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よくよく考えると冒険者になるのも悪くない手だったんだ。
そう思うことにしておこう。
「こちら冒険者ギルドに所属している証となる認識票です。決して紛失などされませんように」
まず、こうして身分証明証が得られるじゃないか。
冒険者ギルド。ファンタジーじゃ定番の施設はイガヤイムの町にもやはりあった。
場所は町の西側。西門近くにあるおかげで利便性も良さそう。
桜花に引っ張られるまま到着し冒険者として登録。その場で認識票を貰った。
これがまた簡単で受付のお姉さんに名前と年齢を言って血を一滴取られたらハイ完成。
何の難しい手続きもなく身分を証明するモノが手に入った。
小さな金属片に受付で答えた名前に年齢が刻字されただけの認識票。紐を通して首から下げるのが一般的なんだとか。
代わりに登録金を二人分取られたが安い対価だ。
こんなに簡単に身分証代わりが手に入るなんて大丈夫かよと心配になったがそこは異世界だった。
認識票発行時に採取した血液によって個人を識別する魔法が付与され、偽造はおろか刻字された内容の改竄もできず不正対策はバッチリ。
公的にも立派な身分証明証として認められ町の往来も楽になる。
心配なんていらないくらい、ちゃんと受付のお姉さんが説明してくれたのだった。
「以上で、認識票についての説明は終わりです。その他、なにかお困りのことがありましたらお申し付けくださいね」
丁寧に説明してくれたお姉さんにおじぎして受付を後にする。
「なっちゃったなー冒険者」
手の中でカチャリとなる金属音。認識票という冒険者になった証拠。
鳴る音も感じる重みも軽すぎてあまり実感が湧かなかった。
「界人は冒険者になりたくなかったのですか? あれだけ詳しく語っていたのに」
「……うーん、語るのと実際なるのとじゃ違うっていうか」
俺は元々ただの高校生だ。
この世界でバトミリのカードを召喚できるって特殊な能力を使えるようになっただけ。
喧嘩だってまともにしたことなかったのに冒険者とか……かなり荷が重い。
「でも、冒険者になるのが道筋的に一番確実な気もしてきたんだよな」
それが身分証明証の入手に次いで、冒険者になってもいいと思えた理由――元の世界に帰る方法。
これを探すなら冒険者は最適といえた。
ゲームなんかじゃ未知の遺跡や秘境に足を踏み入れるクエストがあったし、上位の冒険者になれば貴族や国からの依頼も請け負うようになったはず。
危険に身を投じることになるけど得られる報酬は魅力的だ。
未知の遺跡や秘境なら希少なアイテムとか失われた古代魔法を見つけて帰れそう。
貴族や国に認められればその伝手を頼って帰還方法を探れるかもしれない。
安易な考えだけど、現状これ以上にいい案は浮かばない。
このまま地道に一般人しながら方々で聞き込み調査しても冒険者以上の情報は得られないだろうし。
「……はぁ、なんか疲れたな。桜花、今日はもう帰ろうか」
「界人がそうしたいのであれば構いませんよ」
服を買って、広い町を散策し、冒険者としてギルドに登録も済ませた。
振り返れば活動的な1日で気づかないうちに疲れてたんだろう。
だから俺は桜花と宿に帰ろうとしたんだが、
「おっと、待てよ新入り。挨拶も無しに帰ろうってんじゃあないだろうな?」
野太い声に呼び止められてしまうのだった。




