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[第1記]日没のなかで

ー2500年

ベッドの上に仰向けになった灰色の毛並みの獣人が目を覚まし、オレンジ色の目が輝く。ゆっくりと身体を起こし、茶色い和服のようなものの上から緑のジャケットを着ると、眠たげに目を擦りながら扉を開けた。


「おはようございます。オペロジャック様」

執事のような装いの老獣人が挨拶をする。


「ふぁ〜…おはよう。オペで良いって言ってるだろう。呼び捨てにしてくれよ」

眠そうに文句を言いながら、緑の帽子を被った。


「いえいえ…こんなジジイめを政府軍から救ってくれた救世主です。呼び捨てなど恐れ多い…」


「ううむ…あまり堅苦しいのも好きじゃないんだ…あっ、ではオペ様でどうだ?」


「アッハッハ、かしこまりました。オペ様。」


「よし」

オペは優しく微笑み、食堂へ向かった。


「あ!おはようオペ!」

「おはよう!」

「あらオペさん…おはよう」

食堂に入った途端、皆がオペを笑顔で迎える。


「あぁ、おはよう。」


「…パールはどうした?」


「パールさんは…逃げました。ここでの生活に我慢出来なかったみたいで…今は安否もわからず…」


「そうか…これで今週5人目だな」

続いてオペは中央広間に向かう。そこでは屈強な獣人達が訓練をしていたが、オペが広間に入った瞬間、後ろで腕を組み、姿勢よく整列した。


「「おはようございます!オペ司令!」」


「うむ。おはよう。戦闘班のみんな。」


オペが照れたように頭をかく。すると整列している1人の班員が怪我をしている事に気付く。


「…それ。どうした。」


「え…あぁ、政府軍にやられて…」


「…そうか。奴ら、どんどん強くなっているな」


「ですね。最近銃が支給され始めたらしくて」


「銃…?」

オペの口に少し笑みが溢れる。


「よし、今日の偵察は俺だけで行く。」


「ええっ!?」

班員たちが驚いた顔でオペを見る。


「…偵察担当に今日は休みと伝えておけ。俺はもう外に出る。」


オペが玄関の扉を開け街に出ると、そこにはレンガ造りの建物の夜景が広がっていた。歩き続けていると、

しばらくして軍服を着た集団に出会う。


「お前…獣人だな?」

軍服の集団の1人がオペに話しかける。


「ああ。いかにも。だからなんだ」


全能統治軍(ぜんのうとうじぐん)の者だ。悪いが獣人は保呪者の可能性が高いからな。少し検査に付き合ってもらっていいか?」


「いや、検査の必要はない。」


「これは義務なんだ。すまないな」


「必要ない。俺は保呪者(ほじゅしゃ)だからな。」

そう言った瞬間、政府軍が一斉に腰から

銃を取り出し銃口をオペに向けた。


「あんた…馬鹿か?わざわざ自分から保呪者であることを明かすとはな…しかも最近群れての保呪者が多いのに、あんたは1人だ。」


「お前らこそ、俺を誰だと思ってる?」


「あぁ?知るかよ」


「待て…あいつまさか厳重指名手配犯のオペロジャックじゃないか?」

政府軍の1人がハッとした顔で仲間を見る


「特に呪いが厄介と言われてる奴らか…でもその分懸賞金も弾むんだろ?ラッキーじゃねぇか」


「ふっ、おめでたい頭だな」

オペが煽る。


「お前自分の状況分かってるのかよ。3つの銃口向けられてんだぞ」


「…だからなんだ?早く撃てよ。ビビッてるのか?」

…再びオペが煽る。


「撃ってやるよ。」


カチッ…


「あれ…撃てな…」


カチッカチッ


「どうした?撃たないのか?」

オペが政府軍に近づく。


「来るな…!」


ヒュッ…!ガンッ!


回し蹴りをする。鈍い音がなり1人目が倒れる。


「クソッ…オラァ!」

政府軍が銃を捨て殴りかかる。


「うぉ」

腕をつかみ投げ飛ばす。地面に激突し2人目も倒れる。


「なっ…」

3人目も鮮やかに気絶させ、オペはゆっくり深呼吸した。


「ふぅ…銃が普及したのは幸運だった…この武器は俺の呪いと相性がいい…」


彼はオペロジャック。「不具合」の呪いを持つ保呪者である。彼を対象とする複雑な構造をもつ道具は一時的な不具合を起こしてしまう。


バチッ…ジジッ…


「監視カメラか…俺は機能停止しているところしか見たことがないがな…」



ガチャン…

「…戻った」


「オペ司令!ご無事でしたか!」


「あぁ…政府の下っ端なんかに負ける俺じゃないさ。まだこのSIM(シム)のこともバレていないようだった。」


「それはよかったです。SeviorIrenicMutinyは保呪者の希望ですから。やっと最近支部も増えてきたんだ…こんなところで政府ごときにやられる訳にはいきません。」


「俺が作ったよくわからん組織に入ってくれてありがとうな。」


「いえ。オレも割と初期にサディさんに助けられたときから、SIMには忠誠を誓っていますから。」


「サディか。あいつもSIMに入ってから多くの保呪者を救っているからな…俺も見習わなければ…」


「何言ってんですか。充分救われてますよ。今日は休んでください。」


「あぁ…すまないな。」


オペは部屋に戻り、眠りについた。



―全能統治軍 総合管理室

「ロダー様、失礼致します。」


「保呪者の捕獲数が年々落ちています。なにか保呪者を匿う巨大組織があるのかもしれません。」


「…人間」


「あっ…人間ですね、今回の調査でも満足度は100%でございます。」


「…保呪者は1人残らず消さなければいけない。今日も世界は回るんだ。ついてくるのは人間だけでいい…」


「ロダー様の言う通りです。」


「兵力を増やしておけ。近々こちらから仕掛ける。」


「はい。大規模な捜索でしょうか」


「ふふ…それよりもっとワクワクするものだよ」


「…なんでしょう?」


「全面戦争だ。保呪者の平穏な日常を破壊する。」


「それは…ド派手ですね」



「世界とたった1割の保呪者…最後に常識になるのはどっちなのか…これは見ものだね。」

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