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ノンプラン

「それじゃあ、立とうか」

アリシアの背中を叩く。

「さっき会ったばかりなのに馴れ馴れしいったらありゃしないな」と返す彼女の口角は少し上がっていた。

「こんだけ喋れば、そうなるだろ」

俺たちはよっこら立ち上がって息をつく。


ひとつ段落を越えたことで緊張の弁が段々と緩まっていくが、「ただ、いくつか覚悟して欲しいことがある。」と言って、バルブを左に回させた。


「ん?」

「前もって言っておくが、俺は泣いてる両親から『頼むから死んでくれ』って言われた人間だ。そいつに手を貸せっつってるんだってことはまず知っといてほしい。」

「何したらそうなるのよ…。まぁ、そりゃ刺されるくらいだしね」と俺のシャツの赤く濡れた切れ目を指さすアリシア。

そして眉と唇を笑い伸ばして「別にあなたが元の所でどうだったとか、そんなことどうでもいいわ」と言い切った。

「今のところはね。」

「そうかい。」


「それと、こっちはもっと大事なことだ」とこれから言うことに俺は指さした。

「何よ?」

「俺がこれから何をするにしても、それは君らの積み重ねてきた絆に新参者が茶々を入れるのと同じなわけで、何かしらの影響が出ることも覚悟して…」

「してるわよ」

「いや、してな…」

「してるって」

「分かってな…」

「してる」


……なら別にいい。

これから知っていけばいいことだ。


ようやく、俺たちの腹づもりが決まり、解決に向けた話が始まった。…かに見えた。

「で、具体的に俺は何をすればいいんだ?」

「それは…」って腕を組んでアリシアは黙りこむ。

そりゃ勢いで呼ぶくらいだからな、ノープランだろう。


自分の中で軽くおさらいする。

悪魔の封印には特別な準備が必要で、それが敵に妨害されてうまいこと行かなかった。

なので勇者のお二人さんは本当の意味で死ぬ気の封印作戦を決行したと。

「その準備不足ってのは具体的に何なんだ?」

「聖魔力が足りてないってことよ。だから封印魔法に必要な魔法圧がかけられない。相手に浸透しないわけなの」


俺はなんとなく、気になった。

「魔法圧ってのは?」

アリシアの顔には『え、説明しなきゃならない?今話す必要ないと思うんだけど…?』って書かれている。

仕方なく、両手で幅をマイムしながら説明を始める。

「魔法って、言わばポンプなのよ。簡単に言うと、人にはそれぞれ蓄えられる“魔力量”があって、それを魔法として出力するには、体内魔力の放出孔を広くしたり狭くしたり調節して適切な“魔法圧”をかけなきゃいけないの」

「へぇー。んで聖魔力は?」

「……聖魔力ってのは通称で、細かく言うと魔力とはちょっと違うの。封印魔法を施すためには、通常の魔力を外部で変換する必要がある。要は魔法のための魔法ってところかしら」

「へぇー。」

「……分かりました?」

ちっとも…「分かりましたー!」


「でそれが足りなかった。厳密に言うと、足りてはいたんだけど、悪魔のせいで強くなった他のモラド将校や魔物たちの制圧にそれを割いてしまったのよ。途中で精製できれば良かったけど、もう一度準備できるタイミングがやって来なかった」

なるほど、ボスラッシュって感じね。


「じゃあ俺がその悪魔を倒すってのはどうだ?この魔力…?なら出来なくはないだろって」

「……はぁ、倒すとか殺すとか、そういう次元に居ないのよ」

「どゆこと?」

「悪魔というのもまた、魔法による魔法みたいな存在なのよ。実体はあっても、すべての攻撃が有効打にならない。その封印魔法以外ではどうすることもできないの」


「なるほど…。じゃあ魔力を渡すってのはどうなんだ?俺の無限のパワーをあげればどうにかなったりとかは?」

「…はぁ。だから魔力って渡せるもんじゃないし、聖魔力はそもそも違うって言ってるでしょ?」

「だからって言われましても、来たばっかでこっちは何も知らないんすわ。そんな中で一つ提案として言ってるだけだろ?」

「……それはそうね。ごめん」


アリシアは謝れる子でした。

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