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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第五章 秘密のさくら吹雪編
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第69話 チケットをください!

 4月13日。

 春のほのぼのした日差しが部屋を温める昼下がり。日曜の午後。ゆったりとした時間が流れ………無い!


 「マ、マコトっち…ちょっと休憩しない?」

 「もうちょっとだ。小テスト25点と言う点数を忘れたのか?」

 「うぅ…。あ、あの時は!なんと言いますか………」

 「言い訳せず勉強しろよ。受験生だぞ?」

 「ん〜!わかってるもーん!」


 五花は首を左右に振りながらまるで赤子の様に駄々をこねる。

 中間テストが間近に迫っている俺達は、久しぶりに皆んなで俺の家で勉強会をしていた。特に二奈を除いた三年生組は進路にも影響があるので、自然と今回の中間テストには熱が入る。


 「五花の言う通りっすよ。ちょっと休憩するっす!」

 「そう言ってお姉ちゃん、昨日勉強に戻らないでしょ!私が見張ってるんだから!」

 「私はなんで妹に見張られてるんすか?」

 「…一華。…もっと真面目にやらなきゃダメだよ?」

 「え?三和も?あの三和も?」


 確かに三和がこんなに黙々と勉強するのは珍しい。

 いや、最近の三和は変わって来ている。前の勉強嫌いな三和じゃない。成績も少しずつではあるが、上がって来ているし…


 「三和は、顧問の先生に赤点をとったら合宿に連れて行かないって言われてるんですよね?この前の小テストも赤点ギリギリだとか」


 四羽の言葉に三和は思わずペンを止めた。皆んなの視線が三和に集中する。


 「三和…?」

 「…真、助けて」


 テストはもうダメかもしれない………。


 ○ ○ ○


 「やっと終わった〜!」

 「…つ、疲れた………」


 勉強も終わり、五花と三和はソファに横たわる。勉強が苦手な2人にしては、よく集中していた方だろう。

 日が落ち、窓の外が暗くなり始めている。キッチンから二奈がココアを淹れて持って来てくれた。


 「はい、皆んなお疲れ様〜」

 「わぁ〜!二奈ありがとう!」

 「ありがとうございます」


 テーブルに人数分のココアの入ったマグカップが置かれて行く。ちなみにマグカップや食器は先輩が残してくれたものだ。かわいい見た目の食器を買いすぎて、処分に困っていたので俺が引き取った。そのためか、男子の食器とは思えない物しかない。


 「はい、真の。熱いですからね?」

 「ありがとう」

 『!?』


 その場の空気が変わり、皆んなの視線が俺と二奈に集中する。何気ない会話…の筈が、皆んなにはすごい違和感があったらしい。


 「二、二奈?今なんて………?」

 「…真って言った…?」

 「マコトっちと…どう言う関係…!?」

 「え!?は、早くありませんか!?」


 どんどんと話がややこしくなって行く。


 「べ、別になんて事な…!?」

 「えへへ〜。もう私は「先輩」なんて呼びかたしないもんね〜」

 

 俺の右腕に二奈が絡みつく。肩に頭を置き、ぎゅっと俺の腕を抱きしめる。柔らかい感触と甘い香りが俺を揺さぶった。


 「ニ、二奈!?そ、そんな近づいちゃダメっす!」

 「…ま、真もニヤニヤしないッ!」

 「…!?し、してないって!」


 ますます話がややこしくなる。

 三和が俺の左腕にしがみつき、四羽が肩を揺さぶり、一華と五花も俺に質問を投げつける。

 収集がつかなくなったところで、玄関のドアが開けられる。


 「こんばんわ〜!真く〜ん!久しぶりに遊びに………来たけど。これ、どう言う状況?」


 ○ ○ ○


 「…で、真くんを取り合っていたと………。君たち仲が良すぎないかい?」

 「…………はい」


 遊びに来た玄江(しずえ)先輩に助けられたが、先輩には見られたくないところを見られてしまった……。


 「実はね、私が来たのには理由があるんだよ」

 「理由?武田(たけだ)先輩はどんな理由で来たんですか?」


 四羽の問いに、ニヤニヤしながら玄江先輩はバックから何かを取り出す。2枚のチケットを人差し指と親指の腹で挟み、ひらひらと見せつけてくる。


 「遊園地のペアチケットなんだけどね〜?私と真くんで行こうとしたけど…そんなにイチャイチャしてるなら、誰かに譲っちゃおうかなー?」

 『!?』


 その瞬間、5人は僕の側を離れ、玄江先輩の元へと駆け寄る。

 

 「武田先輩!そのチケットは生徒会の後輩の私に!」

 「先輩はじめましてっす!私に譲って欲しいです!」

 「は、はじめましてですけど!私に!」

 「…私にも!」

 「こ、後輩ですけど!私も欲しいです!」

 「マコトっちと仲良いのは私です!私に〜!」

 「じゃあね〜…。あっ!皆んなそろそろ中間テストでしょ!?じゃあ一番成績が良かった子にあげようかな!」


 その発言に俺は自分の耳を疑う。

 俺抜きで俺にとって重要な事が決まりそうにある。


 去年皆んなで行った遊園地は、俺の争奪戦へと変わっていた。


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