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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第三章 激戦!運命の紅葉狩り編
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第38話 紅葉狩り〜裏切り〜

 「………駄目です。電話も出ません」

 「…なんで…真急にどっか行っちゃうなんて。…ここで落ち合うって約束したのに」

 「何処行っちまったんだよ!あいつに限って急に居なくなるとかありえねぇのに!」


 真が消えてから既に15分が経過していた。三和と青木は、四羽の班と一華の班と合流して真を探していた。頂上に登って、そこに居たのは冷や汗をかいている南条だけで真の姿は無かった。

 電話をかけても駄目。メールも未読。今までこんなことは無かった。皆んなの顔にも焦りが見え始め、最悪の事態を覚悟する。何かの事件に巻き込まれたのかもしれない。不安は時間が経つと共に増え続ける。


 「紅葉〜!」

 「た、大変っす!」


 真が来た道を探しに行った一華と南条が慌てて帰って来た。南条は右腕を高く挙げて走ってくる。掲げられた手には真のスマホが握られていた。


 「道の途中に門川くんのスマホが…どおりでメールも電話も出ないはずです!」

 「これは……雀!直ぐに先生に連絡を!」

 「…実はその必要は無いっす。多分、真は五花と一緒に居るはずっす。さっきメールが来たっす…」


 内容は話せなかった。話せば五花が完全に悪者になり、庇えないからだ。これは私が計画した事。私のせいで、こんな事になってしまった。それなのに五花だけを悪者に出来なかった。

 四羽はやっぱり着物姿になっている。恐らくここで真と2人きりになろうとしたのだろう。それを私は邪魔しに来たのだから。…元々性格の悪さは自覚していたが、ここまでとは。自分でも驚いている。他人を蹴落として、他人を利用して1人を手に入れたいなんて。熱が冷めて、今更罪悪感が湧き上がる。


 「…なんで…五花が…」

 「…どうやら深い事情がある様ですわね。一回貴方達で話し合ってみたらどうですか?お互い隠し事なしで。青木くんと私達は先に降りて待ってますわ、何かあったら電話してください。」


 そう言って強引に人を捌けて、話しやすい環境を作ってくれた。絶大な人脈と信頼がある生徒会長の凄さを見せつけられる。

 そして残されたメンバーで、正直な話し合いが始まった。途方もなく息苦しい空気感の中、最初に話し始めたのは四羽だった。


 「ごめんなさい!実は…南条さんをスパイとして送り込んで、真と2人きりになる機会を伺ってました!伏見稲荷で偶然を装って…それで…」

 「私も、申し訳ありませんでした。私が門川くんと逸れてしまったから!」


 四羽と南条は深々と頭を下げる。その姿を見て更に罪悪感が湧く。早く私も胸の内を吐き出して楽になりたかった。


 「いいや、南条さんは悪く無いっす。私が五花と協力して四羽の邪魔をしようと計画したんすから。全部私が卑怯だからっす。本当にごめん」


 私は深く頭を下げる。我ながらに最低だ。親友の邪魔をして、親友を利用しようとしていた。自己中すぎる。頭を中々上げられない。

 10秒程、頭を下げていると鼻を啜る音が聞こえて来た。四羽が泣いている。そのくらいのことをしてしまったのだ。顔を見てもう一度謝ろうと顔を上げると、泣いていたのは三和だった。


 「…うぅ…なんで…うう…」

 「み、三和…」


 三和の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。指で涙を拭っても涙は止まらない。


 「…私は、皆んなと仲良くこの修学旅行を終えたかった。最高の思い出にしたかった。…だから、私…これを真と一緒に渡そうと思ってたの………」


 三和が鞄から何かを取り出す。手のひらには6つのお守りがあった。鹿の模様が描かれており、それぞれ色の違った同じお守り。


 「これって!私と三和と真が鹿と遊んだ後に売店で買ってた…」


 昨日、鹿と写真を撮り、その後3人で売店に寄った。そこで、こそこそと2人で何かを買っていたのを見ていた。一瞬お守りの様なものが見えたいたが、まさか私達の為のものだったなんて。

 三和は皆んなのことを考えてくれていた。なのに、私達は独り占めしようとしていた。そんな自分を嫌悪する。


 東大寺で話していたのはこの事だったんだ。三和は皆んなの為に。それに比べて私はそんな優しい親友を裏切ってしまった。五花があんな行動に出た理由も理解できる。五花の事なんて考えてなかった。最低だ。


 「……ぐすっ…もう良いよ!…っ!」

 「み、三和!?」

 「ま、待って!」


 三和はお守りを地面に落として走り去ってしまう。その背中を追いかける事が出来なかった。する資格が無いと思えてしまった。


 「……私達、何をしてるんでしょう」

 「そうっすね。これが友達を傷つけてやりたかった事なんすかね…」


 ○ ○ ○


 「なあ。何やってるんだ?」

 「清水寺に向かってるんだよ?その為に電車に乗ってるんじゃん!」

 「そうか……。そういう事を聞いてるんじゃない。なんでこんな事をしてるんだ」


 あの後、スマホも落として連絡もとれない。だから五花に連れられるがまま電車に乗りこんだ。しかし、あんな事をされて、なんの説明も無いのは流石に警戒する。中途半端な時間帯だからか、この車両には2人しかいない。


 「せめて目的くらい話してくれ。これじゃ拉致と変わらない。何か言ってくれ」

 「………確かにそうだよね。ごめん。色々突然過ぎたよね…。でも、今は私のしたい事をさせて欲しいの。一緒に清水寺に行ってほしい。お願い」


 車両には2人しかいない。目の前に居るのは五花だ。けど、この時の五花は誰か知らない人の様に見えた。


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