1.生きるってお金かかる。
「私の青春って灰色」
在り来たりな高校生活、変わらない毎日。
「宝くじ当たらないかな」
買わずに当たるのが、最高だよね。
「それなー」
「何か甘いもの食べたくなった」
「わかるー。犬くん、チョコパ大盛りね」
「私もー」
私の名前は、宮古碧。雅ヶ丘私立高校の一年生。
ファミレスで二人プラス一匹、向かいの座席に座っているのは、ネイルアートが好きな友達の羽那。床に座っているのが、山田犬太君。
名前が犬って笑える。
まあ犬君は、要するに使い走りなんだけど。私の元幼馴染みです。そのことは、羽那には内緒にしています。
「そういえばさ、アオ」
「何っ?」
「VRMMOって知ってる?」
「あれでしょ、オタクとかが夢見て冒険だーってやつ」
「そうそう、何か弟がさ。新しいの買うから、今使ってるやつ欲しい人いないかって」
「アオいらない?」
「いらない」
「私ちょっと興味あって、弟の新しいの借りてさ。アオと一緒にやりたいなーって」
「やらない」
「ひなたーのコンサートチケットあるんだけど」
「やる」
「ホントわかりやすい。赤子の手をひねるようなものよ」
何だか負けた気分になる、悔しい。
「あ、ごめん。これからバイトだった。その話はまた今度ね」
「オッーケイ、来週VR機器持ってくる。アオも絶体、タヌしゃまの虜になるよ」
タヌしゃま?なんだかよくわからないけど、まあいいや。急がないと、バイト遅刻になる。
「じゃあねー」
「ばぁーい」
バイトまでの道中、犬君と二人だった。
「はい、これ」
私は、犬君にお金を手渡す。
犬君は、何も言わず黙って受け取った。
今日の私と羽那の、犬君が支払った払いである。
「別に無理しなくていいんだよ。ぶっちゃけ辛いでしょ、何でついてくるの?」
「別に…俺犬だし」
「まあいいけど」
犬君は、それ以上言葉を話さなかった。
変なやつ。
私はコンビニバイトをしている。羽那と遊ぶのは、楽しいけど。交遊関係とは、お金がかかるものなのだ。
チケットが貰えるのは嬉しい、でもVRMMOって言われても、正直よくわかんないんだけど。
つい溜め息が漏れる。ゲームなんて、やってる暇がないんだけどな。
帰ってからは、勉強をする。家では優等生を演じなければならないのだから。
バイトが終わり、そのまま帰るのもなんだし…パリパリチョコを買おう。
チョコのクセにパリっとする。それがなんか好きー。
…お金が空から降ってこないかな。そんな希望的観測、叶うわけないよね。
眠い、疲れたー。今日は、早く寝よう。