十話
音楽っていいな(今更見てくれる人がいたらいよいよ感謝、圧倒的感謝)
先の闘技場にまた人だかりができている。だがこの前の場合と違い、今回、群衆の顔は明るげだ。群衆の目線の先には空っぽの玉座と、その前に立っているガリガリの小綺麗な男である。そのやけに豪華な服装が風に揺れるたびに『ジャラジャラ』と音をたてる。男は満面の笑みでこう言った。
「皆さんっ、私はこの度、国王に就任することを決定し、今回はその宣誓の時でありますっ」
男はちょび髭を左手でいじくり回しながら続ける。
「前任、の元ッ勇者の治世は、この世に類を見ないほどの悪政でありましたっ。また暗殺事件の犯人はラザーン国のものと、それを扇動したフォルティスによるものであり、私は其奴らをこの度始末し、事件を決着させた次第でありますっ!」
群衆が『わっ』と沸く。ガリガリの男は至福の表情を浮かべている。
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男は考えている。走りながら考えている。いや、先の展望を考える、というよりかは、思っているのだ。フェリーザとお茶を飲む自分。原っぱを走り回る自分。…..教会にて、式をあげる二人。
男は呟きながら走る。「あとちょっと、あとちょっと、あとちょっと、あとちょっと…….」
男は荒れ果てた荒野を走り抜くと遂にはルードムの国を視界にとらえた。男はより笑顔となり、駆け抜けてゆく。
男はルードムを囲う門の前に立った。すると即座に兵に囲まれる。顔は知れ渡っているという訳なのだ。兵達は思ったことだろう。(なぜ生きている。新王は奴等を処分したのではなかったのか)
しかし、それが彼らにとって最後の思考となり、赤い瘴気の中、静かに息絶えた。男は門を飛び越え、人々の多く集まる闘技場へと向かう。
生存報告も兼ねての事だから短いけど完