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「召喚を常に維持し続ける方法が知りたい……だったな?」
「はい」
師匠は言葉を選ぶように話した。
「単純な理屈だ。維持し続けても日常生活に支障が出ないくらい魔力量を増やせばいいんだ」
「術者の保有魔力自体の底上げ……?」
あり得ないくらい力業な解決法にアタシはどんな顔をしてしまっていただろう。
人様に見せれない顔をしてたのは確かだ。
「師匠、それはさすがに荒唐無稽なのではありませんか? 保有魔力の底上げなんて不可能なはずです」
「……ほ、ほう。その理由は?」
「師匠もご存知でしょうが、魔力とは持って産まれた才能に影響され限界値が定められているものです」
魔術における基礎知識を聞かされ、師匠もさぞ退屈だろうが揺るがぬ事実だ。
「多く魔力を持っていたから魔術士として大成したのではなく、魔術士として大成できる才能があったからこそ魔力も多かった……認めたくはありませんがそれが魔術に関わる者の共通認識かと」
保有魔力の多寡は魔術士の未来を無慈悲に決定づける。
魔力の多さは才能に直結している。魔力が多いというだけで支援者は集まりなに不自由無い環境が整えられたりする。
逆に少なければ非才と罵られ過酷な環境に貶められる。
アタシの家族がまさにそれだ。
みんな平均を少し下回る魔力量の者ばかりでいつか見返してやろうとそれぞれの穴蔵で研究に没頭してた。
アタシは皆より幾分かマシだけれども魔力量は平均そのもの。
召喚術を日に四回、数分間ずつ使えれば御の字だ。
師匠はそれを底上げするなんて大言を口にしてるが不可能に決まってる。
「信じられないって顔してるな」
「……え」
正直な感想が顔に出てたみたい。
「別に信じられないならそれでいい。弟子なんか辞めて故郷にでも帰るんだな」
踵を返そうとする師匠をアタシは引き止めた。
現実に師匠は常時召喚をしてる。それは膨大な魔力の……才能が為せる業なのかもしれないけど、アタシにもそれが出来る可能性を示してくれたのに信じないなんてどうかしてた。
「お願いします。師匠、アタシにその修業をつけてください!」