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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第三章 激戦!運命の紅葉狩り編
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第36話 紅葉狩り〜開戦〜

 10月30日。修学旅行2日目。

 目を開けると見慣れない天井。スマホの騒がしいアラームを消してようやく自分がホテルのベットに寝ていたことを思い出す。こうしてゆっくり寝れたのは久しぶりだ。いつもはあの5人に囲まれて寝ているが、はっきり言って地獄だ。

 女の子と寝ると聞いて、普通の高校生男子は興奮したり、羨ましがったりするだろう。

 しかし、五花は寝相が悪い。寝ていたら隣のベットからクッションが飛んでくる。どうやったらそんな風に寝れるのかわからない。四羽が上で寝てくれている事が唯一の救いだ。静かで助かっている。三和は海外の恋愛ドラマを夜な夜な見ており、足をバタバタさせている。スマホの明かりはどうにかして欲しい。二奈も、四羽と同じく静かだ。一華はASMRを聴きながら寝ているが、イヤホンから音が漏れてうるさい。

 この様に人と暮らすと言うのは実に大変なものだ。それがご令嬢なら尚更だ。


 「ふぁ〜。おはよう真」

 「おう、青木おはよう」


 清々しい朝だ。こんな朝がずっと続けば良いのに。


 「お、スクランブルエッグに目玉焼きにだし巻き卵もあるぞ!」

 「全部卵じゃねぇか」


 朝は豪華なバイキング形式の朝食だ。確かに、並んでいるご飯が全て美味しそうに見える。青木の様に何でもかんでも取りたくなる気持ちもわかる。もし、ここに五花が居たらこんな風に全部取って……。


 「あ!あっちにパンケーキもあるー!」

 「ちょっと!?五花!一気に取らなくても良いっすよ!?」


 向こうに想像通りの五花と朝から猛獣に振り回される一華が見えた。なんか予想通り過ぎて寧ろ安心する。

 席に戻り、朝食を食べていると先生からこの後の予定を聞かされる。


 「食べながらで構わないから聞いてくれ。この後、ロビーに班員が揃い次第、班行動を開始とする。18時までには帰ってくる様に。何かあれば先生に電話しろ。それじゃあ朝食が終わった班から荷物を持ってロビーに集合だ。以上!」

 先生の説明が終わると、ぞろぞろと生徒が席から立ち上がり、足早にその場を離れる。班行動は時間との勝負。皆んな1秒でも早くホテルを出たいのだ。周りに負けじと俺達もバイキングを離れる。


 「お?1番早いのは門川の班か。よし、4人全員居るな。じゃあいってらっしゃい!」


 そう。部屋に荷物を取りに行く人でエレベーターも階段も混雑する。それを見越して、俺達は事前に荷物をロビーに持って来ていた。これを考えてくれたのは南条だ。意外と楽しみにしてたんだな。無表情だけど…。


 「よし、じゃあ最初は金閣寺だな。10分後の電車だから早めに行こう」

 「よーし!楽しむぞー!」

 「…おおー!」

 「………」


 あのクール担当の三和でさえテンションが上がっているのに南条は表情変えない。ロボットなのか?これ。


 「な、なあ南条…お前もうちょっと楽しもうとしたらどうだ?」

 「え?」

 「いや、『え?』じゃなくて。楽しくないのか?真も三和も俺も皆んなで楽しもうとしてんだぜ?もうちょっとテンション上げるとかあるだろ?」

 

 青木の言葉に初めて南条が表情を変える。しかし、その顔は困惑しており、眉間に皺を寄せて更に楽しそうな顔では無くなった。


 「た、楽しむ?嬉しそうな表情とは?そもそも人にどんな顔をすれば満足してくれるの………?」

 「え?俺こんな難しい事言ったっけ?」

 「…いや、青木くんは間違ってない」

 「そうだな。そして南条も間違っては無い。何かしたい事とかあったら遠慮なく言ってくれ。皆んなで楽しもう」

 「…はい。わかりました」


 俺が『皆んなで』なんて言う日が来るとは思わなかった。今はぎこちないが、俺みたいに変われるはずだ。4人は金閣寺へと歩き始めた。


 真の班が出発した15分後、二つの班がホテルを出発しようとしていた。


 「あ〜あ。五花がご飯にがっつくから真の事見失ったっす」

 「……ご、ごめん!だって、全部美味しそうだったんだも〜ん!」

 「佐倉さん。最初は二条城だよね?」

 「そうっすね、まずはしっかり観光するっす!」

 「うん!そうだね!……」


 その3分後。

 

 「すっかり遅れてしまいましたね。真たちはもう移動していますよ?」

 「安心なさってください。南条から今日の予定は全て聞いてますわ。お昼の伏見稲荷神社で勝負をかけますわよ!」


 南条から送られてきたメールの画面を四羽に見せつけてドヤ顔をする白猫に四羽は拍手をおくる。


 「では、私達は予定通り二条城に向かいましょう!さ、こちらですわ!」


 白猫は自ら先陣を切って二条城へと向かって歩いて行った。


 ○ ○ ○


 「ここが二条城っす!教科書で見た通りっすね!」

 「ええー?お城どこー?」

 「五花は居眠りばっかだからわからないっすよ」


 諦める様に重いため息を吐く一華と疑問符を頭に浮かべる五花。それを見て苦笑いする同じ班の女子2人。

 そこにもう一つの班がやって来た。見慣れた女子と白い髪の有名人が。


 「あれ?一華と五花。行き先が被るなんて凄いですね?」

 「あ、四羽じゃん!凄い偶然だね!」

 「でもまぁ、有名な場所は皆んな行きたがるもんっすからね。被る事もあるっすよ」

 「あら、お友達ですの?では、私達はあちらを見て来ますね。ごゆっくり」


 そう言い残すと白猫たちは違う場所に進んでいった。変な気を使わせてしまったらしい。

 一華の班に合流して一緒に二条城を散策する。中に入ると映像で見るよりも美しい景色が広がっていた。特に遠侍三の間の「竹林郡虎図」は本当に虎に睨まれている様な迫力が伝わって来た。

 黒書院には大政奉還の模型が置いてあり、授業で習った事と現実が繋がって、謎の高揚感に包まれた。


 「す、凄いね…」

 「そうっすね…テレビで見たまんまっす」


 一華と四羽は2人で歴史を変えた場所を静かに眺めていた。


 「……次はどこに行く予定なんすか?」

 「えっと…着付け体験をした後に伏見稲荷神社に…」

 「…!そ、そうっすか」


 そこは確かお昼に真が行くって五花が言ってた場所。何か嫌な予感がする。そう言えば、四羽の班には生徒会長が居た。そして、真の班には生徒会書記が居る。偶然?いや、私と同じく何か企んでる。


 「そうなんすね!じゃあ私達は次のところに行くっす!じゃあまた後で!」

 「え?ええ。また後で…」


 「あ、一華来た。次はどこ行く予定だっけ?」

 「ええっと次は…」

 「…ねぇ…予定変更しても良いっすか?伏見稲荷に行かないっすか?」

 「え?ま、まあ大丈夫だよ。SNS映えしそうだし!それじゃ行こっか!」

 「………そっか。一華……ごめんね…」


 一華の班は二条城を後にした。まだ戦いは始まったばかり…。

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