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 俺達は上空から魔獣の横っ腹にソリで吶喊(とっかん)した。

 激突する直前に桜花はリートをソリから解放。

 俺とノエルを抱えつつ緊急避難。

 急降下の勢いのまま空中に残されたソリだけが魔獣へと衝突した。

 そこら辺の家屋並みにデカイ猪型の魔獣だったが見事に吹っ飛んだ。

 横合いから急に猛スピードのソリをぶつけられたんだから当然といえば当然。

 派手な交通事故みたいなものだった。

 魔獣は転倒して起き上がろうとするものの負ったダメージが大きいせいか身を捩るだけ。

 こんな絶好の機会を桜花が逃すはずもない。

 俺とノエルを地面に下ろすや、腰の刀を引き抜いて動けない魔獣のもとへと向かった。

 あとは、ただその刀で首を一閃。

 断頭ではなく、首を深く斬っただけだ。

 でも、それで充分。

 積雪で真っ白になってた地面が赤く染まっていく。

 斬り裂かれた首筋から流血が迸り魔獣の命を徐々に奪っていった。

 最初は苦しそうに踠き暴れた魔獣。しかし、それも次第に弱々しいものとなり最後は瞑目しおだやかに息を引き取った。

 ――歓声が上がる。

 魔獣の最後を見てとった村人達が歓喜に沸いた。

 終わってしまえば存外に呆気なかったというのが正直な感想だ。

 冒険者としての初仕事。魔獣に襲われていた村の救援依頼はこれで達成。

 俺は今回もなんにもしてない。

 桜花とノエルが活躍してくれただけ。

 なので村人がつくる歓喜の輪の内に入りづらい微妙な心持ちである。

 見たとこ村自体に物的被害はあれど人的被害は無いみたいだし胸を張ってギルドに報告できるな。

 …………あ、被害といえば見過ごせないのが一つあった。

 村人が発する歓喜の声のなかにすすり泣きが混じってる。

 それは俺のすぐ隣から発せられてた。

 すすり泣きの犯人はノエルだ。

 ノエルが泣いてる理由はわかってる。

 魔獣に吶喊した際にソリが木っ端微塵になったからだ。

 あのデカイ魔獣に深傷(ふかで)を負わせる大役を務めてくれたソリこそ今回のMVPと言えよう。

 ……ソリ、お前のことは忘れないぜ。


「あぁ~ん! わたしのソリぃぃ!」

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