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十一夜の刻の執事  作者: 彩 夏香
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星刻町

初めての投稿です。よろしくお願いします。

一、 星刻町




「瑠璃は、信じてる?」

「うん」

「そう」

「だって、お母さんのアミュレットグラスが 赤くて綺麗だから」



瑠璃の暮らす星刻(ほしとき)町は細い坂道が、家々の間を繋いでいる海沿いの町。陽当たりの良い山沿いにこじんまりと まとまっている可愛らしい町です。

町の家の屋根は、どの家も明るいレンガ色をしていて、まるで異国のよう。

それぞれの家の窓からはキラキラと光る海が見えています。

昼間は海の輝きが、夜は満天の星空が町を包んでいる美しい星刻町。



遠い昔、宣教師がたどり着いたと言う星刻町には、小さな教会、星刻教会があって町の人の心の中に、生活の中に深く溶け込んでいるのです。

教会にあるステンドグラスは、赤 青 緑 黄色と美しい色で星刻の町や透き通る青い海を描き出しています。

朝日が昇る時は青い色が、お昼の頃は全ての色が混ざりあう淡い白の入る黄色に、そして日が傾いて来る頃には夕焼けの色もたされ、赤い光が教会の礼拝堂を彩り、訪れる人達をいつも優しく包みます。

神父さまは、代々オランダのやはり海の美しい街から星刻教会にやって来て、星刻町の人たちを愛してくれるのです。

オランダなまりの言葉はなぜかとても可愛くて、町の人達はみんな神父さまを慕わずにはいられません。

教会には毎日、新鮮な魚、畑の採れたての野菜や果物が届けられますし、子供たちは学校での出来事を報告に来たりしています。


「神父さま」

「神父さま」


礼拝堂には神父様を呼ぶ声がいつも響いています。


坂道が繋ぐ星刻町は車が通れる道は多くありません。

東の隣町から伸びる道は、星刻町の海岸線を登りながら町をクネクネと通り、西の隣町に抜けるバスも走れる道が一本と、魚や野菜を運ぶ軽トラックが、やっとすれ違う道が三本あるだけです。

あとは人が通れる坂道ばかり。坂道は町を縦横無尽に通っていて、よその町から来ると大抵の人が迷います。

おばあさんたちは


「だから星刻町は平和なのよ」


というのです。


「泥棒が来ても迷って逃げられないでしょ。だからね泥棒から嫌われてる町なのよ。悪い人は来ない町なのよ」


そう言って ふふふ といたずらっぽく笑ってみせます。


小さな町は、閉鎖的に見られがちですが、昔から 天然の要塞 の様な地形に守られている星刻町の人たちは、のんびりとした性格で 大らかに訪れる人たちを迎えてくれます。


瑠璃は、そんな星刻町も町の人たちの事も大好き。


大好きな町の中でも瑠璃の特にお気に入りの場所は二つ。

一つは、自分の部屋の小さな窓。

この窓からは見える海は時間と共に色を変えて、お気に入りの木彫りの窓枠は額縁のように光る海を切り取り、美しい一枚の絵ように見せてくれるのです。

そして、もう一つは星刻教会の朝早い静かな青い礼拝堂。

遠くに波の音が聴こえるだけの静かな朝、礼拝堂の中がその波の音に合わせてゆっくりと揺らいでいる。

瑠璃はこの二つ空間にいると、自分も絵の中に描かれているような。

海の中に溶け込んでいるような不思議な気持ちになり、いやな事が何もない世界に入っていける。


この世で一番美しい二つの場所。


世界中の人に自慢したい。

でも誰にも教えたくない。

瑠璃の暮らす星刻町は、そんな素敵な町です。




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