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 ――二日という僅かな時間は瞬く間に過ぎ去った。


 カインディルはまだ冒険者も活動を開始しない明け方前に王都へと出立。

 商人ギルドから徴発するように用意させた荷馬車の行列を引き連れてイガヤイムを後にする。

 その様子をギルドマスターのマクロブは無言で見送った。

 情報は集まりきらずカインディルの語った目的の真偽は分からずじまい。

「悪いね。若造の尻尾は掴めなかったよ」

「仕方あるめえよ。相手は大貴族で腹芸は得意で当たり前なんだ。簡単にゃあ掴ませて貰えねえさ」

 隣にいるアイゼンに謝罪するもマクロブは情報収集を止めてはいない。

 商人ギルドの長として、やられたままでいられるはずもなかった。

 既にマクロブの部下数名が手練れの傭兵を伴いエタウィに出発していた。

 魔獣と野盗への対策に尽力し出遅れてしまったがこれで詳細な情報が得られることだろう。

「それより、確か今日だったね。そっちの大仕事も」

「さすがだな。耳が早いこって」

「そりゃあね、ヴィンツくんが年代物の羊皮紙やらなにやら買い込んでってくれたからねぇ」

「……あんにゃろぅ、払いがギルド持ちだからって調子のりやがって」

 マクロブの情報元を知りアイゼンは腹を立てる。

 だが、溜め息ひとつで怒りをおさめてマクロブに問う。

「ま、準備しないよりかはマシだな。そんで、他の連中はなに買ってった?」

「ジグラーの坊主は高い酒と旨い肉。冒険に必要そうな物は他に買わなかったみたいだよ」

「あのバカらしいな。じゃあ新米のチビ共はどんな塩梅だ」

「名前は知らないけど、男の子の方は結構張り切ってたみたいだねぇ。そっちの販売所じゃ取り扱わないような回復薬(ポーション)護符(アミュレット)なんかを凄い量買おうとしてたっていうねぇ」

「おいおい、その注文通したんじゃねぇだろうな。いくらギルドで払いを引き受けるったって限度があるぞ」

「勿論断ったよ。うちのギルドに加入する商人連中に悪徳なのはいないからねぇ。売り出し中の花形冒険者だろうと、支払い出来ないのが分かってるのに売る阿呆はいないのよ」

「ワシが支払いを断るのはお見通しか」

「返品処理は案外面倒だからね。そういうことよ」

「嫌らしいジジィだぜ、じゃあ嬢ちゃん連中の方はどうなってんだ」

「あぁ、そっちは別に聞かなくてもいいんじゃあないかな」

「……んん、そいつはなんでだ?」

「それは教えられないねぇ。乙女の秘密に触れようとするなんて野暮ってもんだよ」

 訳知り顔で楽しそうに微笑むマクロブ。

 それを見てアイゼンは、

「前言撤回だ。気持ち悪いジジィだぜお前さんはよ」

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