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十一夜の刻の執事  作者: 彩 夏香
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四十  別れ

四十  別れ



「待って、待って。どうしちゃったの!何が起きてるの!」


何も無かった玻璃と暁の足元には、オルゴール達の乗っているのと同じ台座が出来始めていました。


「ママ!パパ!早く降りて!台座が、、、オルゴールと同じ台座に乗ってるよ。何してるの。どうしてそんなところにいるの!」


瑠璃には二人がどうして台座に乗っているのか、全くわかりませんでした。が、何か怖いことが始まっているように思えて、玻璃と暁の腕を引っ張って台座から降ろそうとします。そんな我が子を玻璃が引き寄せて


「瑠璃、瑠璃。もう、足が動かないの、、、」

「何言ってるの!そんなとこに乗ってるからだよ!早く降りて!」


暁も瑠璃を抱きしめて


「瑠璃。わかっておくれ。パパや、ママには、もうどうすることもできないんだ。」

「何言ってるの。諦めないで、降りて、降りてきてよ!」


瑠璃の必死の声がホールに響きます。


「瑠璃、聞いて。もう時間がないのよ。パパもママもあなたを愛しているわ。これからもずっとよ。ずっと、永遠に。こんなに大切な瑠璃なのに、そばにいて守ってあげたいのに、、、」

「十一歳の瑠璃を一人にしてしまうなんて、、、でも、ヘラの鏡にあんなに勇敢に向かっていけたんだ。瑠璃なら大丈夫だ。パパは信じている、見守ってるよ。」

「一人で大丈夫なはずないでしょ!ねえ、降りてきて!一緒に『時』に、三人の家に帰ろう。一人にしないで!」

「ママもパパもそうしたい、、、瑠璃。瑠璃。」


暁と玻璃の目から次々と涙がこぼれ落ち、これが我が子と最後のだと、力いっぱい瑠璃を抱きしめます。

そして玻璃が、刻の執事に向かって


「瑠璃をお願いします。あなたを信じているわ。この子を守って!」

「やだ、やだ。ママ!パパ!お願い、一人にしないで!」

「瑠璃、幸せになるのよ。」

「愛しているよ、瑠璃。」


玻璃と、暁はそう言い残すと瑠璃を抱きしめたまま動かなくなってしまいました。瑠璃は、その動くことのない腕にしがみつき


「ママー!パパー!」


瑠璃の両親を呼ぶ切なく悲しい声だけが、刻の狭間を切り裂くように響いていきます。



刻の執事は、目の前で起きているあまりに恐ろしく、悲しい光景に声を出すことも動くことも出来ず、ただ三人を震えながら見ているだけ。


(なんてことだ、、、)


刻の執事の頬にも涙が伝って落ちていきます。テリーゼも泣きながら、オルゴールのように動かなくなった両親にすがりついて泣いている瑠璃に走り寄り、肩を抱き寄せて


「瑠璃、瑠璃、、、」

「テリーゼ、ママが、、、パパが、、、」

「うん、、、」


あんなに楽しそうに十一夜を過ごしていた瑠璃の笑顔は、もうありません。みんなが恐れて口にすることもなかったヘラの鏡から、王を救い出した勇気のある瑠璃も、ひとりぼっちで泣いているとヘラに優しくローブをかけた優しい瑠璃も、もうそこにはいませんでした。

テリーゼは、ただ瑠璃を抱きしめるしかない自分が悔しくて


「刻の執事。どうにか出来ないの!あなた、瑠璃の執事でしょ。玻璃に瑠璃を託されたのでしょ!しっかりして!女王様の執事を尊敬してるんじゃないの!あなたも瑠璃のためになんでもいいから動いて!」


刻の執事は、テリーゼの言葉にハッとして、白髭の執事と暁と三人で最後に交わした 誇りに思っている あの言葉を思い出しました。


(そうだ。私は何をしていたんだ。執事であることに誇りを持って瑠璃さんを支えなければ。)


「ありがとう、テリーゼ。」


そう言って両手に力を込め、頬の涙をぬぐうと


「よし!」


大きい声を出し、自分に気合を入れます。しかし刻が明けるのも迫っている今、刻の執事にできる事はただ一つ。女神に懇願することだけでした。女神の前に出ると膝まずき


「女神様。どうかこの刻の執事の話をお聞きください。

玻璃さんも暁さんも自分からこの十一夜に再び来たのではありません。瑠璃さんと誕生日が同じで、赤いアミュレットグラスと、満月の光。そして何より未熟なこの私の至らなさで、刻の間に入ってしまったのです。

瑠璃さんはもちろんでございますが、玻璃さんも暁さんも『時』にお戻しするためにはどうしたら良いか考えて、私が、十一夜にお二人もお連れしたのです。

ですので、お二人にはなんの落ち度もございません。全てこの刻の執事が悪いのです。

どうか、どうか、お二人も『時』にお返しください。お願いいたします。」


刻の執事がそう、女神に懇願していると泣いていた瑠璃が刻の執事の横に膝まずき、女神をしっかりと見て


「女神様。刻の執事さんではありません。」

「瑠璃さん、何を、、、」

「私です。私がみんなで十一夜に行こうと言ったんです。」

「違います。女神様、私が、」

「違いません。私です。私が、この瑠璃が月の光で十一歳みたいになったママを、、、母を見てみんなで十一夜に行こうと言ったんです。」

「瑠璃さん!」

「だから、私の事もオルゴールにしてください。私も刻の狭間においてください!」


まっすぐに大切な玻璃と暁を思う瑠璃の瞳は、女神の光よりも美しく、力強く輝いていました。




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