第三話 戦ってる
見て、、、、、、、、、、、、、、
「そうか.......十分だ」
フォルティスはそれだけ言い、ゆっくりと足を進めた。一歩.....二歩.....三歩......フォルティスは突然態勢を落とし鞘から長刀を抜きその刹那、閃光が彼の頭上に光る。又、男にも同様な閃光が届いたように見えた。
闘技場は静まり返っている。ただただ、無言に、この戦いの何たるかを表しているようであった。
「若い.....が....成程....」
フォルティスは鋭い眼光を男に刺し、またもや剣を下ろし、その場に直立した。
男の額から少しばかり血を流し、彼もまた、再度同じ構えをとる。
一刻、刻一刻と時が過ぎていくような地獄の中、今度は男が動いた。驚くべきはそのスピードである。あの、窓から降りて骨折していたころとは天地の差である。しかし振り下ろした先、既にフォルティスはいなかった。刹那、男の喉仏が鮮血を流した。「ガガッ...」男の顔が厳しくなった。
それはフォルティス独自の剣技、硬直にあった。というと、それは通常の剣術とはちがい脱力ではなく、あえて力むことに追求したものであり、この世に似たものがないものだったからである。そのフォルティスの剣技はまさに彼の人格をも表しているとされる。
フォルティスは突然態勢を地とすれすれになるほど崩したと思えば、刹那巨大な爆発を見せ、美しい剣身を下から上へと男に向けて滑り込ませた。まさにその様は神業である。極限まで高まった力みは常に一振り一振りで数々の戦争を終わらせてきた。
喉仏から血を流しながら男は地に座る。正座姿でフォルティスの追撃を待つ。もはやこの痛手、相打ちを覚悟しなければといったところであろうか。男は目を静かに閉じ、集中の世界に入った。
長い長い、静寂の世界である。そこには物音ひとつなくただ風の流れのみが存在する。
.....................................................今ッッ
男の剣がすさまじいスピードで空気の『流れ』を斬る。
その時だった。剣が彼の手から離れたのだ。男は何かを考える暇もなく、フォルティスの体術により捉えられ、うつ伏せ姿に手を取られ、地にふした。
「若いからこその....ミスだ.....機転を利かせ、常に相手を見ていろ....さもなくば、また石を斬ることになるぞ......」とフォルティスは言い、男の腕をへし折った。その時、勝敗は決着した。
王の乾いた笑い声が響く。
「カッカッカッ.......決したか、戯れは......獣で、なおさら弱いとなれば、いよいよ救えないやつよのう.....エーと、名は何だったかのう.....まあいい、約束だ....わしに挑む権利をやろうフォルティスよ........」
「いざッ」
フォルティスは高くとび、玉座の前に降り立ち、剣を構えた。
王は杖のみを持ち玉座から腰を上げた。
刹那、空気が張り裂け闘技場全体が赤い瘴気に包まれた。
「ん~?」
王は杖の一振りで瘴気をかき消し、その元凶であろう者の姿を見ている。
「何をよそ見しているッッ」
フォルティスは王のすぐそば、およそ7mほど、騒然となる殺気を放っていた。
「何者の干渉など知ったことかッッ、見ておれ今貴様の首を地に落とさんッ」
その時である。
「あ~...お前はもうよい」
『ジュバッッ』
何の音であろう、群衆どもは目を張りつませた。そして、その音の正体に気付いたころには、王は既にフォルティスを見ていなかった。
「ぐっ....ガハッ」
みればそこには胴体を氷河に貫通されたフォルティスの姿があった。その剣は王までおよそ三寸と言ったところであった。
その時、王の杖の下半分が崩れ落ち、王は少し笑って見せた。
「ハハハ...獣なりの意地というわけか.....作り変えなければならんなあ...........さて」
王は立ち上がらんとする『元』少年の姿を見た。