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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第三章 激戦!運命の紅葉狩り編
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第39話 紅葉狩り〜モヤモヤデート〜

 電車を降りて無言で歩く。昨日はあんなに話しやすいと感じたのに、今は会話しづらい。ずっと様子がおかしいし、いつもの五花はこんな事をしない。それにずっと皆んなのことが気になる。俺と逸れた後、三和は大丈夫だろうか。青木も南条も心配している筈だ。皆んなが心配している姿が頭に思い浮かぶ。


 「真、行きたいお店とかある?」


 俯いて歩いていると、五花に呼びかけられて顔を上げる。

 産寧坂(三年坂)。京都らしい古風な建物が立ち並び、CMなどでも使われている日本を象徴する場所だ。そこには多くの店が並んでおり、京都ならではのお土産が買える場所だ。食べ物にアクセサリー。油取り紙や、石鹸など様々な物が売っている。


 「ほら、産寧坂のお店散策したかったんでしょ?」

 「お、おう…」


 五花に腕を引っ張られて店を見て回る。

 様々なお土産が売っていた。まず入ったのはバームクーヘン屋さんだった。有名なお店で、抹茶味のバームクーヘンはとても人気だ。店員さんに試食を勧められ、食べてみると本当に美味しかった。そこで皆んなの分を買って行った。

 その次には石鹸屋さんに来た。なんでも店オリジナルの石鹸を売っており、店の外にも良い香りが漂っている。2人で石鹸の匂いを嗅いで7つ買って行った。叶も気にいるだろう。


 「さ、次はどこに行く!?」

 「…ちょっと休憩しないか?歩き疲れて来ちゃって…」

 「あ!そうだよね?ごめんごめん。じゃああそこで休憩しよっか!」


 五花が指差した場所は、自販機やベンチが置かれている小さな公園の様な場所だった。そこで自販機でジュースを買ってベンチに座る。


 「はあー。楽しかったね!この後は清水寺行こうよ!」

 「…ほらよ。オレンジジュースだろ?」


 ひょいっとペットボトルを投げて五花に渡す。


 「おっと。ありがとう」

 「はぁ〜。で?そろそろ教えてくれないか?なんでこんな事をしたのか。付き合ってあげた…って言うのはずるいかもしれないけど、そろそろ話してくれよ。信用無いか?俺」


 五花は俯いてこちらを見ない。と言うか、神社の時から目を合わせようとしない。見つめ合うのを避けている。


 「そんな事ない!…真は、私と居ても楽しくない?」

 「そんな事ない。楽しいよ」

 「じゃあ…!」

 「でも。五花。お前が1番楽しそうじゃない」

 「…っ!そ、そんな事ない、あり得ないよ!2人になれて…私は……」

 

 段々と五花の声が弱々しくなる。ペットボトルを持っている手に力が入り、くしゃと言う音を立ててラベルに皺が寄る。


 「皆んなに黙ってこんな事をしても楽しくない。違うか?今も皆んなのことが気になってるんだろ?さっきからずっと皆んなの分のお土産を買ってるし。五花は1人ぼっちが嫌いな女の子だもんな」


 少しの沈黙が続いた。夏祭りの時も五花はこんな感じだった。いつもは明るいが、1番気持ちが不安定になりやすいのかもしれない。

 ぽつ。ぽつぽつ。

 五花の太腿に水滴が落ちる。五花が流した涙だ。弱く、苦しそうな声で話し始める。


 「ごめんね…ごめんね。こんなつもりじゃなかったの。でも、真が誰かのものになるって考えると、じっとしてられなくて…。私、何やってるんだろ…」

 

 五花はゆっくりと話し始めた。深い理由はわからないが、五花は五花なりに悩んでいた。こう言った時になんで声をかけるべきか。『大丈夫だ』か?『俺のためにありがとう』か?わからない。だから、今できる事を精一杯やってみる。

 

 「………っ!?」


 五花の頭をゆっくりと撫でる。さらさらとした髪の感触が手に伝わる。何も言わずに行動で示す。これは母が昔、俺を慰める時にやってくれた事だ。余計なことは言わず、ただ頭を優しく撫でてくれる。それだけで心は満たされた。自分がされた様に、五花にも実践してみた。

 2人は何も言葉を発さない。段々と恥ずかしくなって来て撫でる手を離そうとした瞬間、五花がその手を掴む。そしてぽんっと頭の上に戻す。顔を紅く染めるだけでわからない。でも、そのまま優しく頭を撫で続ける。


 「ありがとう…真。振り回しちゃってごめんね。皆んなにも…謝らないと…怒ってるかな?」

 「まあ、怒ってるだろうな」

 「……そうだよね。私のせいで皆んなを振り回しちゃった…」


 五花の顔がもう一度曇る。目にはまだ涙が溜まっている。


 「まあ、怒られる時は俺も一緒にいてやるから。正直に謝ろうぜ?」


 そう言って小学生の様に笑う彼は、不安定な私を優しく包んでくれる。本当に、彼には敵わない。


 「ちょっと私トイレ行ってくるね?」

 「わかった。ここで待ってるよ」


 そう言って五花がその場から居なくなり、1人になる。特に何も考えずにポケットに手を突っ込んで、そこで改めて自分がスマホを落とした事を思い出す。ゴソゴソとポケットをいじっていると、後ろから声をかけられる。


 「お兄さんが落としたのはこのスマホですか?それとも少しカバーが欠けたスマホですか?」

 「え?」


 後ろを振り向くと左手に彼女のスマホ、右手に少し汚れた俺のスマホを持っている三和が居た。少し微笑みながら三和は右手を俺の方に伸ばした。


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