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アイゼンとマクロブ、2名のギルドマスターが代官の屋敷に乗り込んでいったのは昼前の事だった。
カインディルの無茶の皺寄せを受け仕事に勤しんでいた代官のエイダンは突然来訪してきたギルドマスター2人に驚く事はなかった。
――その時が来た。
ただ、そう思い秘書に応接室へと案内させた。
身綺麗にしてから応接室の扉を開けるやエイダンの顔に紙束が投げつけられる。
「テメエ、これを知っていやがったな!」
怒り心頭という様子のアイゼンが投げつけてきた紙が床に散らばる。
エイダンはそれをしばらく眺める。
粗描された町の遠景、その町についての報告、どれもエイダンにとって驚くようなことの無い既知の情報だった。
アイゼンの暴挙にエイダンの秘書が動こうとするが、
「やめなさい。彼等と私だけにしてくれ」
応接室から秘書を追い出し扉は閉められた。
アイゼン、マクロブ、エイダンの3人だけになった応接室。
座り心地の良い高級品のソファーがあったが誰も腰掛けようとはしない。
アイゼンは怒りを露にしながら壁に背中を預け、マクロブもその場に立ったままであった。
しばしの沈黙が応接室に流れ、マクロブがそれを破った。
「その様子じゃ特に隠したりするつもりは無さそうだね。事の経緯を、詳細を、全て話して貰えるかい?」
常と変わらぬゆったりとした喋り方であったが怒気を孕んだ冷たい声音をマクロブは発する。
エイダンは深い溜め息を吐いてから首を縦に振る。
「なら聞かせて貰おうか、自らの領地を庇護するべき領民を見捨ててまでカインディルが逃げ出した理由ってのをね」




