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イガヤイムを含めた多くの地方都市の運営というのは実に大雑把なものだ。
徴税権等の主だった権利は領主に帰属しているが、基本的に代官が立てられ都市運営はそちらに丸投げ。
領主自身は豪奢な屋敷に引きこもり、必要に駆られた時以外は表舞台に出てくる事など殆ど無い。
代官も町の有力者もそこに不満はなかった。
むしろ、下手な横槍を入れられるのを嫌い細かな事情まで知る人間のみで今後の方針、問題の対処にあたるのが常。
「……珍しい事もあるもんだ」
北方域イガヤイム支部の冒険者ギルド。その代表であるギルドマスターはいつものように代官との定例会議の場に赴くや、目を剥いた。
場所は代官屋敷の大広間。各ギルドの代表者を迎えるため長卓に椅子が並べられた室内には見知った顔がちらほら揃ってる。
そのなかに普段は見ない顔があった。
長卓の上座に三十代そこそこの男が腰掛けていた。
華美ではないながらも仕立ての良い上質な服に袖を通す銀髪の美男。
彼こそ、イガヤイムを含め北方域にある四つの都市を治める大貴族。
「カインディル伯爵様がご出席とはな」
定例会議は始まる前から不穏な空気に包まれる。




