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超人気トレーディングカードゲーム【Battle with a million worlds】にはおおざっぱながらメインストーリーが存在する。
――ある日、無数に存在する平行世界が一つに交わってしまった。
多世界融合現象。『パッチワークス・ワールドエンド』と呼ばれる未曾有の大災害である。
出来損ないのパッチワークのようにデタラメに継ぎ接ぎされた混沌の世界。
変貌した世界を救うために君もプレイヤーとなって戦おう!!
「……だったかな」
おぼろげながらストーリーを思い出した。
ストーリー設定だと、このプレイヤーがバトミリを遊ぶ人間の総称になる。
それでどうやって世界を救うのかと言えば、混沌と化した世界を旅するなかで絆を結んだ仲間をプレイヤーは遠隔地から召喚し融界大戦での勝利を目指す。
この融界大戦ってのが現実世界でのゲームプレイ。
ストーリー設定上は各々の世界の存亡を賭けた命懸けの決闘ということでバトミリプレイヤーの間では単純に決闘と省略され呼ばれてる。
「ん~確かそんな感じだったはず。プレイヤーは遠隔地から仲間を召喚するから、召喚士とか、魔術師とか、管理者とかたくさん異名もあった気が……」
二十五年も前に発売された老舗トレーディングカードゲーム。
その黎明期の設定なんてうろ覚えもいいとこだ。
なんせ自分が産まれるより前のカードゲームなんだからな。
すこしでも覚えてる俺はなかなかなバトミリオタクだと褒めてもらっていいだろう。
ただ、この設定通りだとすれば変だ。
プレイヤーである俺は絆を結んだ仲間を召喚して融界大戦を戦うはず。
でも俺は桜花とは初対面で絆もクソもない。
この点を桜花に尋ねてみる。
「そうですね。私と界人が初対面なのは間違いありません。ですが、多世界融合現象と融界大戦についての知識は私も持ち合わせています。ですので、召喚士である界人に呼んで頂いた理由は心得ています。あなたと私、双方の世界を救う助けとなるのであれば我が剣を存分にお使いください」
「……あ、うん。頼りにしてるよ」
カードゲームのストーリー設定。という部分は省いて伝えたが桜花も同じような知識を共有してるということでなんだか安心感が出てきた。
桜花からすれば融界大戦は現実に在る危機って認識みたいだが。
「……ふう」
これで情報の擦り合わせはある程度完了した。
桜花は今回の召喚を融界大戦の一幕だと思ってる。
自分の世界を救おうと全力で頑張ろうとしてるのが嫌でも伝わってきた。
……これじゃ真実を伝えづらい。
融界大戦?
それってどんな形で始まってどう決着すんだよ。
詳細不明のガバガバ設定とかテキトー過ぎるぞバトミリ運営。
それっぽい単語と設定並べて、現実のカードプレイをなぞったんだろうがいい迷惑だ。
「帰ったらバトミリの事務局に問い合わせの電話してやる!」