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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第四章 雪のプレゼント編
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第43話 思いもボールも直球で!①

 11月5日。修学旅行を無事に終え、連休後の通学路は足取りがいつもの5倍重く感じた。

 マンションから学校までの道のりはまだ慣れないが、6人で登校するのはもう慣れ始めていた。


 「はぁ〜今日くらいサボってもいいんじゃない?」

 「駄目です。学生は勉強しなければいけないんですよ?」

 「…私はバレーしに来たんだもん」

 「うわっ、スポーツ推薦だからってなんでも良いと思ってるっすね!?」

 「そう言えば、来週は球技祭でしたよね?」


 二奈の言葉に三和と五花の顔がぱぁと明るくなる。

 百花学園球技祭。今年は女子がバレーボール。男子はサッカーに決まったらしい。

 学校に登校した後、朝のホームルームで体育委員から説明がされた。女子と男子は放課後までにグループ決めをしなければならない。勿論出れる人数は決まっている為、クラスの男子全員が出る必要はない。去年の俺は面倒くさくて参加しなかった。今年もそれで良いだろう。



 昼休み。いつもの様に食堂で列に並びながら食券機と睨めっこをしている。相変わらず全てのメニューが美味しそうに見え、いつも迷ってしまう。

 すると、後ろから声を掛けられる。


 「今日の日替わり定食は唐揚げらしいですよ?ここの唐揚げ美味しいって生徒の間で有名なんですって!」

 「そうか…じゃあ二奈の言う通りにしようかな」

 「え?!」


 後ろを振り向くとやはり二奈だった。俺の予想外の答えに、口をぽかんと開けて目を丸くさせていた。


 「前は違うのにしてたのに!先輩が私のおすすめに?」

 「あの時は状況があれだったから…。なんだか唐揚げの気分だったんだよ。一緒に頼んでやるよ」


 食券機の「日替わり定食」と書かれたボタンを2回押して、2枚の食券を食堂のおばちゃんに渡す。

 出てきた2つのお盆をそれぞれ持って、いつもの席に向かう。最近は食堂にも顔を出す様になったので、前の様に皆んなが慌てる様子は無かった。


 「あ、真!こっちっすよー」

 「わざわざ呼ばなくても、もうわかるよ」

 「それもそうっすね!あれ?一緒のメニューなんすね?」

 「まぁな。なんかそう言う気分だったんだよ」


 席に座って、手を合わせる。1週間ぶりの学食は、なぜか懐かしく思えた。

 ご飯を食べながら5人と談笑する。変わらない昼食を摂っていると、同じクラスの男子が俺の所へやってきた。


 「食事中悪いな、門川。今、サッカーのメンバーを集めてるんだが、参加してくれないか?門川なら運動神経良いし、勝つためには必要なんだよ!頼む!」


 ぱんっと手を合わせて説得してきたのは、クラスメイトの古谷(ふるたに)だった。

 内容は朝のホームルームで言っていた球技祭の話だった。放課後までにメンバーを決めなきゃいけないからか、焦っている様に見えた。


 「悪い。俺はパスで。こう言うのは面倒くさくてやりたくないんだ」

 「いや!そこをなんとか!」

 「…ごめん。やっぱり気持ちは変わらないよ」


 その言葉を聞いた古谷は肩をがくっと落として去って行った。後ろ姿を見ると、少し可哀想に見えたが、この学校行事は自由参加だ。やりたくもない事を無理にやる必要は無い。自分にそう言い聞かして食事に戻ろうとすると、5人から残念そうな視線が向けられていた。


 「先輩、球技祭出ないんですか?先輩のかっこいい姿見たかったのに」

 「そうですよ。私は運動は苦手ですが…真は運動でからじゃ無いですか!」

 「でも、面倒だし…」

 「そう言わないでさ!マコトっちもやろうよ!私達は出るよ?」

 「…うん。…バレーは私の得意分野だし。…私も真のかっこいい姿、見たいな」

 「えぇ…」


 5人から熱い視線が向けられ続ける。気持ちが揺れ動きながら唐揚げに齧り付いた。



 放課後、昇降口に一華と四羽と五花が待っていた。三和と二奈は部活だ。

 

 「あ、やっと来たっす」

 「お、おう。待たせたな」

 「あれ?なんか顔が暗いよ?マコトっち。大丈夫?」

 「え?」


 五花に指摘されて自分の表情にやっと気づいた。昼休みの後もメンバーが集まらず、困っていた古谷の顔を見たら、何故かモヤモヤとした感情が湧き、喉に何か引っかかったような感覚がしていた。


 「ねぇ、真。正直になっても良いんじゃない?真は球技祭は面倒でも、人助けは面倒じゃないでしょ?」

 「!…そうだな。ちょ、ちょっと行ってくるよ!」


 それだけ言い残して、来た道を駆け足で戻る。


 「やっぱり真はこうなるんすね。自分よりも誰かの為に動けるっす」

 「そうだね。だから、私達も助けられてるんだけどね」


 急いで戻ると、クラスには10人の男子が集まっていた。


 「あれ?門川?帰ったんじゃ…」

 「やっぱり出るよ。まだ空いてるか?」

 「おお!マジか!?これで優勝出来るぞー!」


 クラスの男子が大声で歓喜する。

 どうして急に気持ちが変わったのかはわからない。でも、前の自分ならこうはなっていなかった。それだけは感じた。


 ○ ○ ○


 11月11日。球技祭当日。

 学校中が活気に包まれ、全員の目に闘争心が宿っている。

 午前は体育館で女子のバレーの試合。午後からはグラウンドで男子のサッカーだ。体育館に移動している途中で5人に会った。


 「あ、先輩!私たちの事応援しててくださいね?」

 「わかった。頑張れよ」

 「…真。…私の全力…ちゃんと見てて」


 三和の闘争心剥き出しの姿を見て、少し圧倒される。まるで夏の最後の試合の様な気迫だ。


 「お、おう。わかったよ」


 体育館の観客席には全学年の男子が集まり、それぞれのクラスや、女子を応援している。

 「ピーーッ!」と試合開始の笛が体育館に響く。


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