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 入念な準備をしたにもかかわらず呆気なく一日の終わりは訪れる。

 件の山に入る寸前の地点で一夜を明かすことになった界人達一行。

 歩き続け溜まった疲労をゆっくり癒す彼等とは違う場所で激動の一日を過ごす人間達がいた。

 マクロブに命じられエタウィに向かった商人ギルドの調査隊である。

 傭兵4人に商人が2人。界人達より早くイガヤイムを真夜中に出た彼等は人気の無い街道を進んだ。

 途中までは何の問題もない道程だったのだが、それは半日も経たずに終わりを迎える。

 見通しのよい街道の先に魔獣の姿を捉えた。

 魔獣は人間を襲っている最中で、襲われていたのはエタウィから逃れてきたゴロツキと思われた。

 その場所は半ば魔獣の餌場と化していて襲われているゴロツキと同様にエタウィから逃げようと試みた人間の骸がそこかしこに確認出来た。

 調査隊一行は襲われる男を救おうとはしなかった。

 男の悲鳴が続く間に傭兵の1人が一行全員に隠匿の魔術を付与。これで魔獣に気付かれることなく先へと進める。

 マクロブが揃えた調査隊はあくまでも『調査』を目的に編成された。

 往路と復路を安全に確実に往き来するのを前提にした人員構成が為されている。

 雇った傭兵は魔術の心得がある者、元冒険者、元暗殺者、元騎士団員と並みではない精鋭ばかり。

 そんな精鋭を揃えて望まねばエタウィの調査はままならない。

 目の前で生きたまま人間が喰われていようと眉一つ動かさずに歩き続ける彼等は気概に溢れていた。

 そうして彼等はエタウィを目指す。

 似たような障害にぶつかる度に対処して一歩一歩堅実に歩を進めた。

 界人達が毛布にくるまり夢の中にあった頃。調査隊はエタウィまであと僅かという地点にまで辿り着く。

 予定ではエタウィの様子を外部から観察し、可能であれば内部に潜入し多角的な調査が行われるはずであった。

 だが、

「――すぐに引き返すぞ!」

 予定は急遽変更される。

 休み無く本当の意味で丸一日動き続けた調査隊一行は休息も忘れイガヤイムに戻ることになった。

 遠くに望むエタウィの姿を調査隊の全員がその目に収めており、誰も反対の声を上げようとはしなかった。

 むしろ、目にした光景を一刻も早く伝えなければと躍起になって奔走する。

 ……しかし、彼等の報告がマクロブの耳に届くのには往路に要した丸一日という時間が必要なのであった。

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