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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第三章 激戦!運命の紅葉狩り編
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第34話 紅葉狩り〜鹿たない約束〜

 奈良公園。約1,300頭の鹿と触れ合える場所で、国の名勝に指定され、文化財として保存されている。京都駅から電車を40分程乗り継いで奈良公園へやってきた。


 「鹿だあー!!」

 「始めて来ました!本当に鹿が居ます!」

 「…可愛い。ねぇ真、鹿せんべいあげに行こうよ」

 「ああ、そうだな」

 「あっちで買えるらしいっすよ?早く行くっす」


 既に太陽は沈みかけているが、その夕日が公園全体を黄金に染めている。クラスの皆んなは既にバスに乗って他の場所に移動している為、高校生の姿は見当たらない。時間の許す限り、自由に散策出来る。


 「わぁ!三和が鹿にモテモテだよ!」

 「…ま、まま真!…た、助けて〜!」


 鹿せんべいを両手に持った三和が大量の鹿に追いかけられる。普段クールな三和が慌てている姿を見て皆んなで笑ってしまう。

 鹿と追いかけっこをした後は、売店に入ってお土産を見る。

 

 「これ欲ーしーいー!」

 「絶対!要らないっす!木刀なんて買ってどうするんすか!」

 「そうですよ!五花!早まらないで!ただでさえ部屋に物が散らばってるんですよ!?」


 売店で木刀を買いたい五花とそれを全力で止める一華と四羽。まるでおもちゃが欲しくて地団駄を踏む子供とそれを宥める母親の様でまた笑ってしまう。


 「あ、ここって東大寺じゃないですか?私行ってみたかったんです!」

 「…おっきい大仏があるんだよね?」

 「ああ、確か教科書にも載ってたな」


 東大寺の中に入ると、目の前には人々を優しく見守る巨大な大仏が待ち構えていた。


 「…おっきぃね」

 「お、思ってた以上だな」

 「凄い天パだね?」

 「五花…あれは天パじゃないです…」


 大仏を見て回っていると、不意に腕の裾を引っ張られる。


 「…真、ちょっと良い?少しだけ話があるんだけど」

 「?2人きりの方が良いか?」

 「…うん。そうだね、ちょっとこっちに…」

 「………」


 東大寺の後、公園の小さな休憩所のベンチに座る。木製のベンチは座った瞬間に臀部(でんぶ)をひんやりと冷やす。四羽と三和は鹿と写真を撮り、一華はお手洗いに。五花とベンチで自販機で買ったジュースを飲んで休憩する。


 「…ごく…ごく…ぷはぁ!マコトっち、ジュースありがとう!」

 「そのくらい良いよ」


 五花は俺が奢ったオレンジジュースを飲んでいる。相変わらず美味しそうに飲む。見ていると一口貰いたくなる。


 「…なぁに?じっと見て!あげないよ?」

 「ぶっ!…いらねぇよ!」


 思ってた事をそのまま当てられたので驚き、飲んでいた葡萄ジュースを吐き出してしまう。


 「あははは!何やってんの〜?マコトっちって偶にドジだよね?」

 「う、うるせぇよ。まぁ否定はしねぇけど」


 2人で笑い合う。五花とは会話が楽しいとよく感じる。夏祭りの時も一緒に回って楽しかった。この明るさに助けられることもよくある。


 「…ね、ねぇ真?あ、あのさぁ…」

 「?な、何だよ」


 いつもの五花とは違い、恥ずかしそうにもじもじとしていて何でもかんでも口に出す姿とかけ離れている。急な変化に動揺していると五花がゆっくりと口を開く。

 

 「ね、ねえ!明日の班行動の時……少しだけ…時間貰えないかな?夕方に清水寺で…き、綺麗だから観に行きたいなってね?」

 「あ、ああ。大丈夫だ。そのくらい事でもじもじすんなよ。なら、皆んなも…」

 「そ、それは!」


 五花がベンチから立ち上がる。急に焦り出す。明らかに様子がおかしい。いつもの五花じゃない。


 「ふ、2人っきりで観たいなーって…そ、その!皆んなも班のみんなが居るし、私のところは平気だけど…皆んながそうだとは限らないじゃん?」

 「そ、そうか?………まあ、良いけど」

 「ほ、本当!?じゃあ約束ね?絶対だよ!?」


 五花がその場でぴょんぴょんと跳ねる。普段とおかしいが、少し抜けるくらいこっちも問題ないだろう。なら…あれを早めにしなきゃな…


 「あれ?何か話してたんすか?」

 「い、一華!?な、何の話もしてないよ?ねぇ?マコトっち!?」

 「え?…あ、ああ」

 

 遠くから不意に俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


 「真ー!こっち来てくださーい!」

 「…真ー!早くー!」

 「お、おう!今行くー!」


 三和と四羽に呼ばれて休憩所から出る。出る瞬間に一華と五花が話している姿を見たが、何を話しているのかはわからなかった。


 「上手くいったっすか?」

 「…うん。明日の夕方に清水寺に2人っきりって…。真も大丈夫だって」

 「ありがとうっす!今のところ計画通りっすね」

 「う、うん!そう…だね………」


 そう、この約束は仕方ない約束。私は一華を応援する。私が結んだ仕方ない約束。


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