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冒険者とは各々が所属するギルドを選び、そのギルドが置かれる地域を拠点とし活動するのが基本である。
ギルドを転々とする者もいれば、同じ地域に長年居着く者もいる。
ただ、これには例外もある。
各ギルドごと、所属する有能な冒険者には序列を定めている。
第一位~第七位までに分けられ、序列が高いほどギルド内外での地位と名声が約束され破格の報酬を得られる機会も増えるのだ。
この『破格の報酬を得る機会』こそ、件の例外にあたる。
冒険者ギルドの序列第一位。
その冒険者ギルドにおいて、最強の座に君臨する実力者には時たま国家よりの勅命が下ることもあるのだ。
所属するギルドの管轄を離れ、他方の地域に赴いてまで行う超高難度の依頼。
どのような依頼かはその時々で違うが、いずれも生半可な代物ではない。
命の危険などは当たり前、時には命より重いものを失う覚悟さえしなければならない。
――そんな危険な依頼をこなす年若い3人の冒険者パーティーがいた。
「そっちに行ったぞ!」
場所は燃える火の山。
大地は灼熱地獄の様相を呈し、息をするだけで喉を焼き肺を焦がした。
常人なら一分と耐えられない炎熱の檻の内で2人の少女と1人の少年が巨大な魔獣と戦う。
城塞の如き大きさの魔獣は腕の一振りで灼熱の大地を深く抉り地形を一変させる。
腕の攻撃を避けても溶岩が飛散し、どちらを受けても致命傷は必至。
しかし、彼等パーティーにとっては何の問題もありはしない。
「ハァァァァッッ!!」
気合い一閃、前衛職の少女が振るう剣が飛び散る溶岩ごと魔獣の腕を両断した。
「いまです!」
続いて、補助職の少女が叫ぶ。
少女は氷の魔術を使って、すぐさま魔獣に追い討ちをかける。
両断された腕を起点にし身体を氷結させられてゆく魔獣。
「あとは任せろ!」
後衛職の少年が動く。
2人の少女が作った絶好の機会を彼は見逃さない。
「……見せてやるぜ、俺の最強の――」