズ…よせ…」


ヴォウン…


ゴトッ…


…シズの頭が体と別れを告げる。


「シズーー!!」


「もう…アタシも逃げるしか…」


「サディ!やめろ!」

オペが自身の首にナイフを刺すサディの腕を掴む。


「死なせろよ…アタシのこと好きなんだろ?じゃあ意見を尊重してくれよ…頼む…」


「あぁ…好きだ…!だからやめろ!俺と生きろ…!」


「オペ…アタシはあんたの事嫌いだったよ…」


「えっ…?」

オペの手が少し緩む。ナイフは更にサディの首に深く刺さり、サディの口から血がポタポタと垂れる。


「あぁスゲー嫌いさ…初めて助けてくれた時も下心しか感じなかったし…アタシのこと守ってもくれねぇ…信頼してるからか知らねえけどいっつもアタシ任せ…」


ドサッ…

オペがゆっくりとナイフから手を離す。サディは目の輝きを失い、冷たい床に横たわった。


オペは床にへたり込む。


「すまない…」


「ごめん…ごめん…!帰ってきてくれサディ!!」




サディの亡骸を抱きかかえると、オペは号泣した。

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