働け!白血球!
僕は血管の中で血液を移動しながら暮らしている白血球。白血球の寿命は平均で10日程だって。時々話しかけても返事の無いヤツがいるから、寿命が来たやつなんだろうね。どこかで濾しとられて回収されてるみたいだけど場所は分からない。僕が死んだら分かるようになるのかな。
同じ血管で暮らしている血小板さん達も寿命は10日程で同じくらい。赤血球君達は4カ月程生きるようだから羨ましい。大きさはというと僕が一番大きいんだけど、正直僕が一番働いていない。赤血球君達は数が一番多くて、僕1に対して1000はいる。全員が顔を真っ赤に、もしくは真っ青にしてびゅんびゅん流れていてお仕事大変みたい。血小板さんはサイズが一番小さくて、数は僕1に対して60程。心臓周辺の血流は物凄く速くて血管が細かく剥がれたり、脚の毛細血管は体の主が走った程度の衝撃でも破れたりする。だから血小板さんが小さい体を活かして隙間に入って血液が漏れないように血管の修復を身を呈してしてくれているんだ。僕達の住みかを体を張って守ってくれているなんて頭が上がらない。僕達、白血球も体に侵入してきた外敵に抱きついて動けないようにする使命があるんだけど、何せ出番が限られるので今日も流れに身を任せて血液を遊覧しているの。
僕は骨髄というところで産まれたんだけど、僕にとって故郷と言える場所はそこではないんだ。産まれてから心臓で3回目に送り出された右脚ふくらはぎ。そこの毛細血管は入り組みもやもやしてて血液も停滞しがち。そこにいた赤血球と血小板と仲良くなったんだ。
白血球「こういう入り組んだ所はよくあるの?」
赤血球「なんだ。君はこういうところは初めてかい?」
血小板「割とあるわよね。心臓から送られた行きは停まるのが大変なくらいだけど、帰りは遅いし詰まることも多いわ。そこで10日間抜けられず寿命を迎える場合なんてのもあるのよ。」
僕「うわぁ。今回もそうなのかなぁ。嫌だなぁ。」
赤血球「今回は大丈夫だと思うよ。たぶんこの体の主の体勢が悪くて血液が滞っているだけだからさ。」
僕「さすが赤血球君。物知りだなぁ。でも顔が真っ青になってるけど大丈夫?」
赤血球「私達は肺に寄ってから時間が経つとどんどん青くなるからなぁ。心臓まで帰って肺に行ければ元の元気な赤色に逆戻りさ。」
僕「そうなんだ。僕はまだ産まれてから数分しか経ってないからこの体のこと色々教えてくれると嬉しいかなぁ。」
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血小板「少し前に体の主が右手の小指折った時は凄かったわよね。」
赤血球「そうだったなぁ。僕達の仲間の赤血球や白血球、血小板が、もぅ、ぶわぁぁぁぁ!って傷の部分に集まってぐちゃぐちゃになってて。近所まで行けただけで参加はできなかったけども。」
白血球「へぇ~。それは怖いの?楽しいの?」
血小板「送り出してもらえたなら絶対参加したかったわ。祭りよ祭り!この体の主を守るために私達は産み出されたんだからね。寿命で死んじゃうなんて勘弁よ!」
赤血球「傷口を塞ぐ血小板さんはそうだろうね。僕達は血管の外に出ちゃったら絶対死んじゃうから興味はあるけど、寿命までずっと体の主のために細胞に運搬し続けたいなぁ。」
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白血球さんと、赤血球君の体の主への愛を聞き、僕も役目を果たしたいと決意をしました。そして数時間後、、、
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血小板「あ、血流が戻ったみたいだわ。じゃまたどこかで会いましょう。」
赤血球「そうだね。難しいだろうけど。」
僕「え。会うのやっぱり難しいのかぁ。うん、分かった。じゃあね。」
それからあの血小板さんと赤血球君には会えていません。一人の人間の血管の長さの総延長は10万kmにも及ぶので会うのは難しいのでしょう。心臓ですれ違ってるかもしれないけど、あそこは血流が速すぎて会話とか絶対に無理だし…。僕にとっての故郷の右脚ふくらはぎには何度か近くに辿り着けたけど、あの血小板さんと赤血球君はいませんでした。
僕はもう1カ月も生き続けてる。特殊な存在なんだろうか。色々教えてくれたあの血小板さんや赤血球君以外にも色々な出会いがありました。皆に共通して言えるのは体の主への愛を持っている事。また献身的に体の機能を保ち健康的でいれるように、そして全身の栄養や不要物の運搬を管理しているという誇りを持っている事でした。僕も1カ月何も仕事が無くうろついているだけなんだけど、そういう集まりの一員でいられる事がとても嬉しいとひしひしと実感しています。敵が出たら絶対やってやるぞ!とは思うんだけど…。
ある日、心臓の鼓動がとたんに激しくなり血管内が大わらわとなりました。そして間もなく心臓の活動が停止。血液の動きが停まります。僕は左手の小指の先でぎゅーぎゅーに圧迫されて動けなくなりました。体の主が首を吊って自殺してしまったのです。ネット掲示板で自身への悪口を書かれたから。僕はたった1カ月の短い暮らしの中、こんなにも体の主を慕って献身的に働いている億を越えるメンバーの中に居たので、こんなあっけない最期がとても切なく感じました。もう少しで僕は死んでしまうんだろうけど、どうせ死ぬのならあの右脚ふくらはぎで死ぬか、ウイルスと戦って勇敢に働いて死にたかったかな。




