プロローグ〜⭐︎5美少女との出会い〜
「真!大好き!」
告白。それは好きな相手に自分の「恋」を打ち明ける勇気のいる行為。告白された相手はその人と付き合うのかどうか、返事をする必要がある。
6月の校舎裏。日が当たらず、少し湿っぽいこの場所で僕は目の前にいる女子生徒の目を見てその返事をする。
「ごめん無理。......もう行っていいかな?」
あまりにも呆気ない返事に彼女は唖然としている。そんな彼女を気にせず僕はその場から立ち去る。
門川真。僕はスポーツは出来るし、勉強も学年一位。生徒会長をしているだけでなく、誰もが知っている超有名企業「門川不動産」の御曹司だ。
自分で言うのもなんだが、昔からモテる。結構モテる。しかし、御曹司だからこそ、簡単に付き合うことはできない。これまでも何回も告白され、その度に断り続けてきた。さっきので何度目だろう?
昔から親に「お前は俺が決めた許嫁と結婚して、会社を継ぐんだ!」と恋愛を禁じられてきた。それが普通だった。
校舎裏から人気のない屋上へとやってきた。昼休みのこの時間は誰もいない僕だけの空間。
そこでスマホを取り出し、一つのアプリを起動させる。っとその時、下にいる5人ほどいる女子生徒の集団にと目があった。
目あったけど、まぁギリギリ僕だってバレていないだろう。危ない危ない。
見えない位置に移動してスマホゲームを始める。
そう!昔から恋を禁じられてきた僕が最近ハマっているゲーム「異世界美少女」と言うソシャゲだ!
ガチャで引いた美少女を育成して戦わせるスマホゲーム。この中なら自由に恋も結婚も出来る!最近はずっとゲームに夢中になり、学校でもするほどだ。
この学校「百花学園」は、いろんな業界のお嬢様、お坊ちゃんが入ることのできる由緒正しいエリート学校だ。もちろん校内のゲームは禁止。それも生徒会長なんて一番校則を破ってはいけない。
けど、このゲームの沼にハマってしまった僕を止められる者は居ない。多少ルールを破ってでも僕はこのゲーム。この美少女たちと恋をしたいのだ。
○ ○ ○
放課後になり、僕は近くのカフェに寄った。特に喉が渇いたとか、自習のためなんてくだらない理由で訪れたわけでは無い!コーヒーを一杯だけ頼み、席に座る。スマホをポケットから取り出して、ゲームを開く。「異世界美少女」の限定ガチャが今日なのだ!
「よし、今回は頼むぞ!」
この日のためにどれだけ努力したか!僕は祈りながら50連ガチャと書かれたボタンをタップする。
すると画面が金色に光る。⭐︎5確定演出だ。僕は叫びそうになるのをグッ!と堪えて、天を仰ぎながら小さくガッツポーズをする。
ここまで頑張ってきた甲斐があった!そんなことを考えながらガチャの結果を見るためにスマホを覗き込む。そこには6体の美少女が映っていた。
ん?1,2,3,4,5…6?50連ガチャを引いて10連につき⭐︎5キャラ一体のはず。ゲームキャラじゃない?この顔は…
僕は全てを理解した瞬間に後ろを振り向く。覗き込まれていた!?しまった、集中しすぎて気が付かなかった!
「ガシャンッ!!ベチャ!カラン!」
そこには僕の急な反応に驚いて持っていたフラペチーノとケーキ2個とドーナツとサンドウィッチをひっくり返したゲームキャラじゃない現実の美少女が涙目で立っていた。…そんなに食べる?っとどうで良い疑問を捨て、慌てて声をかける
「す、すまん!まさか真後ろに人がいると思わなくて!大丈夫か?怪我は?服は汚れてないか?」
「い、いえ!私の方こそごめんなさい!つい気になってしまって!」
彼女が持っていた商品とお皿がカフェの床にぐちゃぐちゃになり散らばってしまった。騒ぎに気づいた店員さんと一緒に落ちてしまったものを片付ける。
やってしまった。彼女にもお店にも迷惑をかけてしまった。
彼女の服が汚れていないか見てみたが、幸いにも汚れてはいなかった。しかし、汚れなんかよりも重要な物が目に入ってきた。
胸にある花柄の校章…百花学園のだよな?同じ制服?って言うかこの人の顔どこかで………
床に落ちたものを掃除し終えて二人きりになった。まずい。この人は昼休みに僕がゲームしているところを見ている!あの5人いた女子の1人だ!
「改めてごめんなさい。私、蘭四羽と言います。あなたが天を仰いだり、やけに集中していると思って何をしているのか気になってしまったんです。同じ学校の制服でしたし。あれはスマホゲームですよね?」
「え、ええ?まぁ…好きなんです。」
「へぇーそうなんですね!ところで、貴方をどこかで見た気がするんですけど…」
まずい!バレると色々と面倒だ!
「ま、まぁ!同じ学校ですしね!すれ違ったことくらいありますよ!あはは…」
「いいえ?」
「…」
「屋上で そのスマホゲーム してらしたんでしょ? 生徒会長さん?」
バレてるーーー!!!めちゃくちゃバレてるー!
くそ、どうしたら……待てよ?この場にいるのは蘭さんだけ!なら嘘でもなんでもこの場を凌げれば!
「あ!いたいた!おーい四羽ー!」
声のする方を見ると、そこには昼休みに見られた女子4人がいた。一歩一歩近づいてくるたびに冷や汗が出てくる。冷めきった自分のコーヒーを飲んでもそれは変わらない。
勢揃いかよ!全員来ちゃったよ!仕方ないこうなったら!
「あぁ!すまん用事を思い出した!いやー今日はごめんね?蘭さん。落としちゃった分のお金はここに置いていくから!それじゃあ!」
「ええ!?あ、ちょっと!」
パッと50,000円を机に置いて、彼女の呼びかけから逃げるようにその場を立ち去った。まぁ来週には忘れてるだろ。多分。
「四羽ーさっき人誰っすか?あっ、もしかして彼氏?」
「ええー!?四羽さんいつの間に!?」
「…四羽…恐るべし」
「もうっ!一華はいつもそう言うのばっかり!ニ奈ちゃんも三和ちゃんも違う!」
「そうだよ、四羽ちゃんにそんな度胸ないよ!で?さっきの人は?名前は?」
「あ、聞いてないです。彼急いで出ていっちゃって。あれ?五花?今酷いこと言っ」
「ふーん。まぁいいっす!それより明日の事について皆んなで食べながら話すっす!私のケーキは?」
「あっ」
「え?」
○ ○ ○
「はぁ。なんか今日は疲れたなぁもう寝よっかなぁ」
そう思い、自室で休もうとした時、廊下で不意に呼び止められた
「真、明日の事なんだが」
髪を綺麗に七三分けにし、キリッとした黒縁メガネをかけた、いかにもビジネスマン風のおじさんが僕の父。門川実。恋愛を禁じた張本人。礼儀作法に厳しく、仲がいい…とは言えない。
「何?父さん」
「明日の午後に俺と仲のいい財閥の娘さんたちがお前の許嫁候補として来てくださる。お前はしっかりと」
「わかってる。将来を見据えて選べばいいんだろ?じゃあお休み。」
食い気味に父の言葉を遮って自室に戻った。あの人言うことはわかってる。小さい頃から何も変わらない。父のせいで恋も愛も知らないのに………
○ ○ ○
「はぁ、お見合いねぇー?」
身支度を整えながら深いため息を吐く。これは家のため。僕の将来のため。父との関係がうまく行ってなくても、このお見合いはミスできない。相手は日本で大きな力を持つ財閥の令嬢たち。ここで約束が守らなければ家ごと無くなるかもしれない。気を引き締めなければ。そんなプレッシャーに余計にため息が出てくる。
動きずらい和服に着替えて、お見合い相手のいる和室へと向かった。廊下を歩くたびにミシミシと床が音を立てる。少しジメジメとした空気の中で一緒に歩く父と無言で移動する。少し床の音が大きくなった気がした。
「じゃあ、開けるぞ」
襖の前に立ち、もう一度服装を整える。呼吸も整えた。よしっ。心の中でそう言って襖をあけた。
[そう。ここからだ。この時から始まったんだ。]
中に入ると、色とりどりの鮮やかで綺麗な着物を着た5人の女性が畳に手をつき、頭を下げていた。
そして、全員が顔を上げると同時にお互いの運命に驚く事になった。
「え!?昨日の…」
「ん?なんだ真。知り合いか?まぁ顔くらい知っているか。同じ学校なんだし、お前は生徒会長だから見る機会はあるだろう。」
最悪だ。よりによって昨日、僕の学校生活最大の弱みを握っている彼女たちが、お見合い相手として目の前にいるのだから。
「では、私から自己紹介を!佐倉家の長女。佐倉一華と申します。本日はよろしくお願いいたします。」
「一華の妹の佐倉ニ奈です。よ、よろしくお願いします。」
「…白百合三和です。…よろしくお願いします。」
「蘭四羽と申します。よろしく お願いしますね?」
「梅里五花です!よろしくお願いします!」
「か、門川真です。…よろしく……お、お願いします。」
「じゃあ俺は席を外すから。真上手くやれよ?」
カタンッ
唯一の逃げ道が閉ざされ、目の前の現実と強制的に向き合う事になる。
[君と出会い、僕が恋と、愛を知る事になったのは]
「いやー、まさかお見合い相手が昨日の男の子なんて不思議なこともあるもんっすね!ねぇ?真くん?」
「か、門川さん。昨日はど、どうも」
「…顔色悪いよ?…大丈夫?」
「ほんとだねー。特に四羽の顔見て気分悪くなっちゃったのかな?」
「どう言う意味ですか!それよりも…」
あぁ。なんでこうなったんだ。この中から許嫁を選ぶのか?この状態を僕が好きなソシャゲで言い表すなら
「昨日のこと 詳しくお話しましょ?生徒会長の門川さん?」
許嫁ガチャ大失敗だ!!!!!
読んでいただきありがとうございます。我妻ベルリです。今回が初めての投稿なので読みづらかったり、不備があるかもしれません。ご了承ください。
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