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許嫁ガチャは⭐︎5だらけ  作者: 我妻 ベルリ
第二章 恋のトロピカルサマー編
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第16話 ようこそ、日朝祭りへ

 8月3日。僕は、Love Princessのマネージャーに今回のお祭りの説明をしていた。

 日朝祭り。8月10、11日の2日間で開催して、四羽のキッチンカーや日朝商店街の出店と、Love Princessのライブ。準備期間が短いから、大きいイベントって訳では無いが、かなりの人が来る。

 このイベントが成功すれば、売り上げ3倍は超えられるだろう。


 「す、凄いですね。小さいライブを開く予定が、こんなに大きくなるなんて」

 「いえ、この計画を思いついたのも一華のお陰なんです。」

 「ええ!?私っすか?」


 驚く一華を周りはニヤつきながらからかう。お祭りの説明でメンバー全員に聞いてもらっているのだ。


 「僕は、生徒会長をしているんですけど、その生徒会選挙の様に、周りが興味を持つ様にすれば良い。小さいライブは気にしないかもしれないけど、お祭りの中のライブだったら大いに盛り上がる」

 「…なるほど、わかりました。では、お祭りでのライブ引き受けさせていただきます!」


 その言葉にガッツポーズしそうになったが、気持ちを抑えて「ありがとうございます」と丁寧にお礼をした。


 スタジオを去った後、その足で向かったのは三和のいる宿舎だ。そこで部員の皆んなにお祭りの手伝いをお願いしに行く。


 「練習で忙しいのはわかってます。でも、僕に力を貸してくれませんか?お願いします」

 「…皆んな私からもお願い。…真は生徒会長として皆んなを助けて来たでしょ?この合宿だってそう。…だから、手を貸してあげて」


 三和は皆んなの前で一緒に頭を下げてくれる。

 少しの沈黙の後、誰かの笑い声が聞こえた。


 「会長って、なんか凄すぎて着いていけない感じするよね!」

 「あー、わかるかも。孤高の天才って感じ?」

 「そんな会長が私達に助けてだって!なんか燃えるね!良いじゃん!やろうよ!」


 正直、もっと反対意見が聞こえると思っていた。でも、そんな心配とは真逆に、皆んなの顔にはやる気が満ちていた。


 「…皆んな真に助けられてる。だから、こうやって助けてくれるんだよ?…全部、真の力だよ」

 「…皆んなありがとう。三和も、無理なお願いを聞いてくれて、僕の事を気にかけてくれて、本当にありがとう」

 「……う、うん。ま、真の為ならね…!」


 人員も店も確保できた。皆んなの協力があったから。こんな事、1人じゃどうにもならなかった。皆んなが変えてくれた。そうでなきゃ、こうして父親に歯向かうなんて出来なかったのだから。

 スマホの通知を確認すると一件の着信があった。父からだ。


 「……もしもし?僕だけど」 

 「この前の件だ。お前の言った通りにしといた。梅里さんに掛け合って、キッチンカーと屋台を出してもらうことになった。それと、お祭りに必要なものは諸々用意した。後はそちらで自由に使うと良い。」

 「わかった。ありがとう、父さ」

 「しかし、忘れるなよ?お前の我儘に『門川』の名前を使ったんだ。…これで最後だ。次、また門川の名の使った時は………わかるな?」

 「…わかってる。今回だけだ」

 「…なら良い。門川に失敗は許されないからな」

 

 プツンっと電話が切れる。外の道の真ん中で、暑いだけじゃ無い違う汗が流れる。


 ○ ○ ○

 

 8月10日。日朝祭り当日。

 事前に、作っていた二奈の作ってくれたポスターとSNSで呼びかけていた。

 それに加えて、消えた日朝祭りがもう一度開催すると聞いて、地域住民が押し寄せた。

 僕は「これなら、行けるかもしれない!」っと激務に追われながらも、どこか楽しげな表情を浮かべていた。

 しかし、お祭りの運営はそう甘くない。

 父が用意してくれた警備員とのパトロール。各店舗の衛星チェック。休憩所の設置にライブの準備。

 思っていたよりも大変だ。1人じゃ絶対にこなせない。

 膝に手をついていると、前から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。顔を上げると、三和たちが手伝いに来てくれた。


 「会長、大丈夫?ここは私達に任せて!」

 「皆んな、お祭り頑張るよー!!」

 「…真、私たちは大丈夫。ここは任せて」

 バレー部の皆んなが居なかったら、どうなっていただろう。本当に感謝しても仕切れない。

 僕はその場を三和たちに任せて一華たちのライブの会場へと向かった。


 「こんにちは。マネージャーさん、ライブ開始まで30分です。問題無いですか?」

 「あ、門川くん。丁度良かった、その…一華が…ね?」

 「え?」


 マネージャーに着いて行き、控え室に向かうとそこには部屋の端で疼くまる一華が居た。


 「一華!?だ、大丈夫か?どこか具合でも悪いのか!?」

 「この………」

 「え?」

 「真の馬鹿ー!!!」

 「グッ!!!ま、また!?」


 一華に駆け寄った瞬間に首をあの時の様に、後ろから絞められる。その姿をマネージャーと他のメンバーは苦笑いして見ていた。


 「真は知ってたんっすよね!?ここに二奈たちが来てた事!なんで言ってくれないんすか!?」

 「い、いや!一華が『誰にも言うな』って言うから!お互いに知らない方が良いかなって!」

 「まさかここに居るとは思わないじゃないっすか!!」

 「あははは、2人が仲良さそうで良かったよ!じゃあ、私達は先に準備してるからね」


 メンバーが気を利かせてくれたのか、控え室に2人きりになる。絞めていた腕が緩まり、僕の事をギュッと抱きしめる。その手は少し震えていた。


 「はぁー、さっきチラッと二奈たちが見えたっす。まだ、アイドル活動は知られたくなかったのに。」

 「そ、それはごめん。でも、一華の歌は誰よりも綺麗たし、ダンスも練習してきたんでしょ?僕は、一華のアイドル姿はすごく素敵だと思うよ。」

 「…ずるいよ。真は」


 そう言うと一華は顔をパチンと叩いてメンバーの後を追った。「ありがとう!」とだけ言い残した彼女のその背中は、自信と勇気に満ち溢れている様に見えた。


 いつもそうだ。真の言葉を聞いてしまうと、何でもできる気がして何にでもチャレンジしてしまう。

 アイドルは、高校一年生の時にスカウトされて始めた。最初は少しだけやるつもりだった。親にも妹にも言わなかった。

 でも、歌うことが楽しかった。ダンスも、一緒に同じ目的を目指すメンバーが好きだった。だから、隠れながら続けていた。まだ完璧じゃ無いからって言い訳を重ねて先延ばしにするのはやめよう。

 だって、私には既に1人大事なファンが居るのだから。


 ステージのライトが光り、白いスモークが勢いよく吐き出される。観客の歓声の中、音楽がスタートしてスモークの中からメンバーが歌いながら入場する。

 フリルのついた可愛らしいアイドル衣装。指先までぴたりと揃ったダンス。そして、一華の心を揺さぶる歌声。

 元々ファンだった人。今日初めて彼女達を知った人。その場に居た全員が彼女たちの虜になっていた。


 もう迷わない。彼が本当の私を受け止めてくれた時みたいに、私は好きな事を隠さない!応援してくれるファンがいるから。

 

 ライブは大盛り上がりだった。ライブを観ていた人は皆んな満足した表情を浮かべていた。

 ライブ会場を後にする人を誘導していると、二奈たちがこちらに走ってきた。


 「先輩!!お、お姉ちゃんが!あ、アイドルに!って言うか、先輩は知ってたんですか!?」

 「し、信じられません!!と言うかここに来ていたのですか!?言ってください!」

 「でも、一華可愛かったよね!ねぇマコトっち!一華に会わせてよー!」

 「お、落ち着けって!ちょっと待ってろ!」


 誘導が終わった後に、3人を控え室に連れていく。一華のアイドル姿に驚いた3人は、ライブの感想をその場で熱く語る。

 その姿を見ていると僕にも満足感が心の中に広がっていく。


 気づけば時間は17時になっていた。お祭りを無事に終えることができた僕は、女子バレー部員にジュースとリゾート割引券のお礼をして仕事を終えた。

 三和と2人で4人の待つところへと向かう。


 「…真、本当にお疲れ様。1日だけでも大変だったのに、明日は私達居なくて大丈夫?」

 「明日は父が用意してくれた従業員が来てくれるし大丈夫だよ」

 「…そっか。…私も、練習終わったらなるべく早く駆けつけるからね!」

 「あはは、心配してくれてありがとう!」

 「あ!先輩来たよ!」

 「………え!?なんで皆んなが居るの?それに、一華その衣装は!?」

 「じ、実はっすね………」


 一華はアイドル活動のことを皆んなに打ち明けた。皆んな最初は驚いていたが、それと同時に応援してくれていた。一華の顔は安心した様な表情をしていた。


 「それにしても!なんで真は、私達に教えてくれなかったんですか!?」

 「え?僕!?」

 「…うん。私なんて皆んなが居る事今知ったし」

 「言えるタイミングあったよね?マコトっち?」

 「それは…確かにそうっすね!言ってもらえれば私あんな事になんなかったすよね?」

 「!?お姉ちゃんに何したんですか!?詳しく聞かせてもらいますよ!?先輩!」

 「えぇ…」


 こうして、日朝祭りの1日目は無事に終わったのであった。


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