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悲しいことに【希望の龍卵】は誰から見ても食べ物認定なようだ。
安心しろ、お前は俺が守るからな。美味そうだなんて俺は少ししか思ってないから。
「失礼いたしました。小腹が空いていたものでついつい……」
腹ペコ侍娘――【流浪の剣士 桜花】は謝罪を口にしながら御者台から荷台へと席を移してきた。
「召喚士殿、改めてご挨拶させて頂きます。我が名は桜花。召喚士殿の声に応じ参上致しました。しがない旅の剣士にございます」
綺麗な正座と共にかしこまった挨拶をされては、こちらもちゃんと応じないと失礼だよな。
「えーと、久我山界人です。どうぞ、よろしくお願いします。桜花さん」
同じく正座してペコリと頭を下げた。
精一杯に丁寧な挨拶をしてみたが我ながらぎこちないな。
「召喚士殿、もっと気安くしていただいて構いませんよ。敬称などは不要です。私の事は桜花とお呼び下さいませ」
「そう? なら、桜花。これからよろしく頼むよ。俺の事も召喚士殿って堅苦しい呼び方じゃなく界人って呼んでほしい」
「そうですか、ならば界人。こちらこそよろしくお願い致します」
だいぶ遅れたがこうして互いにきちんとした自己紹介が完了した。
初対面は野盗との戦闘中だったし、戦闘後も気絶した野盗の処理とかに忙しかったしで機会に恵まれなかったからな。
自己紹介ついでに聞きたいことが山ほどあったし聞いてみるか。
「桜花に聞きたいことが幾つかあるんだけど、聞いてもいいかな?」
「えぇ、私に答えられることであればなんなりと」
「初めて会った時……俺が桜花を召喚した時なんだけどさ」
「はい」
「すぐに俺を召喚士殿って呼んで助けてくれただろ。あれってどういうこと?」
ずっと気になってたんだ。
桜花は俺が召喚したモンスターだが意思がある。
そうなると変なんだよな。
口振りからして、桜花にはちゃんと別の世界で暮らしてたっぽい知識と経験があるんだ。
それがいきなり知らん世界の知らん男に召喚された事になる。
そんな状況で自分を召喚した人間を助けて、ここまで礼節もった接し方をしてくれるなんておかしいんだよ。
だから、その疑問をぶつけてみた。
「おかしな事をお聞きになるのですね」
「おかしな事?」
「はい。界人は召喚士で融界大戦を制するために私の力を必要としたのではないのですか?」
桜花の口から飛び出した単語に心臓がドクンと一際激しく拍動したのを感じた。
「融界大戦て…………バトミリの公式設定じゃんか」