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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第五章 秘密のさくら吹雪編
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第70話 争奪戦開始

 勉強会が終わり、みんなが帰った後。玄江(しずえ)先輩と俺が居るリビングには、ピリついた空気が流れている。


 「で?先輩。どうしてくれるんですか?」

 「えぇっと……怒って…るよね?」

 「そうですね。怒ってます」

 「…………はい。ごめんなさい」


 玄江先輩のせいで始まってしまったチケット争奪戦。中間試験の成績の結果を競って、遊園地のペアチケットを奪い合う。

 もちろん、二奈や四羽がぶっちぎりすぎるので、ルールを設けた。

 5教科の合計点数が、前回のテストよりどれだけ伸びたか。自身の成長具合で競い合う事になった。


 「いや〜!皆んなのやる気に満ちた顔見たぁ!?皆んなが集中してくれるのはいい事でしょ?」

 「調子のらないでください。わざわざ餌を撒くような事しなくてもやってましたよ」

 「う〜…それもそうかも?」

 「それより、先輩。良かったんですか?せっかくのペアチケットをあげるようなことしちゃって」


 まぁ、誘われても行かなかったけど。


 「いいの、いいの。どーせ誘っても来てくれないでしょ?」

 「はい。バレてたんですね」

 「え?本当に来てくれないの?否定しないの?」

 「じゃあ、尚更何で来たんですか?」


 誘いに来た事が目的じゃないなら、本当の目的は何だったんだろう。

 先輩はニヤニヤしながら俺をただ眺めるだけで、何も言ってこない。ますます先輩の考えがわからない。

 

 「な、なんですか?先輩。なんか今日変ですよ?」

 「いや?本当は一人暮らしで寂しくないかな〜?って寄ってみたんだけど。君には皆んながいるもんね。賑やかそうでよかったよ」


 …玄江先輩はいつもそうだ。常に誰かを気にかけてくれる。変わらない先輩を見て、どこか安心出来た。

 ふと窓を見ると外は暗くなっていて、窓に俺と先輩が映っていた。


 「先輩、何か食べていきます?」

 「え!?真くんの手料理!?食べる!」

 

 俺はキッチンへと向かう。今日はずっと騒がしかった。こうして先輩を食事に誘ったのも、少し名残惜しかったのかもしれない。


 ○ ○ ○


 4月21日。

 放課後の図書室。皆んなで集まり、テスト前日に勉強会をしている。皆んな例のペアチケット争奪戦のせいで、やけにやる気になっている。特に三和と五花は机に(かじ)り付くように勉強している。人は自分にもチャンスがあるとわかると、こうも真剣になれるのか。


 「2人とも…凄いですね。あんなに勉強したことありましたっけ?」

 

 隣に座って勉強している二奈が、2人に気を遣って小さく声をかけてくる。

 2人とは対照的に二奈は教科書に蛍光ペンで引かれた重要単語を見返すだけで、追い込む様子が見られない。


 「無いかもな。逆に二奈は余裕そうだな?」

 「はい。というか、いつもより自信があるんです!今回は一位をとれるかも!」

 「いつもだろ。………二奈もペアチケット…欲しいのか?」

 「はい!」

 

 全く躊躇うことのない返事に若干驚き、自分で聞いといて恥ずかしくなってくる。二奈は…最近ますます距離が近くなってきている。

 二奈は椅子を更に寄せる。


 「去年は皆んなで行きましたけど、今年は2人でいきましょうね?真?」

 「ピピッー!そこ!必死に勉強してる私たちの前でイチャイチャしない!」

 「…真も鼻の下伸ばさないで!」

 「の、伸ばしてない!」

 「図書室では静かに!チケットの前に勉強!」


 扉の方から、副会長の仕事を終えて来た四羽の怒号が聞こえてきた。

 騒がしかった図書室がさらに騒がしくなる。とは言っても、普段から図書室を使う生徒は居ないのでなんの問題もない。


 「遊園地の前に自分の成績!」

 「ちぇっ。四羽は良いよね〜?元々頭が良いもんね〜」

 「そりゃ、普段からきちんと勉強してますから。まぁ、お土産くらいは買って来てあげますよ?」

 「…なんかちゃっかり遊園地に行こうとしてない?」


 皆んなはこれまで以上に真剣な様子で取り組んでいた。

 しかし、このペアチケット争奪戦は誰も予想できない結果になった。


 ○ ○ ○

 

 4月28日。

 中間テストの結果発表の日。放課後になり、俺達は図書室に集まる。

 それぞれの順位は前回とあまり変わらない。しかし、今回は総合点数がどれだけ伸びたかで勝負している。皆んなの総合点数を前回の結果と照らし合わせる。


 「また、真が一位ですか…。やっぱり変えられませんね…」

 「…やっぱり真は人間じゃないんじゃ」

 「私はもうマコトっちは人間じゃないと思ってるよ」

 

 俺が点数を照らし合わせている間に好き放題言われている。気にするほどでもないが、少し気になる。


 「よしっ。結果出たぞ」

 「どうでした!?私ですか?」

 「二奈じゃないですよね?私ですよね?」

 「…私も自身ある」

 「マコトっち!さぁ〜結果は!?」


 皆んなの視線が集まる中、俺は一度息を吐いて結果を告げる。


 「………今回の勝負は……一華のダントツ一位!」

 『……………えぇ〜!?!?』


 皆んなの驚きの声とは対照的に一華は静かに、そして自慢らしく笑っている。

 +95点。前回の結果を大きく塗り直した一華にペアチケットが渡された。


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