第1話 はじめの一歩
「はぁーーーー。どーすればいいんだー」
今日から7月。それも月曜日。いつも月曜日は憂鬱だが、今日の月曜日は次元が違う。朝のショートホームルームなんかよりも、僕の頭の中は土曜のお見合いの事で頭がいっぱいだ。
○ ○ ○
「えーっと話をまとめると、今まで自由に恋愛出来なかったから、それをゲームの中で発散しているってこと?校則すらも破るくらいに?」
「ブッ!欲求不満なの?アハハッ!あーごめんごめんつい…んふふ!」
「生徒会長…いや、真くんも面白いところあるっすね」
「…真面目な人かと思ってた」
「うん、先輩って学校じゃ孤高の王子って感じだったのに」
「……」もう殺してくれ
無事に僕の秘密はバレて5人から総攻撃を受けた。あの後泣きそうになりながらその場を凌いだ僕を褒めて欲しい。途中で父さんが持ってきた和菓子がなかったら、こうして口封じすることはできなかっただろう。
○ ○ ○
学校にはまだバレてない。しかし、いつ、誰がバラすかわからない。これまでこんなにハラハラしながら不安でいっぱいの学校生活があっただろうか。
僕の心の中とは反対に雲一つない晴空を窓越しに眺めながらため息を吐く。気がつけば先生の話は終わり、日直の号令がかかって慌てて立ち上がる。
まだ僕は生徒会長だ。生徒の模範にならなければ。そう心に誓って1時間目の準備をする。
なんとかいつも通りに過ごし昼休みになった。普段なら購買でパンを買って屋上に行くところだが、しばらくは行けない。行こうとしたら嫌な思い出がフラッシュバックする。珍しく今日は食堂で食べよう。
食堂はお腹を空かした生徒たちでごった返していた。食器の音、生徒同士の話し声、それらの音で半分以上掻き消されてしまっている天井のスピーカーから流れるクラシック。普段来ないからその全てが新鮮だった。
食券の列に並びながらメニューを睨みつける。何にしよう。普段来ないからどれが美味しいのか。そもそも何があるのかすらわからない。列をゆっくりと進んでいると後ろから声が聞こえた。
「ここのオススメは日替わり定食ですよ?なんと今日は餃子が5個も付いてきます!」
「あー。餃子かぁー確かにいいかm」
後ろを振り向くと背の低い黒髪ロングの少女が立っていた。確か、この子は…
「どーも門川先輩!佐倉ニ奈です。どうしました?あっちにみんな居ますよ??」
「君たちは後ろからじゃないと声をかけられないのか…」
「え?どう言う意味…」
「いや、こっちの話だ。そしてなんで一緒に食べる前提なんだ。」
「えぇ〜?屋上じゃなくてわざわざ食堂にまで来たのに、未来のお嫁さんとご飯食べないんですか?」
「え?今、未来のお嫁さんって」
近くにいた女子生徒たちがヒソヒソと話し始めた。
「馬鹿ッ!声がデカい!」
咄嗟に「肉うどん」と書かれているボタンを押して、出てきた食券を急いで食堂のおばちゃんに渡す。
お盆に乗せられたうどんを持って席を探していると、周りがザワザワっと騒がしくなっていくのを感じた。なんだ?みんな僕のことを見て…
「あれ生徒会長じゃない?珍しくない?」
「本当じゃん!ちょっとあんた誘ってきてよ!」
「えー!?恥ずかしいよ!でも、席埋まってるよね。私達のところに座ってもらっちゃう!?」
「キャーー!」
「あれ?生徒会長じゃん!俺たちの席に座ってもらおーぜ!」
僕って食堂に来ただけでこんな反応されんの?何これ、伝説のポ○モン?
皆の反応に立ち尽くしているとさっきの生徒たちが一斉に押し寄せてきた。
「一緒にご飯食べませんか!」
「俺たちのテーブル空いてるぜ!」
「ちょっと!どきなさいよ!私たちが誘ったの!」
「はぁ!?あたし達が先だし!」
あれ?なんか収集つかなくなってきたぞ?こんな時どうすれば。他に場所なんて…
「あの!門川先輩は私と一緒に食べますから!それじゃあ!」
人混みの中、片手に餃子定食のお盆を持ったニ奈さんが僕の制服のブレザーの端を引っ張って連れ出してくれた。周りの皆んなは釈然としない様な顔を浮かべていた。今度からちゃんと食堂に来よう。
「いやー門川先輩は人気ですね!食堂で席を探すだけでフェスみたいにしちゃうなんて」
「いや、したくてしてるわけじゃないんだが…」
「みんなー!連れてきました!」
そこにはお見合いぶりに見たお嬢様4人が既に食事をしていた。
「やっと来たっすねニ奈。そして、真くん」
「ど、どうも」
「すごい騒ぎだったね!まぁ座りなよマコトっち!それとも五花さんの隣が良かったかな?」
「マ、マコトっち?」
一華さんと梅里さんがニヤニヤしながら椅子を引いてくる。逃げ道はないのか?この食堂
引かれた席に座り、少し居心地の悪い中でやっと昼食を取ることができた。少し緩くなってしまった肉うどんをズズッと啜り上げる。その光景を白百合さんが無言で見てくる。めちゃ食べずらい。
「えぇっと?白百合さん?な、なにか?」
「…ううん。なんでもない。」
「そ、そう?」
「てか、先輩ってなんで私たちの事は下の名前で呼ぶのに他の人には名字で呼ぶんですか?」
「確かに!私も五花って呼んでよ!」
「い、いや二人は姉妹で名字が同じだがら!それに知り合ったばっかだし」
「そうですよ五花。私達はまだ知り合ったばっかりです。」
今まで無言だった四羽が少し怒った様な口調で会話を遮る。それに反応して梅里さんが僕の方に椅子を近づける。
「えぇー?なんでー?いーじゃん。」
「異性とそんなに近づいてはいけません。それに、この際はっきりと言いますが、私は門川くんの許嫁なんで嫌ですから。」
「!!!」
僕の箸が止まる。目線を丼の中の茶色いスープから、逸らし続けていた蘭さんに向ける。鋭い目付きで蘭さんは続ける。
「生徒会長でありながら校則を破っている。それに、あの日。あなた答えをはぐらかしましたよね?」
「………」
彼女の言う通りだ。あの日、この中から許嫁を決めるのかどうかと言う質問をされた。簡単な質問にも僕は答えられなかった。
これは僕の問題の前に家同士の問題なのだ。この四つの家の中から選ぶと言う事は、門川家とその家の関係を一生のものにするかどうかを決めると言う事。そんな重大な問題を僕は「弱みを握られたから」と言う自分勝手な焦りではぐらかしてしまった。
彼女たちにも家の問題がある。自分の将来が決まるかもしれない相手がこんなんじゃ怒るのも無理はない。
「うーん。確かに真くんは面白いっすけど、許嫁になるかどうかは別問題っすね。」
「…それはそう。」
「私は、少なくともあなたから答えを聞いて生徒会長らしい行動を示して貰わなければ許嫁にもなりませんし、あなたの秘密もバラします。そうでなければ生徒会長も務まりませんしね。良いですね?それでは、ご馳走様でした。」
蘭さんがその場から立ち去り、それに続いて白百合さんと一華さんも帰って行った。
「あー…私はマコトっちと仲良くできると思ってるからね?そ、それじゃあ!」
「あっ、私も行きますね先輩。私は先輩の味方ですから。」
梅里さんとニ奈さんも蘭さんの後を追いかけて行った。そうしてさっきまで騒がしかったテーブルに冷めきったうどんの残りと1人取り残された僕はそのテーブルがさっきよりも広く感じた。
<5人ヒロインの情報!>
佐倉一華 年齢17歳 佐倉家の長女
身長 165㎝ 体重49k バストサイズ Fカップ
●「SAKURA MUSIC」と言う音楽業界では有名な会社のご令嬢。一華も歌がプロ並みに上手い。
●見た目は深緑色の髪のロングで泣きぼくろが特徴。性格は一見優しそうだが、少し腹黒な一面も。口癖は「〜っす」
佐倉ニ奈 年齢16歳 佐倉家の次女
身長 150㎝ 体重45k バストサイズ Dカップ
●姉と同じく佐倉家のご令嬢。皆んなとは学年が一つ違う高校一年生。歌は上手くないが、聴くのは大好き。歌の代わりに美術部で絵の天才。
●見た目は姉よりも明るい黄緑色の髪のロング。身長が小さいのがコンプレックス。性格は優しく、誰とでも仲良くなれるが家ではわがまま。
白百合三和 年齢17歳 白百合家の次女
身長 178㎝ 体重58k バストサイズ Gカップ
●「straight」と言うスポーツシューズ全般扱う大企業のご令嬢。三和も運動神経が良く、バレー部のキャプテンで、全国大会にも出ている。
●見た目は紺色の髪を一本結びかお団子。身長やその他諸々が大きく、モデルの様な体型。性格はクールで口数が少ない。女子からも人気。
蘭四羽 年齢17歳 蘭家の一人娘
身長160㎝ 体重56k バストサイズ Eカップ
●代々裁判官に勤めてきたエリート一家のご令嬢。
学力は真に一歩及ばず学年2位だが、友達に誘われて参加した全国クイズ大会で最年少で優勝している。
●見た目は桃色髪のボブ。メガネ姿で図書委員長をしてる。性格は真面目で正義感が強い。しかし、可愛いものには目が無く、猫の動画ばかり見ている。
梅里五花 年齢17歳 梅里家の三女
身長 170㎝ 体重50k バストサイズ Eカップ
●「plum foods」と言う巨大食品企業のご令嬢。
五花も料理上手で自分の店を出すことを夢見ている。
●見た目は金髪のショートカット。性格はいつも元気で明るい。クラスの中心にいつもいる。でも、一番心が弱い。本人もそれが短所だと思っている。