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婚姻届を出す朝に(離婚届シリーズ第二弾)  作者: 夢見るライオン


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竜司さんという人①

「え? 明日ダメになったの? どうして? レストランの予約もしてあるのに」


 竜司さんとの約束は前日にキャンセルされることが多かった。


 そのたび私はがっかりして予約していたお店を取り消して、持て余した時間をケーキ作りについやした。


 キャンセルの理由はいつもよく分からないものだった。


「健太のやつが勝手にみんなで海に行く予定立ててさ。みんな俺が行かないとつまらないって言うんだよ。ホントは香百合と会いたいんだけどさ、彼女優先とか言うとしらけるからさ。悪いな」


 私は話の分かる心の広い彼女だと思われたくて受け入れた。


「私のことは気にしないで。楽しんできてね」


「この埋め合わせは絶対するからさ。あー、やっぱ香百合は最高だな。お前が彼女で良かった。みんなにうらやましがられるんだ」


 その一言で舞い上がって、すべて許してしまっていた。


 本当は怒りたいことも、全部我慢して心にめ込んでいた。


 次のデートの約束も、いつも私からメールしていた。


 今度は竜司さんから誘ってくれるだろうかと待ってみても、平気で二週間ぐらい連絡が途絶える。そして不安になってメールを送ると、「ちょうど今、香百合に電話しようと思ってたんだ。仕事が忙しくてごめん。お前に会いたいよ」と返事がくる。


 その後の行動は早い。私がどこに行きたいか聞くと、すぐに予定をたてて日時からお店まで素早く予約してしまう。その行動力に、愛されているのだと安心してデートの日を心待ちにする。その繰り返しだった。


 竜司さんはいつも「俺は彼女が一番とか無理だから」と言っていた。


 仕事も友人も同じように大切で選ぶことなんてできないと。


「よくいるじゃん。私と仕事どっちが大事なの? とか聞く女。でもさ、比べるもんじゃないと思うんだ。香百合はそういうバカな女じゃなくて良かったよ」


 そんな風に言われると、デートをキャンセルされても怒れなかった。


 文句を言えば嫌われて捨てられるんじゃないかと怖かった。


 私の方が大好きで、竜司さんはこんなに誰からも愛される人なんだから、我慢することが多くても仕方ないとあきらめていた。



「私は本当に竜司さんに愛されていたんだろうか」




 最近毎日、竜司さんとの日々を夢に見る。

 そして目覚めた後、思うのはこの疑問だった。


 思い返してみると、本当はいつも心の中に不安がくすぶり続けていた。でもその不安ときちんと向き合うと夢が終わってしまいそうで、考えないようにしていた。


 とにかく結婚相手に選んでくれたのだから、なにを疑う必要があるのかと。




 起き上がって枕元のスマホを見た。


「まただわ」


 夜中に竜司さんからの着信履歴があった。

 先日会ってから、二・三日に一回電話がくる。


 こんなにマメに電話してくれたことなど、付き合っていた頃でもなかった。


「この間はごめん。香百合をとられたような気がしてイライラしてしまった。もう一回会ってちゃんと話したいんだ」


 電話のたびにもう一回会いたいと言う。

 もう一回会ってなんの話をしようというのか。


 破談になったいきさつなら先日聞いた。

 もう話すことなんてない。


 会いたいと言われるたびに、急速に気持ちが冷めていくような気がした。


 前はあれほど心待ちにしていた竜司さんからの電話なのに。


 むしろ仕事や友情を大切にする男気おとこぎのある人だから彼女にも素っ気無いのだと納得していたのに、マメに連絡しようと思えば出来るんじゃないのと、疑う気持ちが大きくなっていく。



 私はあつかいやすい都合のいい女となめられていたの?


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