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界人等一行は山頂にたどり着いた。
「やっと到着だね~、皆お疲れさま!」
ヴィンツが登頂を祝い皆に労いの言葉を投げる。
山の頂上は平たい台座状になっており縦横十メートルはあった。
開放的で広々とした山頂の景色にノエルは喜びここまでの疲れも忘れてはしゃいだ。
「すっごーい! 私達こんな高くまで登ってきたんだねぇ。あ、あれイガヤイムの町だよ。ちっちゃーい!」
「……元気すぎだろノエルのやつ」
リートに乗っていたのに疲労困憊な界人は久しぶりの平らな地面に着地。
「二度と山登りなんてしない。もう絶対にだ」
傾斜のない地面の有り難みを体感し情けない言葉を口走るのだった。
「……うわ、本当に高いな」
標高がどれ程か定かではないがノエルに倣い眼下の景色を視界に収めた界人は背筋を寒くした。
ドローンで空撮された映像でしか見たことのないような光景。それを肉眼で捉えているのだから自然な反応だ。
一歩踏み違えれば急斜面を真っ逆さまに滑落し紅葉おろしと化すだろう高度。
吹きつける強風と冷気が死をすぐ近くに感じさせたのである。
「界人、来てください!」
なるべく下を見ないようにしようと界人が決めた時、桜花が叫んだ。
ノエルと桜花の2人が北側の縁に立って視線を下に向けていた。
なにがあったのかと界人も2人と同じ方角に目線を運ぶ。
「…………あれは!?」
その方角にあった町はエタウィ。
イガヤイム程ではないが都市と称して問題ない人口と規模を誇る場所……そのハズだった。
「城塞……でしょうか?」
桜花にはそう見えた。
「違うと思う……あれは何かの工場?」
ノエルにはそう見えた。
その場所では数多くの地点から白煙が立ち上ぼり、大勢の人間の出入りが遠く離れた山頂からでも確認できた。
これを見て桜花は軍事拠点と推測したのだ。
そして、ノエルが工場と推察した理由は機械だ。
白煙を上げる建物から物資を搬入するのに使われていたのはフォークリフトのような乗り物。
ノエルには小さな点としか認識出来なかったが、明らかに動きが機械的で生物とは機動性からして違っていた。
効率的に規則的に黒点は動き何かを移動させていた。
「領域魔法……【怪機素体生産工場】」
――久我山界人だけが正解を言い当てた。
目に映るソレはカードイラスト通りの光景。
都市と変わらぬ規模の大工場。白煙が幾本も空へと上り、研究員がそこら中を駆け回っている。
いつもバトミリを遊ぶとき、親友が決まって使っていたカード。
「シンジ……そこに、いるのか?」
手を伸ばしても届くはずのない距離なのに界人は無意識に手を伸ばした。
二ヶ月前に離ればなれになった親友がいるかもしれない痕跡に縋るように祈るように――
「ジグラーくん、何をっ!?」
伸ばした手が届くことはなく、背後からの叫び声に界人等3人はすぐさま振り返った。
「優等生は黙って寝てろや!」
ヴィンツがジグラーにより地面に叩きつけられた。
叩きつけられる瞬間、ヴィンツの身体が嫌な跳ねかたをする。
それきり、ヴィンツは雪に埋もれ動かなかった。
突然のジグラーの凶行、シンジの手掛かりが気になったが無視することは出来ず臨戦態勢に入る。
「邪魔者は消えた……お前ら、これがどういうことだか分かるか?」
桜花は【未完の剣】に手を伸ばし、ノエルは【マジカルステッキ/☆ラブリー☆】を取り出した。
「高難度の任務じゃ重傷者や行方不明者は珍しい事じゃねぇんだよ」
界人も2人を真似てボディバッグからカードを取り出そうとするが、手が悴んでいて手間取ってしまう。
そして、ジグラーが界人の準備が整うのを待ってくれることはなかった。
「もちろん…………死人だって日常茶飯事なんだよ!!」




