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二の姫の輿入れ ~生涯結婚しないと思っていた隻腕の姫が嫁入りした大国の王太子殿下を幸せにするまで~  作者: 礼(ゆき)
二の姫の輿入れ【本編】

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8,妃候補たちとラーナの会話を見た殿下の反応は

 昼餉ひるげを終え、中央の居室にラーナと四人の妃候補たちは集まっていた。


「ラーナ様。今日のお菓子は故郷の銘菓である干菓子を取り寄せましたの」

「干菓子とは?」

「砂糖や小麦粉を練り合わせた乾いたお菓子の総称です」


 赤い足のついた椀に、白い紙がひかれ、その上に花や月、葉っぱの形を模した色とりどりの小粒なお菓子が乗っていた。さらにはウニような尖りのあるお菓子も紛れていた。


「こちらは?」

「今、街中で流行っているという金平糖です。宮女にお願いして、都一名高い菓子屋から取り寄せた品ですわ」


 四人の妃候補たちは片腕のないラーナのために、肘置きを用意していた。そこに体を預けて、ゆったりとくつろぐラーナが、手を伸ばすため身を起こそうとする。


「ラーナ様はそのままでよろしいですわ」


 素早くシェンが金平糖を一つつまみ、ラーナの口に寄せた。


 ラーナは迷いもせず、一粒の金平糖を口に含む。ころころと舌の上で、甘さを堪能した。


 四人の妃候補たちが腕が欠けているラーナのために用意してくれた肘置きだが、ラーナ自身は無くても良かった。

 それでも、それを使うのは、妃候補たちが一生懸命考えて、ラーナが楽になるように配慮してくれたためである。


 妃候補たちは幼少期に腕を無くした理由に同情し、ラーナの境遇を憐れんでも、それをものともせず海へ潜り漁をする勇ましさに羨望の眼差しを向け、逆境をものともしない生きざまを賞賛した。


 肘置きに体を支えるラーナへ、妃候補たちは甲斐甲斐しく接することを好み、ラーナもそれを嫌がらずに受け入れた。


 暇を持て余していた妃候補たちは、ラーナへ奉仕することで、生きがいを得て、朗らかに笑うようになっていた。


 シェンがつまんだ干菓子がラーナの口へ寄せる。花の形をした干菓子は、香りづけされており、ふんわりした芳香が甘みとともに溶けていった。


「くちどけの良いお菓子ですね」

「お口に合いまして」

「ええ、淡雪のように甘く溶けるお菓子なのですね、干菓子とは」

「お気に召していただけた?」

「とても。もう一つ、食べたいです」


 ラーナが薄く口を開くと、シェンが月の形をした干菓子を舌にのせた。微笑を浮かべ、ラーナは菓子の甘さを楽しんでいると、今度はレンが黒塗りの箱を差し出してきた。箱の表面には銀と金で彩られた菊が描かれている。


「ラーナ様、今日は貝覆いをして遊びましょう」


 蓋を開けると中央で二つに仕切られた空間それぞれに無数の貝が詰められており、貝の内側には細い絵筆を用いた細やかな絵が描かれている。


「これは?」

「貝を合わせて遊ぶ玩具です。貝の内側に絵が描いてありましょう、同じ絵の貝が一対となっています。これを貝の柄から合わせて遊ぶのです」

「二枚貝は一対の貝でございましょう」

「そのうち片方を、円形に並べるのです。こちらを地貝じがいと申します」


 絵が描かれた側をレンが伏せて並べ始めると、リィーとランも手伝い始める。二重円になるように貝を並べ終えると、箱の半分から貝がなくなった。


 残りの貝が入った箱がラーナの前に置かれる。


「ラーナ様は、箱に入っております貝を一つ地貝で作りました円の中央に置いてくださいませ。円の真ん中に置く貝は出し貝(だしがい)と申します」


 ふうんとラーナは肘置きに欠損した腕を乗せ、動く片手で、出し貝を一つつまむと、円の中央に置いた。


 囲んでいた四人の妃候補たちがの目が真剣となり、貝の文様を比べ合う。ランが手前の貝を手にして中央の貝と合わせると、ピタリと合った。


 四人の妃候補がラーナに笑いかける。


「このように遊び、多く貝を合わせられた者が勝者となる遊びとなっておりますの」


 晴れやかな笑顔と共に、ランは合わせた貝の内側に描かれた絵をラーナに見せてくれた。


 きゃっきゃと喜ぶ妃候補たちと一緒に、甘やかな菓子を食みながら、ラーナは異国の遊びに耽る。

 妃候補の四人を慈しむ眼差しを向けるラーナ。その眼差しをちらちらと確認す妃候補たちは頬を赤らめながら競技を楽しむのだった。


 その様を、ミルドだけが複雑な表情で廊下より見つめていた。




          ◇




 その夜、自室にてラーナはミルドが淹れてくれたお茶を嗜んでいた。


 雲一つない夜空には、無数の星が瞬いており、天の川がよく見えた。


「姫様……。ここでの暮らしをどうお思いですか」


 呆れ顔のミルドを横目に、ラーナは口元をほころばす。


「楽しいよ。まるで故郷と同じだね」

「仮にもここは後宮です。こんなお姿を王太子殿下に見られたらどうするのですか」

「どうもしないと思うよ。彼女たちは、暇だったんだ。そして、潤いがなかった。私が来たことで、遊戯が増えただけだよ」

「しかしですねえ。これでは、誰のための後宮か分からなくなりそうです」


 ため息をつくミルドに、ラーナは苦笑する。


「ここはジュノアの王太子殿下の後宮だ。それに変わりはないさ。

 四人の妃候補たちは殿下がお渡りにならなくて、張り合いがなかっただけだ。私との遊びは、一種のままごとみたいなものだよ。たまたま私が男性役を担っているだけのことだな」

「ままごとですか……」

「そうだ、ミルド。深く考えるな。

 これで彼女たちが綺麗になり、殿下の目に留まれば良いじゃないか。私は、所詮片腕がない。だからダメだとは思わないが、誰がどう私を見るかは分からない。

 ならば、殿下がお渡りになった時に、あの四人から誰かを見初める手助けをするのも悪くないだろう」


 ふふっとラーナが笑うと、ミルドは切なそうに眉を潜めた。



          ◇




 ラーナが後宮で過ごし始めて一週間が経った。女官を通じて秘密裏に後宮に入った王太子リャンは四人の妃候補に囲まれているラーナを見て呟いた。


「なんと、男前なんだ」


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