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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第一章 好感度UP作戦♡編
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第5話 いざ、ご褒美の遊園地へ!

 放課後を知らせるチャイムが学校中に響き渡る。四羽と図書室で少しだけ復習をした後、僕は四羽をある場所へと連れて行く。学校を出て、電車に乗るまで2人の間に会話は無かった。でも、先程のような冷えた沈黙ではない。お互いの事を理解しているからこその沈黙で、それが今の四羽には居心地良く感じられた。


 「あ、あの。これはどこに向かっているのですか?」

 「まぁ大人しくついてきなって。怪しい所には連れて行かないから。」


 電車の中にはサラリーマンや、女子高生が乗っていたが皆んなスマホを見るために俯いている。隣に居る彼もスマホを見ている。多分、出会った時にやっていたゲームなのだろう。そんな彼の横顔を何故か見続けてしまう。

 窓から夕陽が差し込み、彼の顔を照らす。ドクンッドクンッと電車が揺れると共に自分の心臓の音が聞こえる。勉強意外何もしてこなかった。ゲームや恋愛なんかに心が揺れたことはない。でも、ぶら下がっている吊り革の様に、その心が揺らいでいる。 彼は目の前のスマホに夢中で気が付いていない。いや、気が付かれなくて良かったとも思っている。涙で目が腫れていて、自分でも分かるくらいに顔が真っ赤に火照っている。こんな顔を見せられるはずがないのだから。




 電車を降りて向かった先は、先週お見合いをする為に来た立派な御屋敷だった。大きな門の表札には「門川」と書かれている。


 「あ、あの?なんで真の家に…」

 「まぁまぁ。ほら、上がって?」


 彼に言われるがまま玄関に向かう。長い廊下を彼と共に進んでいく。改めて思うが本当に広くて立派な御屋敷だ。それだけじゃない。床、窓の縁、天井に至るまで掃除が行き届いている。使用人さんが何人いるのだろう。

 考えごとをしていると、気づいたら一つの部屋の前に来ていた。彼が襖を開けた瞬間に「パンパパンッ!」っとクラッカーのカラフルな紙吹雪と火薬の匂いが出迎えてくれた。


 「四羽!皆んな!テストお疲れ様ーー!!」

 「お疲れ様です!」

 「…お疲れ様。四羽も真も凄いよ。」

 「さぁさぁ!早く座ってお祝いするっす!」

 

 机の上にはご馳走が並んでいた。唐揚げにお寿司。チェーン店のハンバーガーや有名パティシエのケーキなどがズラッと並んでいる。


 「皆んな四羽を元気付けたいと思って協力してくれたんだ。」

 「……くすっ。そうだったんですね。」

 「ほら、先輩も四羽もグラス持って!」

 「それじゃあ、テストお疲れ様!カンパーーーイ!!!!!」

 『『『『『乾杯〜!!!!!』』』』』


 五花の掛け声で皆んなのグラスがぶつかり合う。ハンドベルの様な心地良い音を奏でて、慰労会を始める。それぞれ好きなもの食べながら、出会った時の第一印象の事。テスト勉強での苦労話。途中で五花が食べ物を喉を詰まらせて、一華がすぐに飲み物を飲ませる。助かったと笑う五花を一華が危ないと叱る。そんな姿を見て皆んなが笑う。

 真は四羽の顔を見る。図書室の時の涙を浮かべた顔はそこには無かった。それだけで真はこの会を開いて良かったと思った。

 四羽の所に行く時、自分の家で慰労会を開こうと提案した時は、上手くいくかわからなかった。もしかしたら四羽を元気づけられなくて連れてこられない可能性もあった。それでも、皆んなは動いてくれた。自分を信用してくれた。出会ってからまだ時間は浅いが、互いを信じ合える程の友情が芽生えていた。


 「そう言えば!15日は皆んな空いてる?前に言ってた遊園地に行こうよ!」

 「あぁ〜そんな事、言ってたっすね。良いっすよ。」

 「…うん。皆んなで行こう。真も楽しみでしょ?」

 「先輩は乗り物で何が好きですか?」

 「あ、いや。僕、今まで遊園地に行った事ない……」

 『『『『『………え?????』』』』』


 さっきまであんなに盛り上がっていたのに。急に深刻な顔つきで真を質問詰めにする。

 

 「は、本当に!?一回も!?マコトっち。それは人生10割損してるよ!」

 「それ全部じゃねぇか!!」

 「先輩があんなに楽しい所に行ったことがないなんて…。」

 「………じゃあ私達が1番楽しい遊園地の回り方を教えてあげる。…真、良いよね?」

 「じゃあ、15日の朝8時に現地集合で良いっすか?」

 「わかりました。丁度テスト勉強でどこにも行ってませんでしたしね。」

 「はいっ!じゃあマコトっち!15日遅れないでね!」


  幼少期からそう言った場所に興味が無かった。と言うより少し人が多い所が苦手だ。そんな僕を置いて行くように話がどんどん進んでいく。


 「ちょっと待て!本当に行くのか?行ったこともないし、行きたくも」

 「お兄ちゃん……?」

 「ヒェッ!!(かなえ)!?帰ってきたのか!?」

 「え?お兄ちゃんって言ったっすか?」

 「って事は…ええ!?真の妹さん!?」

 「先輩に妹!?今までそんな事聞いたことないです!」

 「そ、そりゃ言ったことないからな…。」


 妹の門川叶(かなえ)。2個下の15歳。中学3年生で、外では優しい子なのだが、僕にだけは手厳しい。部活や習い事で忙しいから今日はもっと帰りが遅くなると思っていたのに。


 「それで?お兄ちゃん。遊園地に行かないつもり?」

 「い、いや、人混みとか苦手だし…。行った事ないし。やっぱり僕抜きで」

 「はぁ?お兄ちゃんもう一回言わせるつもり?遊園地に?行かないつもり?」

 「………行かせていただきます。」


 妹に正座させられている真に5人は驚きを隠せない。あまりにも普段と違いすぎる。そして、どこか真に似ている妹のイメージも違う。あんなに萎縮した真を見るのは初めてだった。


 「……はぁ。皆さん初めまして!門川叶です!こんなダメダメな兄がいつもご迷惑をお掛けしてすみません。」


 叶は、正座している兄を見下した目線から顔を上げて、5人に満遍の笑みを見せてお辞儀した。さっきまでの兄に対しての反応がまるで嘘かの様に。


 「い、いや、迷惑だなんて。私達も先輩に助けられてますから。」

 「…うん。真には助けて貰ってばかり。…感謝してる。」

 「それなら安心です!ほら、お兄ちゃん!遊びにいく計画早く立てて!」

 「は、はい!」

 「この光景には慣れませんけどね。」

 「そ、そうっすね。」


 こうして遊園地【強制的】に行くことになった。そして、真はまだ知らない。この日が、今後の5人の許嫁候補との関係に大きく影響する日になるとは。


 ○ ○ ○


 7月15日。月曜日。雲一つない快晴で遊園地を回るのにはピッタリな天気だった。遊園地の最寄駅は祝日ということもあり、親子連れや若者で溢れていた。7時55分。一番最初に来たのは四羽だった。


 「皆さんまだ着いてなさそうですね。」


 四羽は自分の服装を見直す。変ではないだろうか。普段から5人で遊ぶことはあるのに、今日は何故か心が落ち着かない。

 もっと可愛い服を着てくれば良かっただろうか。いや、浮かれていると思われたら恥ずかしい。いや!私はなんでこんな事を考えているのでしょう!

 1人で考え込んでいると後ろから不意に抱きつかれて変な声が出てしまう。

 

 「四羽!おはよーー!」

 「ひぇぇえ!!??」

 「…五花。四羽が驚いて変な声出してる。…やめてあげて。」

 「ごめんごめん。可愛い女の子が立ってたからさー。つい!」


 ポリポリと頭を掻きながら五花が謝る。四羽が怒っていると、そこに叫び声を聞きつけた佐倉姉妹がやって来る。


 「おはようございます。あとは先輩だけですか?」

 「まさか寝坊してないっすよね?一応連絡するっすか?」

 「…ううん。大丈夫。もう連絡してるから。もうちょっとで来るって。」

 「そんな事よりも、やっぱり一華はオシャレさんですね。とっても大人っぽくて素敵です。」


 四羽は一華を見つめる。グレーの細身のパンツに白いシャツ。中には黒いキャミソールを組み合わせて、シルバーのネックレスとイヤリングをしている。まるでモデルの様だった。


 「そ、そうっすか?そう言ってもらえて嬉しいっす。でも、そう言う四羽もかわいいと思うっすよ?それに、三和なんて体型からもう別次元っす。」

 「確かに。……お姉ちゃん、私は今からでも成長出来るかな?」


 バレーをしていた事で身につけた、大きな胸とヒップと高身長で引き締まった見事な体。白のノースリーブトップスに水色のロングスカート。見せつけるかのような綺麗な括れを、4人は凝視する。


 「………ん。そんなに見ないで。///」

 「そう言えば、マコトっちはどんな服装でくるんだろう。」

 「あー。あんまり外に出なさそうだからお洒落ではないかもっすね。」

 「うーん。確かに、お洒落な先輩が思いつかない。」

 「皆んな酷すぎません?まぁ確かに洋服に興味は無さそうですね。」

 「…あ、真来た………よ。」

 「ん?三和?どうしたっす………か。」


 三和の指さす方を見ると、皆の想像を裏切る真の姿があった。黒のカジュアルスーツのセットアップ。中には白いTシャツを着ていて、ネックレスやリングから大人っぽさが感じられ、普段かけていないメガネが普段のイメージとのギャップを生み出している。


 「ば、バカな!マコトっちが…私達の考える数倍お洒落だと!?」

 「僕をなんだと思っているんだ。」

 「先輩の事だからお洋服には興味ないのかと思ってました。」

 「偏見がすごいな。まぁこの服は叶が一緒に考えてくれたんだけどな。」

 「へぇー?意外な一面もあるもんっすね。図書館の時もそれくらいお洒落してくれれば良かったのに。」

 「…うん。確かに、あの時は普通って感じだった。……あ、あの!真。か、かっこいいよ…。」

 「お、おう。じゃあ行こうか。」


 照れ隠しのために遊園地の入り口へと歩き始める。

 そして、この5人に振り回される波乱の1日が始まろうとしていた。

 

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