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――怪機素体。
この奇妙な金属人形の強化をあの毒婦……摂政から仰せつかったが弄くれば弄くるだけ興味深い。
未知の金属、不可思議な機構、何よりもそれを日々生産し続ける無人の工房。
興味は尽きないが、己の仕事をこなさねば何も解き明かせない。
総ての秘密は魔王が握っている。
そのためにも功績を上げなんとしても接触の機会を得ねばならない。
他人のご機嫌伺いなら慣れたものだ。今回もうまく立ち回ってやるさ。
幸いにして初期の実験は上手くいった。
定着が甘く性能にブレが生じてしまったがそれでもあの摂政は大喜び。
より安定化させた今なら狂喜乱舞でもしてくれるんじゃないかな?
問題はそれを魅せる舞台だ。
単純に戦線投入しても面白味に欠ける。
ここはそう……もっと劇的で映える舞台があれば効果的なんだが。
僕がそう思案してると、研究室の扉が乱暴に開け放たれた。
無骨な一人の兵士が伝令を持ってきた。
城内各所に触れ回ってるらしい。
報告を早口で捲し立てると兵士は足早に去っていった。
「おあつらえ向きの舞台が向こうからやって来たじゃないか」
なんていう僥倖だ。
これも日頃の行いが良いからだろうか。
「っと、こうしちゃいられない」
舞台が整っても役者を配さなきゃ意味がない。
どうせ軍事の決定権を持つお偉方は今頃慌てふためいてる頃だ。
所詮は元ゴロツキ共、人の上に立つ器じゃない。
怪奇素体の強さに胡座をかいて戦力の逐次投入なんて愚行をいまだ繰り返し続けてる。
前線指揮すらせずに安全な後方からの指令だけで済ませてる無能はいずれ粛清すべきだな。
「まぁ、そんな無能だからこそ手玉に取りやすいんだけど」
……失くした腕が堪らなく疼く。
「彼等はどう動くのかな……」