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「わたしの名前はミエル。見ての通り平凡な一般市民よ」

 遅めの自己紹介は恐ろしく簡素なものだった。

「え、それで終わり?」

「うん。他に語るようなことなんて無いもの」

 有無を言わせないキッパリとした拒絶の意思をミエルから感じた。

 これ以上追及してもすげなくあしらわれそうだ。

 それに、

「俺の名前は界人かいと。そんでこっちは」

「シンジだ」

 俺達も素性を明らかにする気は更々無いからお互い様ってことで許して貰おう。

 異世界からやってきた高校生なんだ。と馬鹿正直に語って事態が好転するとは思えない。

 むしろ悪化するだろ。

 頭がおかしいと思われるのが目に見えてる。

 異世界からの転移者が普通な世界ならその限りじゃないけど、ミエルとの初対面の反応を見る限りその線は薄そうだ。

「カイトにシンジね……うん、これからよろしく」

 俺達について色々問いただしたいんだろうが、ミエルは何も聞いてこない。

 自分が多くを語らない癖にこちらの事情を聞くわけにいかないからだろう。

 なので、俺達は当たり障りない会話をしつつ出会うまでの経緯(いきさつ)を聞いた。

「この森は人喰いの魔獣が蔓延る『帰らずの森』森の近くに住む人間は冒険者でも無い限り絶対に足を踏み入れない超危険地帯。まぁ常識よね。わたし達はいまその奥深くちょうど中心くらいにいるはず」

 聞けば、ミエルは二日前に『帰らずの森』の南端から入り真っ直ぐ北上していたそうだ。

 平凡な一般市民の女の子がなんで一人で超危険地帯を進んでたんだよ。とツッコミを入れたいがそれは野暮ってもんか。

「四日もあれば森を縦断して、北にあるエタウィの町に着けるはずだった。一日目は運良く魔獣に会わなかったけど、今朝からあのガルムに目を付けられちゃったのよね」

 そして、昼前に俺達と遭遇したと。

 ありがたいことに二日あれば人里にたどり着けるのが判明だ。

「でも驚いたわ。あなた達おかしな格好だけど腕前は凄いのね。あの大きさのガルムを一瞬でやっつけちゃうなんて」

 驚いたのはこっちも同じだ。

 バトミリのカードを召喚出来なきゃ死んでた。

「それで、あの黒いのを召喚したってことは召喚士(サモナー)なんだよね?」

 さもなー……ゲームだとサモナーって召喚士の事だよな。

 素性を疑われるのも面白くないし、ここはそういうことにしとこう。

「あぁ、俺とシンジは召喚士(サモナー)なんだ。なぁ、シンジ!」

 眼力込めてシンジにアイコンタクトする。

「そうそう。オレ達はさもなーだ!」

 伝わったようでなにより。さて、この勢いのまま突っ走るぞ。

「実は俺達もエタウィを目指してたんだ」

 再びのアイコンタクト。

「おう、目指してたんだ」

「こうなったのも何かの縁だし一緒に行かないか?」

 俺の言葉にミエルは即答した。

「えぇ喜んで。こっちからお願いしたかったくらいだもの」

 ミエルがそう言うのはなんとなく分かってた。

 ガルムから必死に逃げてた時点でミエルに戦闘能力は無い。

 俺達を召喚士と勘違いしてるなら同行を断るはずがないと。

 これで道中、ミエルという現地人からこの世界の知識を得られる。

 打算的で悪いがこっちも必死なんだ。

「それじゃ、エタウィの町までよろしくな」

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