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十一夜の刻の執事  作者: 彩 夏香
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三十八  玻璃の刻

三十八  玻璃の刻

 


「ママの十一歳の誕生日も満月だった。」


思いもよらない母の言葉に一瞬、瑠璃は何を言われたのかわからなくなり


「、、、満月って?」

「十一歳の誕生日の夜、瑠璃と同じ満月だったの。」

「満月って、だって、ママのアミュレットグラス、、、赤い、、、よね。」

「そう。瑠璃も大好きな綺麗な赤い色のアミュレットグラス。」

「じゃあ、ママも、、、」

「ええ。十一夜を迎えたわ。」


母から聞く、初めての話に瑠璃は、声を出すことも出来ずにただその場に立ちすくんでいました。

しかし刻の執事は


(やはり、そうなんだ。玻璃さんも十一夜を迎えていた。)


ヘラの鏡の事でそうであろうと、わかってはいましたが、事実としてはっきり突きけられると、これからどうなってしまうのかと、不安が刻の執事を襲ってきます。


「でも、そんな事。十一夜のこと、一言も言ってなかったじゃない。十一夜に来てるなら、どうして教えてくれなかったの?」

「教えていたら、瑠璃はどう思った?」

「どう、、、って。」

「ママが、話しただけで、十一夜の出来事を信じることができた?」

「、、、信じれたとおもうよ、、、だって、ママが話してくれる事なんだもの。」

「ここにいるオルゴール達のことを十一夜に来る前から知っていたら、瑠璃は自分の思いだけで、自分の夢を選べた?」

「それは、、、」



瑠璃は、返す言葉がありませんでした。

紬の猫のニャーが空中に止まっているのを見たから瑠璃は、刻の狭間のことが理解できたのです。

玻璃から聞いただけで、十一夜にオルゴール達がいて、素敵な刻をプレゼントしてくれるなんて本当に信じられたでしょうか?

刻の狭間に来るのがもし自分一人だけだったら?テリーゼとラウムの事を初めから知っていたら?こんなふうにテリーゼを選ぶことができたでしょうか?


「そっか、だからなんだ。星刻の人達の中に、刻の執事の事を詳しく話す人が誰もいないのは。

十一夜の刻の狭間の事も、オルゴール達の事誰もが話さないのは、、、。」

「瑠璃、、、」

「刻の執事に会った人がいないんじゃない。ただの言い伝えだからでもない。次に十一夜を迎える子の為に、誰も話すことをしなかったんだ。そう言う事かぁ。」


十一夜を過ごした今の瑠璃には、その気持ちがとてもよくわかりました。


「ママが選ぶオルゴールは、もう決まっている。そっか、、、ママの本当の十一夜にもう選んだオルゴールがいるってことなんだね。それがテリーゼ。」

「そうよ。十一歳のあの日に選んでそしてカギを渡したの。変えることはできないわ。」

「自分の思いだけで夢を選んで欲しいから、、、だから私に先に選ばせたんだね、、、」


玻璃は、静かに頷き、真っ直ぐにテリーゼに向かって歩いていきました。そして、玻璃の十一夜にしたことと同じ、テリーゼの手にカギを渡したのです。


(そういえば、女神様は刻の始まりに、私の手の中に鍵を授けてくれたけど、ママのカギはオルゴールの中に光っていた。)


瑠璃は、始まりのあの薄暗いホールの中でぼんやりとなにかが光っていた事を思い出していました。刻の執事も同じ光景を思い出していましたが、


(女神様は、玻璃さんの鍵をオルゴールの中にあると示されていた。初めから玻璃さんに気がついていたんだ。そうだ、あたりまえだ、女神様なんだから。初めから玻璃さんが、十一夜に再び来た事をご存知だったんだ、、、十一夜にまた来ることなど、、、)


刻の執事が、玻璃にこれから起きるかもしれない恐ろしい事、ザワザワとしたあの感覚は、これだったのかと、立っていられないほどに体が震え出したのです。

しかし瑠璃がふと気がついて、


「待って。本当にそうなの?本当にテリーゼに鍵を渡したのかな?」

「瑠璃さん、どう言う事ですか?」

「だって、テリーゼに鍵を渡しているなら、テリーゼはどうしてここにいるの?鍵を渡されたのなら『時』に行っているはず。そうでしょ!」

「そうですね、そうです、その通りです。ここにいるはずがない。」


刻の執事は、玻璃の告白が間違いであってほしいと願い、大きな声で瑠璃に同意します。


「それはね、私が鍵をもらうことをやめたかなの。」


わからないことだらけの二人の元に台座から降りてきたテリーゼが、やわらかい声でそう答えます。

テリーゼのその姿は、先程までのオルゴールの姿と少し違い、人間そのものに見えました。

そして、玻璃に向かって


「やっぱり玻璃なのね。そうだと思っていたわ。玻璃、玻璃、とっても会いたかったのよ。」


テリーゼは、玻璃に飛びついて再会を喜ぶ涙が頬を伝っていました。


「私もよ、テリーゼ。言えなくてごめんね。会えて本当に嬉しい。もう会えることはないと思っていたから。」


そう言ってテリーゼに抱きつく玻璃は、紛れもなく十一歳の少女になっていました。




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